【アプリリア SR GT試乗記】俊足快適アーバンスペシャル

掲載日:2022年05月20日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

【アプリリア SR GT試乗記】俊足快適アーバンスペシャルのメイン画像

aprilia SR GT

イタリアが誇るスポーツバイクブランド、アプリリア。幅広いセグメントのモデルを輩出しており、スポーツスクーターも高い人気となっている。今回は同社初のアドベンチャータイプスクーターSR GTを紹介する。

スポーツバイクブランドから
アドベンチャースクーターが登場

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イタリアが誇るビッグモーターサイクルカンパニーであるピアッジオグループに属するアプリリア。こう言っては語弊が生じてしまうかもしれないことを理解しつつ書かせてもらうならば、ビッグフォーと呼ばれるバイクブランドを有する日本市場では、まだまだ馴染みの薄いバイクメーカーなのかもしれない。しかし欧米をはじめ世界各地での知名度は高いうえに、その歴史は古く、特にモータースポーツ界においては輝かしい戦歴を残してきたブランドである。

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2010年代にはWSBKにおいて幾たびもマニファクチャーチャンピオンを獲得したほか、今年2022年4月に開催された世界最高峰ロードレース、モトGPアルゼンチンラウンドにおいて、アプリリア史上初の優勝を遂げるというニュースが飛び込んできたばかりだ。遡れば1990年代には世界に知名度が高く、今なお多くのファンに親しまれている元GPレーサーの原田哲也氏がワークスレーサーとして活躍したり、スズキRGV250-γのエンジンを使用し、最高出力70馬力というスペック値で、スポーツバイクファンを驚かせた公道走行可能のレーサーレプリカRS250を販売するなど、日本とも様々な縁を持っているのである。

アプリリアに関する簡単な説明から入らせてもらったが、スポーツバイクの開発に長けたブランドであり、そのアプリリアが生み出した最新のスクーター、SR GTのインプレッションをお伝えする。

アプリリア SR GT 特徴

欧州で鍛え上げられた
プレミアムコミューター

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イタリアをはじめとした南欧エリアはスクーター文化が特に根付いた地域だ。中世から残された昔ながらの石畳の市街地での通勤通学などの日常生活に適した移動手段として、老若男女問わずスクーターを用いてきた。アプリリアもそのようなニーズに応える形で数多くの車種をスクーターマーケットに送り込んできた。スポーツモデルが得意なブランドであるため、ファンが求める声も偏り、個人的には尖ったスポーツスクーターを多く輩出してきたという印象を持っている。そのアプリリアの最新スクーターSR GTは、同社が初めて手掛けたアドベンチャースクーターだと言う。はたしてそのフィーリング、そして機能などはどのようなものなのだろうか、実際に触れることで本質を探ることにした。

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日本の原付一種区分にあたる50㏄から、世界最大排気量の850㏄モデルまで幅広いスクーターを手掛けてきたアプリリアだが、今回登場したSR GTは、174㏄水冷単気筒エンジンを搭載している。スクーター市場に限った話ではなく、つい先日まで125㏄や250㏄など、日本の免許区分に習ったモデルが多かったが、各国のメーカーがグローバル化を進めてモデル開発を進めてきた今となっては、150~200㏄の中間排気量が日本においてもメインターゲットになっていることに違いなく、そこにドンピシャで刺さる一台となっている。

アプリリア SR GT 試乗インプレッション

使い勝手の良さと
ワンランク上の走り

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欧州ブランドのスクーターはシートが高いものが多いと以前から感じている。実際に同クラスのモデルのスペックを見比べるとシート高に関して高い数値を見られる場合が多かった。それに対してホイールベースが短いことが多いと言うのもポイントで、これらのことから、“より寝かすことができる深いバンク角、“小回りができる短い軸距”というスポーツライクなディメンションが求められてきたことが分かる。が、しかし、それは体格に恵まれた欧米人が求めることであり、小柄なアジアンライダー、より込み入った交通状況とは異なるステージでのことであったと思う(TMAXが天下を取ったのは欧米人好みのディメンションだったからだと私は考えている)。

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ここで本題に入らせてもらうが、SR GTというモデルは、サスペンションストロークを伸ばしたアドベンチャースクーターだ。シートの高さは799mmで、ただでさえシートが高いと書いてきた欧州ブランドスクーターをさらに上回るほどの数値だ。オプションのトップケースも装着されたテスト車両を目の前にし、どのように跨るべきか悩んだことを書き記しておく。

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さすがに長年スポーツスクーターを手掛けてきただけありプーリーの設定が絶妙で、スロットルを開けると、しっかりとしたパワーを感じさせながらよどみなく加速してゆく。右手の操作に対する”ツキ”も過剰でもダルでもなく、ベストと言えるセッティングなので、ただ走らせるだけで楽しい。周囲のクルマをパスしながら大都市東京を縦横無尽に走り回った。

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首都高速から中央自動車道を乗り継ぎ、山道へとステージを移す。ブロックパターン風のタイヤと高い着座位置は、限界が掴みにくく最初車体をリーンさせることに手探り状態だったが、数分走らせると腰の入れ方の勘を取り戻しスポーツスクーターならではのバンク角を楽しむことができた。

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数日間乗り回したが、快適便利で俊足、それにスタイリングにしてもアプリリアのスーパーバイクに通じるものがありカッコいい。アイドリングストップ機能も備えているが、6キロ以上走ってもエンジンが温まらなくて作動しないことがあった。一方高速道路では時速100キロを超えるスピード域でも余裕さえ感じさせるシャシーとなっており、これらのことを考えると、片道20~30キロ程度の通勤通学などがターゲット層になってくると思えた。価格もスタンダードカラーで55万円なので、日常的に使用するスポーツスクーターを物色しているならば、視野に入れることをお薦めしたい一台だ。

アプリリア SR GT 詳細写真

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フルLEDライトを採用するフロントマスクは、アプリリアのスポーツラインであるRS系を連想させるデザインとなっている。スクリーンは大型で、走行風からライダーの上半身を守る。高速道路を使うようなシーンで、その効果を得られた。

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しっかりとしたトレッドパターンを持つオフロードテイストのタイヤを採用している。フロント110/80-14、リア130/70-13のタイヤサイズなので、割と選択肢は多く、好みで履き替えるのも良い。フロントブレーキはあと少しの制動力があれば最高。

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ベスパなどにも採用され、高燃費かつパワフルなパフォーマンスに定評を持つ、i-getエンジンを搭載している。排気量174ccで、最高出力は17.4馬力と十分な動力性能を備えている上に、駆動系のセッティングも良く、スムーズで速い。

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LCDディスプレイは、様々なインフォメーションが表示される。外気温計も備えているのは欧州モデルならではだ。アイドリングストップランプが常時点滅していることが気になった。スマートフォンとブルートゥースで接続する機能もオプションで用意。

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横向きにセットされたラジエーターからマフラーへ流れるように続くデザイン性の高いリアセクション。なおABSはリアブレーキには装備していない。

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リアサスペンションにはオーソドックスなツインショックを採用。プリロード調整機能付きで、欧州車としては割と柔らかめのセッティングに思えたので、多少締めても良さそうだ。

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シート高は799mmと高いが、ライディングポジションは良く、足つき性よりも走行時の快適性を重視した結果と思える。力もあるので、タンデムライドも楽に行える。

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ステップボードは足を下におろす姿勢と、投げ出すスタイルのどちらでも対応できるようになっている。燃料タンク搭載位置の関係からセンターアーチ部が高いため、足を高く上げてシートに跨ることになる。

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タンデムステップは折り畳み式が採用されている。しっかりと体重をかけることができるため、パッセンジャーも楽だ。ただ車幅が広がるので、ステップを出している際の走行には注意が必要。

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イグニッションキーの操作で、センターアーチ上に配置されたカバーが開き、燃料を給油することができる。一連の流れを乗車したまま行うことができるので便利。タンク容量は9リットル。

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ネイキッドバイクのようなスポーティなバーハンドル。スイッチボックスは操作しやすい印象なので、ハンドカバーを装着してのブラインドコントロールも問題は無いだろう。

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ヘルメット+αの容量を誇るシート下ラゲッジスペース。必要にして十分な広さだと思う。かえってこれ以上大きくすると、物置きと化してしまうことを経験上知っている。

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テスト車にはオプションのトップケースが装着されていた。ラゲッジスペースはシート下だけでも普段困らないだろうが、バックレストとしても使えるので、タンデムライドを行うことがあるなら用意したい。

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