ヤマハ車を専門に手がけるコンストラクターとして、その名を轟かせる『RC甲子園』。その技術力は、全日本ロードレース選手権などトップカテゴリーのレースで磨き上げられた本物中の本物。RC甲子園は、HITMANマフラーをはじめとする高性能アフターパーツメーカーとして知られているが、数々のコンプリートカスタムを製作してきた実績がある。それが『R CONCEPT』シリーズだ。R CONCEPTのポリシーは「マシンが本来持つパフォーマンスを引き出す」こと、そして「ローコスト」であること。高性能でリーズナブルなR CONCEPTのコンプリートカスタムは、RC甲子園のもうひとつの代表作だ。
そのR CONCEPTの最新作が『TMAX530 R2』だ。ネーミングに“R2”とあるように、従来モデルのTMAXの時代に『TMAX R』として誕生し、TMAX530の登場に合わせる形で“R2”へと進化。先に登場したTMAX530の海外仕様をベースに開発されたものだが、この度デリバリーが確実な国内仕様をベースにしたTMAX530 R2が、新たにラインナップに加わった。
一見しただけでは、HITMANのマフラーが装着されただけのTMAX530。エンジンを始動させても、チューンドらしさは希薄だ。低音とパルス感が強調された排気音が、唯一“チューニングマシンである”と主張するものの、マフラー自体は完全なストリートリーガル。しっかりと音量が抑えられているので、カスタム車にありがちな騒々しさもない。排気音がやかましくないのは好ポイントと言えるが、見た目や排気音から受ける印象は“ほぼノーマル”である。
だが、走り出して驚いた。R2はトルクが明らかに太く、加速力が異様に強い。まるで、スロットルとリアタイヤがダイレクトに繋がっているような加速感なのだ。一般的に、プーリーを使用したミッションは、スロットルを開くと先にエンジン回転が上がり、追いかけるように車速が上がってくる。エンジン回転数に見合った車速に到達するまでにタイムラグが生じるので、スロットル操作と駆動力に体感的な差が出てしまうものだ。これは、構造上仕方のない部分でありR2にも“ラグ”が存在しないわけではない。けれど、エンジン回転数と車速のタイムラグが極端に小さいので、加速感が実にリニア。また、エンジンのレスポンスも大幅に向上しているので、相乗的な効果をもたらし、実に速い。ダイレクトな加速力が痛快で、やたらとスロットルを開け閉めしてしまった。加速すること自体が楽しいのだ。
テールアップされたスタイルがスポーティなHITMANのマフラー。エキゾーストパイプからサイレンサーまで、全てがTMAX530専用品で作られた、スタイルだけのマフラーとは一線を画す、ハイパフォーマンスなエキゾーストシステム。
余裕あるパワーは、まるで排気量を上げたような感覚。発進加速からトップエンドまで、一段上のパワーを楽しめる。もちろんR2は、ボアアップもストロークアップもされていないし、サブコンなども装着されていないという。であれば、この圧倒的なパワーフィーリングを実現したファクターとして上げられるのは、まずはマフラー。だが、HITMANのマフラーを装着すればこのパワーが手に入る、というわけではないらしい。コンプリートマシンならではの完成度、これは素晴らしい。オプション装備であるフロントのブレーキキットも好印象。キャリパーはスタンダードのままで、大径ローターを装着するキットなのだが、制動力は強化しつつブレーキフィーリングが自然。ローターを大径化すると、ジャイロ効果が強まりハンドリングが重くなる例もあるのだが、そういった悪癖もない。バランスの見極めが絶妙なのだ。
今回、試乗に協力していただいたYSP大阪箕面の好意で、ノーマルのTMAX530Rとの乗り比べが実現したのだが、ノーマルで走った感想は「TMAX530って、こんなに遅かったかな?」である。誤解を招かないように付け加えておくが、もちろんノーマルのTMAX530は遅くなどない。そう感じてしまうほど、R2の走りが力強いのだ。TMAX530 R2の価格はスタンダード仕様で113万4,000円で、ノーマルとの価格差は17万円弱。実はこの値段、マフラー単体の価格より安いのだ。R2がマフラーを装着しただけのマシンではなく、各部にチューニングが施されていることを考えれば、驚きのバーゲンプライスである。速く、楽しく、その上でリーズナブル。TMAX530 R2とは、なんとも魅力的なマシンである。
驚きの完成度を誇るTMAX530 R2。そのR2は如何にして生み出されたのか? RC甲子園のヘッドショップ的存在の、YSP大阪箕面で店長を務める田丸さんにTMAX530 R2、そしてR CONCEPTについてお話しをうかがった。
「弊社ではTMAX530が発表されて、すぐにR2を製作しています。TMAX530は、それだけポテンシャルの高い魅力的なマシンだと考えています。国内仕様が登場したことで、よりTMAX530の存在が身近になり、多くの人にTMAX530を楽しんでもらえることになりました。そこで国内仕様をベースにしたR2の製作を決めたのですが、開発には意外なほど苦労しました。特に時間がかかったのがマフラーの開発です。パワーを出すだけであれば簡単なことなのですが、法規制に適合させるとなるとそうはいきません。日本の排気ガス規制は非常に厳しいので、音量を抑えて排気ガスもクリーンにして…という条件を満たした上で、ノーマルを上回るパワーと楽しさを引き出すマフラーを作るのは、なかなか困難なのです。TMAX530の国内仕様が登場してから、R2のリリースまでにタイムラグがあるのは、マフラーが完成するまでに時間がかかったのが主な理由ですから」
R2にも装着されている、TMAX530用のHITMANマフラーは非常に凝った造りがされている。当然、コストもかかっている。
「RC甲子園のモノ造りは、妥協を許しません。“これくらいでいいか?”で発売してしまうことは絶対に無く、納得いくまで開発しますので、時間がかかることもあります。お客様をお待たせしてしまうこともありますが、待っていただいた分だけ、ご満足いただける製品をお届けしている自負はありますね」
また、R CONCEPTのコンプリート車両は、各地のR CONCEPT店でのみ販売とされているが、その理由も訊ねてみた。
「R CONCEPTの車両は、耐久性や信頼性には自信がありますし、特別に神経質に扱う必要はありません。ですが、チューニングマシンである以上、メンテナンスにはノーマルとは異なった気を遣うポイントがあります。ですから、そこに対応できる知識と技術力をもったショップさんとパートナーシップを結び、R CONCEPT店として、R CONCEPTのマシンを販売していただいています。だからこそ、新車と同じ内容の保証もできるのです。パーツをキット化せずに、新車コンプリートのみとしているのも同じ理由です。パーツは、ただ組めば良いというものではありません。その意味を理解し、正しく装着しなければ性能は発揮できませんし、間違った組み方をすれば危険を招きかねない。それはメーカー、コンストラクターの責任として許されません。R CONCEPT店でコンプリート販売しているからこそ、自信を持ってお客様に薦められるのです」
開発から販売、そしてメンテナンスに至るまで、全ての面で妥協を許さないR CONCEPT。そこからは、真摯な姿勢でバイクに向き合うRC甲子園のポリシーが感じられる。安心して安全に、クオリティの高いカスタムマシンを楽しめる、それがR CONCEPTなのだ。
田丸 善隆さん(YSP大阪箕面店長)
TMAX530 R2には企画から関わり、開発全般に携わる。メカニック出身で機械にも精通する。スポーツバイクを多く乗り継いできたスポーツライディング好き。現在の愛車はトリッカー。
住所/大阪府箕面市今宮3丁目2-5
電話/072-726-5310
営業時間/10:00-20:00
定休日/水曜日、第3日曜日
TMAX530
TMAX530 ABS
TMAX530 ABS(BLACK MAX)
113万4,000円
118万6,500円
121万8,000円
※ヤマハTMAX530国内仕様車ベース
※税込み、諸費用別(2014年2月現在)
TMAX530 R2をはじめ、R CONCEPTのコンプリートマシンは、全国各地のR CONCEPT店で購入できる。R CONCEPT店は、RC甲子園が認めた高い技術力を持ったショップばかりで、どこでも同じレベルのサービスを受けることができる。試乗車も用意されているので、TMAX530 R2を実際に体感することも可能。試乗を希望する場合は、事前に各ショップへ確認のこと。
電話/047-403-2784
電話/03-3977-5025
電話/03-5610-7091
電話/03-5813-7400
電話/044-755-1141
電話/042-648-0819
電話/042-551-6797
電話/053-465-4545
電話/054-265-4546
電話/0532-48-3336
電話/072-993-7766
電話/072-726-5310
電話/0798-22-1102