取材協力/ヨシムラジャパン  取材・写真・文/石橋 知也  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年4月28日

サブコン『BAZZAZ』(バザース)。これを使えばEFI(電子制御燃料噴射)のセッティングが愛車の仕様に合わせてカンタンに行える。マフラーやカムを換えたなんていう場合は、本当に便利で強い味方になる。PCを普通に操作すれば、手も汚れず、何度でもできる。ヨシムラから販売されるBAZZAZには、日本語の取扱い説明書も同梱されているので安心。これは、ちょっとオモシロイ大人のツールだ。
※本品はクローズドサーキット専用部品です。

FEATURE

そもそも“サブコン”って何?

『BAZZAZ』(バザース)はサブコン(サブコンピュータ)で、バイク本体のメインECUに割り込み、STDの燃料噴射マップを補正するもの。つまりエンジン回転数とスロットル開度などに合わせて燃料噴射量を設定してあるSTDマップに「ここは少し濃く」とか「薄く」という補正を加えられるのだ。キャブレターで言えばジェット交換やスクリュー調整のようなもの。これをPC上で行えるわけだ。

 

ところで、なぜ補正が必要なのか? というと、市販マフラーやカムはバイクのSTD状態に合わせて製作されているとはいえ、最良の性能を発揮させるには、やはり燃料調整を行ってみた方が良いからだ。さらにバイクは新車でも若干の個体差があって、まして少し乗り込んだ状態だと、その差はSTD状態とは明らかに異なる。だから、現状の愛車に合わせて燃料を調整した方が、より良くなるというわけだ。

 

さらに、コースレイアウトや天候によって走りは違ってくるから、異なるマップを用意しておけるのは、サブコンの大きなメリットだ。現場ではもちろん微調整して、そのときの最適マップを簡単に作成できる。

 

また、マップ切り替えスイッチを装備しておけば、走行中でも2通りのマップを使い分け可能になる。

STDは80点 補正マップは90~95点

STDマップは誰が乗っても不満がない。でも、排ガス・音量規制や、間違った使い方をしてもエンジンが壊れないように安全マージンを大きく取ってあるなど、部分的に大人の事情で本来の性能やフィーリングを落としているのも事実。さらに個体差もある。したがってSTDマップが最良の場合もあれば、そうでない場合もある。そこを補正してやるのだ。

 

大雑把に言えば補正後とSTDの差は、点数で言えば万人向けのSTDが80点で、補正後は90~95点といった所だろうか。もちろん、どちらも悪くはない。

実際に使ってみると…意外にカンタン!!

BAZZAZの使い方はとてもカンタンだ。PCとUSBケーブルで接続して、BAZZAZのソフトを立ち上げればエクセルのようなマップが出てくる。このマス目に補正したい数値を入れればいいだけだ。オンロードモデル用にはSTD仕様の『Z Fi』と、トラクションコントロールなども設定できる『Z Fi TC』があるが、後者の方が何かと便利で、楽しみの幅が広い。

 

と言っても、よほど経験のある人でないと、実走してどこをどうイジればいいのか、わからないだろう。そこで便利なのが、走行データ(シャーシダイナモ上のデータでもいい)を記録し、狙う空燃比(空気と燃料の重量比。AFR:エアフューエルレシオ)に対しての補正値を教えてくれるのが、オプションの『Z AFM』だ。このセルフマッピング機能を使えば、走ってデータを収集し、それをマップに反映させればいいだけ。これを繰り返していけば、自分仕様のマップが出来上がるのだ。

Z Fi TC のセット内容は、本体、専用ハーネス、オートシフター(高感度ひずみゲージ、アンプなど)、PC接続用USBケーブルなど。これがあればフューエルマップ補正、トラクションコントロール、クイックシフトの使用が可能になる。

セルフマッピング機能を持つZ AFM。A/Fセンサーもキットに同梱。これをSTDと交換する。

A/F測定はテールパイプに取り付けたA/Fセンサー(O2センサー)からデータを得る。

取り付け作業は、大雑把に言えばイグニッションコイル、クランク角度センサー、インジェクターなどに専用ハーネスを繋ぎ、BAZZAZをECUとの間に割り込ませるだけ。コネクターをパチパチ繋いでいくだけなので難しくはない。その他にはテールライトに延びる+コードから電源を取るぐらいだ。ただ、タンクを上げ、エアクリーナーボックスを外し、増えたハーネスをキレイにまとめなければいけないなど手間はかかる。整備に自信がなければプロに頼んだ方がラクである。

イグニッション(写真はプラグキャップ一体式点火コイル)にハーネスを割り込ませる。

インジェクター(燃料噴射)にもハーネスを割り込ませる。増えた配線のまとめ方に注意。

補正マップを作るのはけっこうオモシロイ!!

Z-AFMを使った実走サンプリングは意外にカンタンだ。レーシングマシンで使うデータロガーと基本的には同じ。そしてデータをマップに反映するだけで補正マップが作れる。これを繰り返していけばマップの精度が上がる。つまり、愛車と自分に合った補正マップが出来上がるのだ。

 

作業はキャブレターのように工具もいらず、手を汚すこともない。走ってPCにUSBケーブルで接続して呼び出すだけ。マップは何枚も保存できる。気に入らなければ元に戻せばいい。季節や走り方が変われば、新しいマップを作ればいい。可能性は無限大だ。補正はメインマップの他に、例えば「1、2速は+1(濃いめ)に」という具合に、各ギアでも±できる。

まず、SELF MAPPINGを選択して、狙う空燃比(ターゲットAFR)とサンプリングしたい領域を決める。この場合は13:1で全域を選択。ただし、サンプリング可能なのはスロットル開度5%以上、エンジン回転数3,000rpm以上。街乗りで多用する3,000rpm未満や全閉(開度0%)などは手動で設定する(慣れてくれば濃い・薄いぐらいは判断できる)。

2006年型ハヤブサで実走してサンプリングしたAFR例。色が付いたマスが使用した所。使わない所は白のままで残る。上は9,000rpm、開度50%まで。サーキットではもっと高回転・高開度域がサンプリングできる。セルフマッピングはそのまま自分の走りの記録。必要もないのに見栄で全開にすると間違ったデータが記録されるので注意。

次に現在使用中のマップに対しての補正値を表示させる。濃くするか薄くするかがわかる。表示は現行マップに対しての±%で、マイナス表示は「薄く」、プラス表示は「濃く」を意味する。ここで注意したいのが、おかしな数値を見つけること。空燃比でもわかるが、例えば「なぜココだけプラスなの?」という所だ。これは手動かスムーズ機能で修正すること。

セルフマッピングで現行マップに走行データを移す前に、念のために現行マップを保存しておく(事前にマップ専用のフォルダーを作成しておく)。そして走行データを現行マップに移して生かす(APPLY ALLスイッチを使う)。これで新しいマップが完成する。(これも名前を付けて保存)。マップはいくつでも保存できるので、必ず保存してくこと。

ちょっと各補正値に差があり過ぎるなと思ったら、スムーズ機能を使う。まず、スムーズにしたい領域を選択する。するとウインドウが開き、スイッチが出てくる。一番下がスムーズ機能(SMOOTH DATE)スイッチ。ここを選択すると、補正データの繋がりが良くなるように数値を丸めてくれる。これは1回まで。何度もやると実測と離れてしまう。

本当は走行前にシャーシダイナモに載せて、パワー計測しながらセルフマッピングして基準マップを作成すると話が早い。実走ではなかなか取りにくい高回転高開度域までサンプリングできるからだ。そして実走データを重ねていけば全域で補正値を得られる。ただし、シャーシダイナモは実走とは違うので、シャーシダイナモのデータそのままでは不十分。

トラコンも自分仕様にセッティング

Z Fi TCはトラクションコントロール(トラコン:TC)の設定も可能。設定は感知レベルとカットレベル度の2つ。感知レベルはタイヤが空転してからの効きの時間(早く・遅く)のレベルで、カットレベルは点火カットのレベル。

 

知っての通り、トラコンは滑ると失火させてトラクションを回復させる機能だ。レベルはいずれも0(トラコンなし)と1~10。感度はPC上と手元スイッチの両方で調整できる。また、スロットル開度、エンジン回転数に加え、各ギアでも調整可能だ。

※手元スイッチはオプションパーツとして販売

クイックシフターは街乗りでも便利

クラッチ操作なしでシフトアップが可能になるクイックシフター。レースでは必須の装備で、最近はSTDでも装備されている車両もある。BAZZAZでは感知レベル、点火カット時間、各ギアチェンジでの調整が可能だ(Z Fi TCまたはZ Fi+QS4USB)。最新のシフタースイッチはストロークスイッチではなく、レーシングマシンと同様の高感度ひずみゲージを採用しているので、シフトフィーリングがとてもダイレクトで、タイムラグがない。

シフトスイッチ、ユニバーサルストレインゲージ(税抜価格3万3,000円)。上の四角い物体が感度レベルのコントローラーで、その下の筒状のものが高感度ひずみゲージ。わずかな物のひずみを感知するセンサーだ。

シフトロッドに取り付けたストレインゲージ(ひずみゲージ使用のスイッチ)。正逆チェンジ共用。ボルト類も付属。リンクの角度調整(基本は各部90度)は注意が必要だ。

車体左側のカウルにベルクロ+両面テープで取り付けた感度調整用のアンプ(コントローラー)。+ボタン(青)を押すと感度が増し、軽いタッチで操作可能になる。アンプは防水だ。

-ボタン(赤)を押すと感度が鈍くなる。推奨範囲は-15~+5。

両ボタンを同時に3秒以上押すとリセット(緑ランプ点滅)できる。

PC上で点火カット時間(単位はミリセカンド:1/1000秒)を各ギアチェンジで調整可能。基本的に「低いギアは長く、高いギアは短く」だ。最短でも40/1000秒ぐらいまでが推奨値。

ここが使いこなしのポイント

正直言って「BAZZAZはハマる!!」。ちょっとレーシングライダー兼電子制御担当エンジニアになった気分になる。EFIも使いこなす時代。自分仕様をカンタンにセッティングできるし「もっと良くならないのかな?」という追求心も旺盛になる。で、使いこなすポイントをいくつか。約4年間使ってみての個人的感想なので参考になれば…。

  • ■ 何度でもマップを更新できるので、セッティングに終わりはない。保存した過去マップとも比較する。
  • ■ セルフマッピングは最終履歴が記録されるから、本来は場所毎でサンプリング(PCを持参して出かけるといい)。
  • ■ 気張った走りをしない。あくまで自分の走りでないと合ってこない。
  • ■ 「濃い・薄い」を自分でわかるように、人間側の感知の能力を上げる。キャブの経験は生きる。
  • ■ Z-AFMとマップセレクトスイッチ(2枚のマップを切り替えられる手元スイッチ)は必需品。
  • ヨシムラのメカニックにも直接相談できる

手前からトラコン感度スイッチ(0~10)、マップ切り替えスイッチ、TCアクティブブルーライト(トラコン作動時に点灯)。

LINE-UP

Z Fi(税抜価格4万6,100円~)

フューエルマップ補正が可能なベーシックなサブコンで、各ギアでの調整も可能。操作はPC上(USB接続)。停止時・シャーシダイナモ上ではリアルタイム表示(空燃比など)も可能。手元スイッチを追加すれば車上で2枚のマップを切り替えられる。

Z Fi TC(税抜価格11万円~)

フューエルマップ補正に加え、トラクションコントロールの調整(別途手元スイッチがあればさらに10段階調可能)ができるサブコン。オートシフターもセット。PC上で失火時間調整も可能。Z Fiとともに対応機種は大型国産・外車を中心に豊富。

Z Fi MX(税抜価格3万7,600円)

モトクロス用だがBMW F800GS (2008-2013年式)やKTM990アドベンチャー(2007-2013年式)、990スーパーデューク(2006-2012年式)など人気のアドベンチャーモデルにも対応するから嬉しい。機能はZ Fiに準ずる。

Z AFM(税抜価格4万円)

走行中の空燃比を測定して記録し、そのデータをマップに生かすことが可能なセルフマッピングアクセサリー。フューエルマップ製作には非常に便利(超お薦め)。Z Fi、Z Fi TC、Z Fi MXに対応。A/Fセンサー取り付けはヨシムラや販売店などに相談を。

QS4 USB(税抜価格5万1,400円)

オートシフター機能を楽しむためのキットで、Z Fiにも追加が可能。高感度ひずみゲージ(シフトスイッチ)、感度レベル調整用アンプ、ハーネスなどが付属。

Z BOMB(税抜価格8,000円)

点火タイミングに介入してCBR1000RR (2008-2012年式US仕様車)で約6馬力、CBR600RR (2009-2012年式US仕様車)で約3~5馬力アップ。スズキ車(B-KINGを除く)では実測300km/hリミッターを解除する。サーキット向け。

BRAND INFORMATION

ヨシムラジャパン

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。

 

住所/〒243-0303 神奈川県愛甲郡愛川町中津6748
電話/046-286-0321