マジェスティCフェイスの美しさを活かすのがビッグスクーターカスタムの当時流

フロントフェイススワップに頼らずに
個性を競いあった時代の功労者

カスタムアーカイブとして紹介するために、膨大な量のカスタム車両の懐かしの写真を眺めていて、ふと忘れていたことがあったことに気付いた。それは、エアサス、フレーム加工によるロングホイールベース＆着地ローダウン加工がハードカスタムの最前線だった時代は、まだフロントフェイススワップが一般的ではなかった、ということだ。当時の状況を知っているユーザーにしてみれば、そんなことは当たり前のこと。何を今さらと言われるかもしれないが、それぐらい現在のトップレベルを目指すスクーターユーザーの多くは、フロントフェイススワップか、オリジナルデザインを追求して大がかりな加工を施しているのが一般的なのだ。

今回紹介するこのキャンディオレンジのマジェスティCは、トップモストが2009年当時に製作した車両になる。ロングホイールベース化による、超がつくほど定番のロー＆ロングスタイルであることは、誰の目にも明らか。しかし、このマジェスティCの純正デザインをそのまま残し、フロントチョップフェイスとサイドエアロを纏うだけで生まれたこの顔回りの表情。そして、長さを求めたフレーム加工の答えとして後端に突出したサブフレームの存在などに、いい意味での時代性を感じる。

トップモストは、当時から様々なアイデアを駆使して、完成度の高い車両を１台１台丁寧に作り上げてきた。ありきたりの結果を求めることなく常に挑戦し続けることは、試行錯誤の連続だったであろう。ブームから今に至るまで走り続け、誰もが記憶に残る車両を何台も生み出したその功績は、間違いなく永遠に語り継がれるはずだ。

詳細写真

当時のマジェスティCのフロントフェイスは、大流行していた派手系の二眼デザインと、このような純正デザインを活かした一眼デザインに二分されていた。純正ウインカーを隠しているため移設加工を施しているが、マジェCらしさが残るこの表情が懐かしい。

リアに見えるメッキの追加フレームは、エンジンマウントから繋がるスタイル。リアサスペンションの取り付け方法やエアサスシステムの配置など、全体の構成の完成形を想像してフレームを作り上げる。頭の中にあるアイデアを実際に具現化することを何十台もこなし、今の地位を築き上げた。

ロー＆ロングスタイルには非常に珍しいプロドラッグサイレンサー。ドラッグレースの世界に君臨するレッドモーターが手掛けるブランドだが、新しいユーザーにはビッグスクーター用のマフラーが車種別でラインナップされていることは意外に知られていないかもしれない。その後ろに見えるメッキのサブフレームや、それをむき出しにしたリアテール下部の無機質感は、ハードカスタムがまだまだ過渡期だった証拠だ。

フロントフェイスはメーターバイザーがチョップされているだけで、純正メーターはそのまま流用できるデザイン。しかし、あえて純正メーターを取り外し、当時から人気だったアクティブのデジタルモニター（スピード＆タコメーター）と、エア圧メーターをあえてセットしている。こういった挑戦にも、トップモストらしい一面が見える。

FRPフラットシートはこの車両が製作された2009年以前よりも、他ショップも含めて存在している。しかし、トップモストによるオリジナルパーツの開発販売も含めて、広く認知されるきっかけのひとつを作ったのは間違いない。可愛いチェック柄のステップマットも同店オリジナルだ。