取材協力/岸田精密工業株式会社(TEL/06-6411-4001)  記事提供/絶版バイクス14(2013年7月18日発売)
掲載日/2013年9月25日
海外輸出をメインにキャブレターパーツメーカーとしての地位を確立してきたキースター。
同社では吸排気系のチューニング時やキャブレターの修理オーバーホールのときにも使える
「燃調キット」を開発販売し、我々絶版車ユーザーの期待に応えている。

エンジンコンディションを大きく左右するのがキャブレターである。普段から調子良ければ大丈夫なのだが、整備したことでキャブコンディションが今以上に良くなり、始動性の良さや乗りやすさが格段に向上することもある。

キャブのトラブルで 一 番多いのがオーバーフローやガスケット部からのガソリン漏れである。キースターの燃調キットにはフロートセットとチャンバーガスケットを同梱しており、特にカワサキZ1系キットでは、ガソリン漏れしにくいキャンバスゴムから型抜きしたガスケットを採用している。キャンバスゴムとは、編み込まれた繊維層がゴムの内部にあり、ガスケットを繰り返し締め付けても切れ難いのが特徴だ。標準の紙製ガスケットとは大きく異なる密閉性を得られる。また、エンジン始動後にスターターチョークを戻してもガスが濃い状態が続き、マフラーから黒煙が出たり(排気口内側をウエスで拭き取ると判断できる)、ガレージ内でアイドリングさせておくと眼がチクチク痛くなるようなケースでは、アイドリング時のガスが濃いと考えられる。例えばスロー(パイロット)ジェットが規定の番手でエアスクリューまたはパイロットスクリューの戻し回転数も規定なのに前述症状が起こる場合は、スタータープランジャが問題でガソリンが濃くなっているとも考えられる。キースターのキットにはこのスタータープランジャも同梱されているので安心だ(プランジャ先端のゴム板がシール不良を起こしているか本体外周がキャブボディーと擦れて作動不良を起こしている例が多い)。

ここまでのお話はすべて通常メンテナンスに関する内容だが、このキットはその商品名にあるように「燃調」するためのキットである。例えば、純正キャブのままエアクリーナーボックスを外してパワーフィルターなどを取り付け、スペシャルマフラーを装着することで吸排気効率が高まり、より多くのガソリンをエンジンから要求されることがある。これを無視して走り続けた結果、ガスが薄過ぎてオーバーヒートになりエンジンが絶不調になるケースも珍しくない。また逆に、吸排気系は変更せずにシリンダーヘッドの面研磨を行ない、ハイコンプレッション化したところ、ガスが濃くなりゴボゴボ症状に陥ることもある。

そんなときに利用したいのが、燃調キットに同梱されるメイン&パイロットジェットや中速域の燃調コンディションに大きく影響するジェットニードルである(太さや角度が違っている)。同キットには純正セッティングを基準に薄くなる方向、逆に濃くなる方向に調整できるパーツが入っているので、キャブコンディションが不調の場合は、セッティングにチャレンジしてみてほしい。

絶版車のエンジン不調の原因の多くにキャブレターが関わっていると言っても過言ではない。特に多いのが、オーバーフローやガソリン漏れ関係のトラブルで、次に多いのが始動系トラブルだろう。Z1 系キットにはスタータープランジャ本体とスプリングも同梱されているので安心だ。

初代Z1はフロートチャンバーに大型ドレンプラグがあるため、レース用キャブレターと同じようにキャップを外してメインジェットを交換することが可能だ。Z2も初期型のみZ1と同じ28Φキャブを採用していた。

ベテランメカニックはバラしたキャブレターの部品をゴチャ混ぜにせず、各気筒で容器を分けてメンテナンス&保管をしている。ワニスで固着していたりネチョネチョなキャブレターは、漬け込みタイプのキャブレター洗浄液で洗い流そう。キャブの分解時にはハンディーヒーターも役立つ。

キースターでは燃調キットの詳細内容をリスト化しWEBで公開しているので画面上でキット同梱部品を確認できる。カワサキ空冷Z用は豊富で、初代Z1はもちろんZ2やマーク2、Z1-R用など、純正キャブレターのタイプ別にラインナップしている。オーバーホール対策に役立つフロートバルブセット入りでフロートチャンバーガスケットはキャンバスゴム仕様。全モデルともに1気筒分税込価格3150円。