モーターサイクルの足回りを構成しているセクションのひとつがサスペンションだ。路面からの衝撃を緩和し、加減速やコーナリングなどで高い荷重が掛かった場合も底付きせずに受け止める能力などが要求される機能パーツである。そして、特にモーターサイクルの場合はドレスアップ的な要素もある。それらの要素をハイレベルで達成しているのが、イタリア製の『Matris』(マトリス)だ。F1チームに在籍したスペシャリスト達によって設立され、そこで培われたテクノロジーをバックボーンとし、コストの掛かる削り出しパーツを多用するなど、性能面とルックス面の両立が果されている。
Matris(マトリス)はイタリアに本拠を置き、バイクのショックアブソーバーをメインとするパーツメーカーである。2000年にステアリングダンパーをリリース、2003年にリアショック、2004年にはフロントフォーク用のカートリッジ、そしてレーシングフォークと続いている。
自社のプロダクトを世に送り出してからの歴史は比較的浅いが、その技術的なバックボーンとなっているのはF1だ。レースにおけるトップエンドでもあり、さまざまなテクノロジーが先駆けて投入される世界。その有力チームに長年在籍し、腕を奮っていた4人のスペシャリスト達で構成されているのがマトリスなのだ。現在でも少数精鋭で開発から生産までが行われている。
一般ユーザーが手にすることができる製品はもちろん量産品だが、そのボディにはCNCマシニングセンタによるアルミ(超ジュラルミン7075)削り出しのパーツが惜しみなく使われており、その車両のために作られたワンオフパーツのような雰囲気と存在感を醸し出している(ステアリングダンパーに至ってはチタンも使用)。それにイタリアらしい高いデザイン性も兼ね備わっており、ルックス面での大幅な向上が得られるのは、カスタムパーツとして大きなポイントだろう。
もちろん要求される性能面においても、スペシャリスト集団らしい高レベルにあることは言うまでもない。例えば、リアのモノショック用フラッグシップモデルであるM46Rにおいては、フリクションを低減させるためにロッドにはチタンコーティングが施されており、油圧によるプリロードアジャスターに、ダンピングの調整はもちろんのこと、コンプレッション(圧側)の調整はハイとローの2つを備えたフルアジャスタブルなのである。それらの調整機構を活用して好みの乗り味に仕立てていくのも、ショックユニットを交換する面白さや楽しさだ。
一般的にショックユニットは、使っていくうちに内部は汚れが貯まり、封入されているオイルも劣化する。そのため定期的なオーバーホールは欠かせない。輸入元である松本エンジニアリングでは、そんなサポート態勢も万全である。また、製品はシリアルナンバーで管理されており、1年間の保証も付帯している。
しかし高性能な製品であることはわかるが、実際に使ってみたらどうなのか?愛車のサスペンションをマトリスに換装した、ふたりのオーナーに聞いてみた。
通勤から買い物、そしてツーリングに至るまで、ホンダNC700Xを使っているという蒲田さん。以前は同じくホンダCB1300に乗っていたが、しばらくすると不満の塊になってしまったのだとか。それは路面のつなぎ目でフルボトム! その不安定さはツーリングで後ろを走っていた奥様から見ても「大丈夫なんやろか?」と不安にさせるほどで、蒲田さん自身も「転倒するんじゃないか?」という恐怖との戦いのライディングでもあったのだ。
それはNC700Xになっても同じように感じて乗ること自体億劫となり、暫く放置。しかし「これではイカン!」と思い直し、何とかしたいと馴染みの用品店であるバイクセブンのスタッフに相談。そこで勧められたのが、サスペンションをマトリスへ換装するということだった。リサーチしてみると、製品は高い性能とクオリティを有しているようで、さらに他の人とカブらないのが気に入ったそうだ。「決め手はオレンジですわ」と笑う。
リアにはスタンダードモデルのM46K、フロントはスプリングキット(プリロードアジャスター付き)を選択。するとそれまでの不満は解消し、積極的に乗るようになって「おかげさまで“単車らしく”なりました」とのこと。さらにお尻の痛みも無くなり、「特にリアが最高に気に入っています。峠道でも積極的にスポーツライディングできるようになりました」と、マトリスのサスペンションには大満足の様子だ。
和田さんはこれまでスーパースポーツ系を乗り継ぎ、ワインディングや時にはサーキット走行といった具合に、車体のキャラクターに合った楽しみ方を中心にしている。サスペンションを変更することで路面を“掴んでいる感じ”や“蹴っている感じ”が格段に解りやすくなることは、前車のホンダVTR-SP1で経験済み。
ドゥカティ1098Sでは、最初にステアリングダンパーの装着を考えた。せっかくだから乗っていても見えるタンクトップに欲しい…と、望みに適うものをいろいろ探して辿り着いたのがマトリスだった。輸入元を見ると住まいから遠くないことから単身突撃。そこから松本エンジニアリングとの付き合いが始まり、現在では同社のデモ車的な存在にもなっているのである。
前述のとおり、和田さんはサスペンションを純正から交換することの効果を体感しており、1098Sでも同様に考えた。マトリスの良さはステアリングダンパーで確信しており、サスペンションメーカーとしても、半ば一択状態だったのである。交換後は、やはり純正とは全くの別次元だったそうだ。バネレートを上げながらも嫌なゴツゴツ感は無い。サーキット走行では安心してアクセルを開けられるようになり、さらにセッティングに対しても積極的に触るようになったという。「マトリスが自分好みの走り方に威力を発揮してくれていると思います。乗り易さに貢献していて、気持ち良く、楽しく走れていますし、そのぶん安全のマージンも上がっているのではないでしょうか」。
日常生活からサーキット走行まで気持ち良く、そして楽しくさせてくれる。マトリスのサスペンションは、ライダーの満足度を高める性能に、非常に優れているようだ。
ステアリングダンパー、フロントフォーク、リアショック…
ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ
BMW、トライアンフ、ドゥカティ、アプリリア…
住所/大阪府東大阪市西堤1-2-2
電話/06-6784-4120
FAX/06-6784-4165
営業時間/10:00-17:00
定休日/土・日
Matrisを始めとして、アメリカ製マフラーの『Two Brothers Racing』、イタリアのパーツメーカーである『ACCOSSATO』、同じくイタリアの削り出しパーツを得意とする『Roby moto Engineering』の日本国内における輸入元。『Matris』においては性能を維持するためのオーバーホールを行っており、セミオーダーや仕様変更も受け付けている。