取材協力/スペシャルパーツ忠男 取材・撮影・文/淺倉 恵介 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

掲載日/2012年3月14日

高性能アフターマフラーメーカーとして、その名を広く知られるSP忠男。同社のマフラーは、独自の設計思想に基づくユニークな構造を持つのが特徴のひとつ。代表作ともいえる『スーパーコンバット』シリーズは、“高効率充填発想” を謳ってエキゾーストパイプを一体構造とするなど、個性的な設計で異彩を放っている。パフォーマンス向上は当然の前提として持ちつつも、数値上のみのハイパワー追いかけるのではなく、“誰が乗っても楽しいマフラーを作る” というSP忠男の一貫したポリシーは、多くのライダーから支持されてきた。


一見しただけでは、一般的なショート管タイプのマフラーにしか見えないが、リアアクスル下を覗き込むとボックス部が確認できる。CB1100用のPOWER BOXは、6万5100円(税込み)。スタンダードのエキゾーストパイプをそのまま使用し、サイレンサー以降をリプレイスする構造を採用したことで、手の届きやすいプライスを実現。コストパフォーマンスの高さも魅力の一つだ。

 

そのSP忠男から、全く新しいテクノロジーをフィーチャーしたマフラーが登場した。それが『POWER BOX』だ。写真のCB1100に装着されているのが、そのニューモデルCB1100用のPOWER BOXなのだが、一見オーソドックスなショート管タイプのマフラーにしか見えない。ショート管といえば、プリミティブなアフターマフラーの形。ある意味で、SP忠男らしからぬ製品と言えなくもない。だが、SP忠男が “見たまま” の製品をリリースするわけがない。バイクの腹下を覗き込むと、見慣れないボックスが存在することに気付く。そのボックスこそが、POWER BOXがPOWER BOXたる由縁。その名の通り “力の箱” なのだ。ここでは、期待のニューカマーPOWER BOXの秘密に迫る。

スペシャルパーツ忠男

目玉のマークでお馴染みの、元モトクロス全日本王者鈴木忠男氏が率いる老舗パーツメーカー。マフラーを中心に、様々な高性能パーツをラインナップする。SP忠男のマフラーは、性能アップはもちろん、ライダーの感性に訴えかけるテイストの深さに定評がある。

 

SHOP DATA
■住所/東京都台東区北上野1-7-5
■電話/03-3845-2010
■営業時間/11:00~19:00
■定休日/毎週水曜日、毎月第3火曜日

このPOWER BOXは、CB1100というバイクの存在抜きには語れないのだという。POWER BOX開発の経緯を、SP忠男でマフラー開発を担当する大泉氏に語ってもらった。

 

「CB1100のスタイルには、ショート管しかない。まず、そこから開発がスタートしました。ですが、ショート管は性能が出すのが難しいんです。最初はフルエキゾーストを作ってみましたが、どうにもまとまらない。パワーが出ただけでは、SP忠男のマフラーとして世に送り出すことはできません。理想の特性を作り出す為に、管長や管径は何種類試したかわからないくらいです。そうしてトライ&エラーを繰り返す中で生まれてきたのが、膨張室を着けてみたらどうか? というアイデアなんです」

 

その膨張室こそが、POWER BOXというネーミングの由来となっているボックス部分なのだ。マフラーの役割は「効率良く排気を行うこと」と「排気音を消音すること」の2点。このふたつの要求を満たすにはマフラー全体で、ある程度の容量が必要だ。ショート管の場合、物理的なスペースが限られるため容量確保が難しい。そこでPOWER BOXでは、サイレンサー手前に膨張室を設けることで、マフラー全体での容量を確保しているのだ。POWER BOX構造の採用で、開発は一気に進んだという。

 

「POWER BOXで容量を確保したことで、パワー特性を作りやすくなりましたし、消音性能も上がりました。我々は “エンジンを騙す” と表現していますが、長いエキゾーストパイプや、大きなサイレンサーを着けたような特性を出すことができたんです」

 

だが、開発はそこで終わりではない。むしろ時間がかかるのはここから。大泉氏がこだわったのは、走りのテイストの部分なのだ。

 

「ベースとなったエンジンがCB1300SFですから、CB1100本来のポテンシャルは高いんです。マフラーでパワーを出すのは難しくない。POWER BOXでもパワーは上がっていますが、目指したのはそこではありません。スロットルの開け始めや、流して走る時の気持ち良さには、徹底的にこだわって開発しましたね。峠を攻めなくても、ロングツーリングに出かけなくても、近所を一周するだけでも楽しい。そんなマフラーに仕上げたつもりです」

 

また、味付けの部分で特に力を注いだのが、アイドリング付近のパワー特性だという。

 

「CB1100は低中回転域のトルク特性がスムーズさに欠ける。そこを調整することで、すごく気持ちよく走れるようになるんです。POWER BOXはクラッチを繋いだ瞬間が違います。ユーザーさんに試乗していただくと、皆さん発進する瞬間に “ニヤッ” とされますよ。ショート管のスタイルで、こんな乗り味のマフラーがあるのかと大変ご好評をいただいています」

 

POWER BOX構造の採用で実現した、理想のスタイリングと理想のパワー特性の両立。こだわりの新世代マフラーPOWER BOX、その乗り味を是非味わってみて欲しい。

スペシャルパーツ忠男
大泉 善稔

SP忠男でマフラー開発を統括、同社製マフラーは全て何らかのかたちで大泉氏が関わっているというSP忠男マフラーのキーマン。「クラッチを繋いだ瞬間に笑みがこぼれるマフラー造り」が開発のモットーで、乗って楽しいマフラーにこだわる。若き頃はモトクロスやエンデューロに熱中し、ロードバイク経験も豊富。現在の愛車はBMW F800S。


 

各シリンダーからの排気ガスはエキゾーストパイプを通って集合し、サイレンサーに向かう。その排気ガスの一部が、サイレンサー手前に設けられた膨張室へと流れ込む。膨張室は消音と排気ガスを整流する役割を担う。膨張室内に導かれた排気ガスは、排気脈動や排気ガスの流れによって発生する負圧によって吸い出され、サイレンサーへと送り出される。


 

CB1100用
POWER BOXのパワーグラフ


縦軸が出力で横軸が速度域を表す。青い曲線がノーマルマフラー、赤い曲線がPOWER BOXの測定データなのだが、POWER BOXは全域で見事にパワーアップを果たしているのが判る。特に目立つのが高回転域の伸び。ピークパワーで確実に5馬力は向上している。そして注目したいのがアイドリング領域の低回転域。ノーマルマフラーで谷となっている領域が、POWER BOXでは見事にフラットなカーブを描いている。スムーズで力強い、出足の良さが伺える。

 

一般的なフルエキゾーストと異なり、マフラーのパワー特性を作り出す役割をエキゾーストパイプに依存しない
POWER BOX。だがその分、膨張室の形状や容積がマフラーのキャラクターを大きく左右する。また、膨張室に手
を加えると、マフラーの特性がシビアに変化し、その セッティングがピンポイントな傾向があるという。革命
的なマフラーであるが故か、製作には手間がかかり膨大なノウハウを必要とするのだ。

エキゾーストパイプの制約から解き放たれたPOWER BOXは、今までに無い自由な造形も魅力。構造上、最近流行のショートフォルムやメガフォンサイレンサーとの相性は抜群で、ラインナップ全てがJMCA認定を取得した政府認証マフラーなことも見逃せない。SP忠男では、POWER BOXマフラーを立て続けにリリース。ここで紹介している車種だけではなく、近々リリース予定の製品も多い。最新情報はSP忠男のホームページでチェック。

SP忠男ではユーザーへのサービスを充実させるため、ネットでダイレクトストアを展開中。
ダイレクトストアでは様々な購入者特典が用意されているので、SP忠男製品を購入するなら、
SP忠男ダイレクトストアがお薦めだ。

 

SP忠男ダイレクトストア


機械イジリが苦手な人にとってマフラー交換はたいへんな難作業。ショップに依頼しても思った以上に工賃がかかるものだ。ところが、SP忠男ダイレクトストアでSP忠男製マフラーを購入した場合、なんと取付け工賃が無料! しかも、世界中どこでもSP忠男のメカニックが出張してくれるのだ。申し込みはマフラー購入時に「出張取付け希望」と申し出るだけ、交通費はユーザー負担となる。

 

 

マフラーを交換した後、始末に困るのが取り外されたノーマルマフラーだ。JMCA取得、政府認証マフラーのSP忠男製マフラーは車検対応なので、ノーマルマフラーを保管しておく必要も無い。しかし処分するには費用がかかる…。SP忠男ダイレクトストアでマフラーを購入した場合、不要になったノーマルマフラーを無償で回収してくれる。マフラー出張取付けを依頼すればマフラー交換時に回収してくれるし、それ以外はSP忠男上野店にマフラーを送ればいい。その際の送料はユーザー負担となる。

SP忠男ダイレクトストアでのマフラー購入者向けサービスとして、ダイレクトストア限定エンブレムが用意されている。専用デザインを採用しており、カラーは赤と青の2タイプから選択可能。他では絶対手に入らない、プレミア感抜群のエンブレムだ。

 

通常版のエンブレム(写真上)と、SP忠男ダイレクトストア限定のエンブレム(写真下)。限定エンブレムは写真の赤の他、同デザインで青いタイプも用意されている。どのエンブレムを選ぶかはユーザーの自由だ。