U-KANAYAのビレットパーツはクオリティと値段で勝負する
取材協力/岸田精密工業株式会社  取材・文・写真/モリヤン  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2014年7月16日
岸田精密工業から発売されているKEYSTERは、国産旧車に対応するキャブレターのセッティング&リペアパーツである。絶版車にとって、細かいキャブレターパーツの存在は、本当にありがたいものだ。今回は、旧車販売店であるベイエリアモータースからのレポートをお届けする。

INTERVIEW

新品パーツを安価で供給する
そんな頼もしいセッティングキット

横浜にあるベイエリアモータース。ここは国産の絶版車を数多く扱う有名なバイクショップである。代表の市川直寛さんは、まだ30代の半ばと若いが扱う車種のほとんどが1970年代の国産バイクばかりなのだ。市川さん本人はカワサキのZシリーズが大好きでこのお店を立ち上げた。現在はメカニックの服部春夫さんと共にショップをきりもりしている。

 

「服部さんはホンダのCBが大好きでね。扱う車種にもCBが増えてきました。特に4気筒の旧車を得意としているので、岸田精密工業さんのKEYSTERキャブレターリペアキットは本当に助かるアイテムとして使っていますね」

 

デビューから長い時間が経過した名車たちをきちんと蘇らせるには、キャブレターの細かいリペアパーツは必需品である。しかも、マルチエンジンの場合は、各気筒のバランスも重要になるので、本調子を出すのは容易なことではないのだ。特に放置が長かった車両だと、キャブレターの内部は悲惨な状態になっていることがほとんどで、キャブレターの本体内部を綺麗にすることはもちろんのこと、ジェットなどの細かいパーツは新品交換すべきという状況がとても多いのである。

 

「アメリカから輸入されたバイクだと、向こうのオクタン価が異常に高いレース用ガソリン等のためにキャブレターの内部が変質していたり、ありえない減り方をしている場合もあります。まぁどんな車両でもキャブレターをまったくメンテナンスしないで納車できるなんてことはまずないですね」

 

CB750用の4連キャブレターをメンテナンスしながら、服部さんはそう言う。旧車を扱う上で大きな問題となるのが、このリペアなのだ。健全なキャブレターをセッティングするのなら、必要なパーツはメインジェットやパイロットジェットだけでも可能だが、ジェットの交換だけではハナシにならないのが旧車のメンテナンスである。

 

放置期間が長い車両は、外観がどんなに美しくても内側の状況がひどい。不動の状態で現存する旧車のほとんどは、ガソリンはタンクに入ったまま、燃料コックはオンのまま、バッテリーも接続されたまま、というバイクがとても多い。当然、キャブレターの中には腐りきったガソリンがタール状になってへばり付き、注意して分解しないと、そのほとんどが使い物にならなくなってしまうのである。

 

ベイエリアモータースでは、このキャブレターのリペアを得意としている。本体に大きな問題がある場合は除いて、ほとんどのキャブを徹底的に分解洗浄して、交換できるパーツはなるべく新品に交換する。そんな時の手強い味方が、このKEYSTERのキットなのだ。

 

内容は、ジェット以外にもフロートバルブやパッキン。ガスケットやスプリング等もワンセットになっているので、基本的な消耗部品はすべて新品に交換できる。しかも価格はとてもリーズナブルという点でも、お客さんの財布に優しいという大きなメリットを生む。

 

「KEYSTERのキットは、ジェットの数も複数がセットになっているので、リペアとセッティングが同時にできるんです。同じ車種でも個体差はありますからね。マフラーやエアークリーナーの違いでもセッティングは変わってくるから、あまり経験のない人にはできない作業だと思ったほうがいいですね」

 

KEYSTERのキットは、基本的にリペアパーツであり、高出力を期待するチューニングパーツではない。それゆえに、メインジェットやパイロットジェット等も、ノーマルを前提とした微調整用が用意されている。ジェットだけではなく、ジェットニードルも複数存在するので、より良いセッティングを導き出すのは容易だ。もちろん、キャブレター以外のエンジン機能が正常であることが大前提。全体のバランスが崩れてしまっているエンジンの場合は、キャブセッティング以前に、エンジン自体のオーバーホールが必要になる。

 

絶版車の場合、新車時の本調子が判らないという場合も多いが、調子を崩している原因がキャブレターの不調であることはとても多い。しかし、ユーザー自身が見よう見まねで適当にキャブレター内部に手を出しても、解決することはほとんどないだろう。それはやはり経験豊富なプロの手に任せた方が安心である。しかし、このキットの取り扱い説明書には、エンジンの調子や、点火プラグの焼け具合から、キャブレターセッティングのヒントを導きだす解説まで書かれていて、セッティングの知識がある程度備わっているユーザーなら、自分自身でトライできる可能性も加味されているところも大きな特徴だ。つまり、その気になれば、ユーザー自身が学習しながらキャブセッティングを煮詰めていくことも可能なのである。

 

エンジン本体が健康で、キャブレターのボディに異常がなければ、ほとんどの場合はノーマル付近のセッティングで、きれいに蘇るという。セッティングの出た調子の良いビンテージマルチエンジンは、乗り味も最高だと市川さんは話してくれた。

取材協力店

ベイエリアモータース

神奈川県横浜市西区岡野2-12-22
TEL/045-3139-9230

オープンは2003年の10月。当時25歳だった市川さんがひとりで始めたバイクショップは、服部さんという良き相棒を得て、ホンダのCB750のレストアを得意とする本格的旧車ショップへと成長した。モットーは、「現代的なレベルでしっかり走れるバイクの制作」ラインナップされる中古車はレベルの高いシェイプアップが成されている。

PICKUP PRODUCTS

細かいパーツにも気配りのある
KEYSTERキャブレター燃調キット

KEYSTERは国産の絶版車、特に1970年代から80年代に生産された国産スポーツバイク用に用意されたリペア&セッティングキットである。その内容はノーマルのセッティングを基本に、上下6つのメインジェットと3つのパイロットジェット(スロージェット)。そして4本のジェットニードルというセッティングパーツに加え、リペア用のニードルジェットやフロートチャンバーのニードルバルブ。その他ガスケットやパッキン等をワンパックにしたキットである。エンジンを回転させるための理想空燃費は、ガソリン1に対して空気は14.6と言われているが、低回転域や高回転域、さらにエンジンのヒート状態や大気圧などでも左右されるので、セッティングの幅が持たされているキットは、旧車のレストアやメンテナンスに大きな力を発揮する。ここに紹介するのは、ホンダCB750(K0・K1)用のキットである。

 

  • パッケージングされたセッティング&リペアキットのすべてがここにある。6個あるメインジェットと3個あるパイロットジェットは、各1個として撮影した。

  • 6個あるメインジェットは、S表示がスタンダードの120番。そしてその上がR・さらに上がRRとする。下はLとLLの表示。Rはリッチ。Lはリーンという意味で燃料供給量を表している。高回転域のセッティングパーツだ。

  • パイロットジェット(スロージェット)は3個。やはりノーマルはSで下がLとし、上はRRの表示。スタンダードは40番である。低回転から中速までのセッティングパーツ

  • ガソリンをフロートチャンバーに供給するためのニードルバルブ。ニードルとシート。そしてワッシャーの3点セットになっている。ここが不良だと、正確な油面を確保できず、オーバーフローの原因にもなる。

  • ニードルジェットは一つ。ここは長年の使用で内径が変形している場合が多く、交換することで正確な燃調を確保することができるようになるのだ。Oリングは、フューエルジョイント用のパッキンである。

  • 太さとテーパー角の違うジェットニードルを4本セットする。やはりSガスタンダードで燃調を濃くする上がRとRRで、下にはLが一本用意されている。加速中の中速回転域に大きな影響があるのがこのジェットニードルだ。

  • ジェットニードルをスロットルバルブ本体に固定する上で重要なのが、このスプリングシートである。スロットルバルブ中央にセットされたジェットニードルを上からスプリングで押し付けるためのベースとなる。

  • ガソリン漏れの原因となるガスケットの劣化。新品交換するのはリセッティングやオーバーホール時の約束事でもある。フロートチャンバー用とスロットルバルブのトップカバー用が用意されている。

  • エンジンのアイドリングからスロットルの開け始めの燃調を左右するエアースクリュー。キャブレターを車体に装着した後で外から調整できる唯一のパーツである。スプリングとセットで交換する。

  • フロートチャンバーのボディ底部分に取り付けられている、ガソリンを排出させるためのドレンプラグも付属している。スクリュー部分には、パッキンとなるOリングも取り付けられている。

KEYSTER 燃調キット
FH-0024N

(CB750-K0/K1用燃調キット)

価格/3,000円

 

BRAND INFORMATION

岸田精密工業株式会社

創業は1941年。70年以上の歴史を持つ岸田精密工業は、クルマやバイク用のキャブレターパーツを長年生産し続ける国内外で大きなシェアを持っている老舗である。KEYSTERの現在ラインナップされる車種は100種類以上。将来は300~400台以上のラインナップを目指すというから、国産絶版車ユーザーには心強い見方なのだ。