

掲載日:2011年11月08日 試乗インプレ・レビュー
車体をサイドスタンドから起こす時に「おや?」と思った。およそ118kgという車重よりも軽く感じたからだ。想像以上に低重心設計が効いているようだ。コンパクトスポーツとはいえ、車格はフルサイズなので大人でもゆとりのあるポジションがとれる。ハンドルは低すぎず高すぎず自然な配置。衝撃吸収性の高いテーパーハンドルは、幅も広くハンドリングも軽快だが、若干切れ角が少ないので取り回しは少々てこずるかもしれない。
低回転からクラッチをつないでスタートすると加速に鈍さを感じるが、このマシンはそういうクラッチワークを求めてはいない。エンジンで十分なパワーをつくり、それをあらゆるクラッチ操作でリアタイヤに伝えていくのが正解のようだ。感覚でいえば小排気量モトクロッサーの乗り方に似ているが、それほどのシビアさがなくても運転できる「のりしろ」も残されているのがストリート仕様らしい点。幅広いライダーの乗り方に対応しつつ、心得のあるライダーの積極的な入力にもしっかりと応えられる高性能を秘めているのは、実にKTMらしいマシン造りといえるだろう。
アイドリングの排気音はかなり静かだが、5,000回転を超えると排気音はエキサイティングな咆哮に変わる。最大トルクが発生する8,000回転あたりからは乗り手の心に火をつけるかのような力強いサウンドが響いて心地いい。気になる最高速だが、このマシンは仮に高速道路が走れたとしても楽に流れに乗れる実力があるとだけ記せば十分ではないだろうか、6速に入れずとも5速120キロを実現してしまう性能なのだから。
減速の要となるブレーキは、イタリアのブレンボ製でタッチはスムーズで上質。フロントには対向4ポッドのキャリパーで制動力に不満は感じない。ただ、後輪ブレーキペダル位置が内側にあるので、慣れるまで時間がかかった。直径43mmという倒立フロントフォーク、長いスイングアーム、前後のワイドラジアルタイヤ、そしてエンジンが低く配置されているなどの多彩な要素によって高い安定性が得られているほか、あらゆるシーンでタイヤを路面に押し付けてくれるようなどっしりとした安心感がある。そして、この接地感の高さこそが、アクセルを開け続けて走ることが楽しくなる源にもなっていると感じた。これはまさしくマシンを操る爽快感が楽しめるマシン。ストリートでも退屈したくない、スポーツマインドあふれるライダーに選んで欲しい一台だ。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!