【ベスパ スプリントS 150 試乗記】 激戦区150ccスクーター界のオシャレ番長は走りも本格派

掲載日:2021年10月21日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/淺倉 恵介

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Vespa Sprint S 150

軽二輪クラスのスクーターで、今最も選択肢が豊富なのが150ccカテゴリー。激戦区であるがため、各メーカーが趣向を凝らしたモデルを登場させている。イタリアの誇るスクーターの名門ベスパも、各シリーズに150ccカテゴリーのマシンをラインナップ。その一台であるSprint S 150は、モータースポーツを連想させる車名が示す通り、スポーティなエクステリアがポイントのモデルだ。

ベスパの基本構造とオーセンティックなデザイン
けれど懐古主義の枠には留まらない

ステップスルースタイルや、エンジンと駆動系を一体化したユニットスイングといった、スクーターの基本形はベスパが確立したものといっても過言ではない。ベスパは、イタリアの老舗バイクメーカーのピアッジオのスクーターブランド。かつて航空機メーカーであったピアッジオが、第二次世界大戦終結後に業務転換を図る中で生み出されたのがベスパ。使い勝手の良さとデザイン性の高さで、瞬く間にスクーターの代名詞的存在となり、多くのフォロワーを生んだ。

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片持ち式のフロントサスペンションやモノコックボディといったベスパの基本構造の優秀さは、今の時代まで継承されていることが証明している。現在、世界的に150ccカテゴリーのスクーターが人気を集めている。ベスパでも多くのモデルがラインナップされているが、その中で最もスポーティなエクステリアを与えられているのがSprintシリーズ。Sprint S 150は、そのトップモデルだ。

ベスパ スプリントS 150 特徴

Sprintシリーズだけの角型ヘッドライトを装備
シャシーは伝統のスチール製モノコックボディ

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Sprint S 150が他のモデルと一線を画している部分がヘッドライト。ベスパといえば、愛嬌のあるラウンドタイプのヘッドライトの印象が強いが、Sprintシリーズには力強い意匠のスクエアタイプのヘッドライトユニットを採用している。この特異なデザインは、1963年に登場したベスパGL以来、スポーティなモデルにのみ与えられるもの。Sprintシリーズのアイコニックなパーツだ。

エンジンは、排気量155ccの4ストローク空冷単気筒SOHC3バルブ。環境への配慮も怠りなく、クリーンな排気ガスと低燃費性能に優れているのが特徴。12.9PSの最高出力は取り立ててハイパワーという訳ではないが、コミューターとして十分な動力性能を発揮する。

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シャシーのトピックは、やはりベスパ伝統のスチール製モノコックボディ。本来であれば、車重の重さに繋がりかねない車体構成ながら、ライバルと同レベルの重量に抑えられているのは流石。長年をかけ積み上げてきた技術は伊達ではないのだ。

Sprint S 150には、バリエーションモデルとして、フルカラーTFTメーターを装備するTFT Editionもラインナップ。こちらは、スマートフォンとの接続機能も装備。専用アプリを使用すれば、インフォテイメント機能VESPA MIAシステムの利用が可能になる。

ベスパ スプリントS 150 試乗インプレッション

スタイリッシュなだけじゃない
モノコックボディの走りの実力に注目

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Sprint S 150を目の前にして最初に感じるのは、やはりデザインの良さだ。丸みを帯びた流麗なフォルム、効果的に配置されたメッキパーツ。ブランド力に目が眩んでいるわけではない。どう見ても、シャレているのだ。それに、このカラー。全くもって悔しいのだが、謹厳実直な日本人では選ぶのが難しい。アウダーチェブルーというのだそうだが、色味が絶妙だ。乗るのが気恥ずかしく思う人もいるかもしれないレベルで鮮やか。けれど、気にすることはない。この色は、街並みに絶妙に馴染むのだ。

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ポジションは良い意味で普通。可もなく不可もなく……ではない、シートの着座位置とステッププレートとの間にしっかりと距離が持たされているので、下半身が窮屈に感じることがない。最近のスクーターは、センタートンネルが盛り上がりステッププレートが高いものが多い。車体剛性を高めると、そうした形状になるのは理解できるが、快適性と気軽さという、スクーターの美点を損なっているのではないだろうか? その点、Sprint S 150のポジションは優秀だ。

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停止状態からの加速は、150ccカテゴリーのスクーターとしては一般的なもの。だが、パワーデリバリーはなかなかに優秀だ。スロットル操作に対するパワーの立ち上がり方は、穏やかで唐突さは一切ない。同クラスのパワフルさが売りのスクーターと比べれば、物足りなさを感じるかもしれない。だが、それは試乗レベルの短時間走行でのことだ。毎日の足として使ってみれば、Sprint S 150のパワー特性が、如何に優れたものかを思い知るだろう。

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スロットルワークに気を使う必要は一切ない。レスポンスは過敏でもなくダルでもなく、まさに”丁度良い”フィーリング。特にシティユースで常用する、40km/h〜60km/hといった速度域が気持ち良い。何も考えず開ければ、それだけで欲しいスピードが手に入る。CVTミッションの設定は、かなり上質に仕上げられている。街中での加速感は”丁度良い”としか言いようがない。走っていて、とにかくストレスを感じない。さすが、スクーター界の巨人といったところか?

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今回の試乗では、高速道路も100kmほどだが走らせてみた。そこで、スチール製モノコックボディのポテンシャルに驚かされた。排気量が155ccあるのだから、大手を振って高速道路を走ることができる。だが、このクラスのスクーターでの高速走行は、一般的に快適なものではない。パワー不足もその一因だが、何より車体の頼りなさが不安を煽る。だが、Sprint S 150は違う。直進安定性の高さはクラスを超えている。100km/hで巡航して不安を感じることはなかった。それでいて、ハンドリングは軽快なまま。レーンチェンジは一瞬、それでいて車体の挙動は落ち着きを失わない。

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レベルの高い車体だ。ただし、全く不満がないというわけでもない。一番気になったのは、ギャップを踏んだ時の突き上げ感が強めなこと。これはフロントに問題があるのではないかと感じた。フロントサスペンションは、これまたベスパ伝統の片持ち式のボトムリンクなのだが、フロントから伝わる衝撃がどうしても気になる。スプリングが硬いわけでもないので、ストロークスピードが速いと、ダンパーがスティック気味だと推測する。街乗りのスピードでの乗り心地は悪くはないので、高速走行時のみの症状。モノコックボディが素晴らしいだけに、その点が気になってしまった。

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そうは言っても、このバイクにとって高速道路は余禄。真価を発揮するのは街乗りだ。本来のステージであれば、走行性能は充分以上。その上スタイリッシュで、ブランド力には文句の付けようがない。スクーターが本領を発揮するのは日常使用。けれどユースフルなだけでは面白くない。毎日のアシにも、シャレたエッセンスが欲しい。そんな望みを持つライダーなら、Sprint S 150は最高の相棒になってくれるだろう。

ベスパ スプリントS 150 詳細写真

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細めのスポークを放射状に配置したアルミキャストホイール。スパルタンなブラックのカラーリングと、リムに施された「S」のマーキングがスポーティさを強調。

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ボトムリンク式のフロントサスペンションはベスパの伝統。ローター径φ200mmの油圧ディスクブレーキはABSを標準装備。

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排気量155ccの空冷単気筒エンジンは、最高出力12.9PS(9.5kW)最大トルク12.8N・mを発揮。燃費の良さには定評のあるエンジンだ。

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ベスパのスポーティモデルの証であるスクエアタイプのヘッドライト。光源にLEDを採用したマルチリフレクターで、Hi/Loが上下で分割して点灯する。

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グラブバーとテールランプのデザインが秀逸。ディティールに妥協しないデザインへのこだわりが、パッケージとしての美しさを生み出す。

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ステッププレートには、わずかに盛り上がったセンタートンネルを持つが、スペースは充分に確保されており、足を置く位置の自由度も高い。

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レッグシールド内側の小物入れの容量は小なめ。USB給電ソケットを装備。キーをシリンダーに刺した状態でプッシュするとフタが開く。

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シート表皮はバックスキン調の滑りにくい素材。内部のクッションは柔らかめ。シートの前方に引き出し式のコンビニフックを装備する。

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シート下のトランクスペースは平均的なサイズを確保。フルフェイスヘルメットが無理なく収納可能。

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燃料給油口はシート下後方に設けられているので、給油時にシートの開閉が必要になる。やや面倒に感じる部分。

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センタースタンドはもちろん、何かと重宝するサイドスタンドが標準装備されているのは嬉しいポイント。

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アナログ式スピードメーターと、液晶パネルのコンビメーター。夜間のイルミネーションはレッドで、とても印象的。

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右側ハンドルスイッチには、セルボタンとメーターの液晶パネルの表示を変更するモードボタンを装備する。

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左側ハンドルスイッチは、上からヘッドライトのHi/Lo切り替えスイッチ、プッシュキャンセル式ウインカー、ホーンボタン。

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グリップラバーにはVespaのロゴマークが刻まれる。グリップはヨーロッパ車らしく太めのもの。

試乗ライダー プロフィール
淺倉 恵介
Web、雑誌を問わず、様々なバイクメディアで活動するフリーライター。カスタマイズやチューニング、レース関連に詳しいが、本人の嗜好は好き嫌いなくバイク全般に及ぶ。バイクの評価で一番重視しているのは”乗って面白いかどうか”だが、身長164cmと小柄なため取り回しの良さにもこだわる。

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