かつて憧れたカッコ良さを気負わず気楽に楽しむ
取材協力/ドレミコレクション  取材・撮影・文/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2014年3月28日
その後のバイクの流れを変えたカワサキZ400FX。その堂々としたスタイリングと、搭載されていたDOHC 4バルブエンジンは当時のバイク好きのハートを鷲掴みにした。「その時に感じたカッコ良さを、今また改めて感じて欲しい。それも気負わず、気軽に…」との想いから、ドレミコレクションではゼファーをベースに、Z400FX化するスチールタンク外装セットをリリースする。

FEATURE

リプロパーツを多数手掛け
Z系の維持に必要不可欠な存在

国産絶版車の筆頭に挙げられるのが、カワサキZ系だろう。デビューから40年あまり経っているが人気は衰えることがなく、ミーティングが開催されれば全国各地から愛好者が集まり、盛況さを見せている。

 

今も多くのZ系が元気な姿を見せているのは“リプロパーツ”の存在によるところが大きいと言えるだろう。ユーザーとしてはメーカーから純正パーツが供給されることが望ましいが、現実問題としては難しいのも事実である。

 

ドレミコレクションは、Z系をメインとしたリプロパーツを多数手掛けており、その数は2,000点以上にもなる。いまや必要不可欠な存在と言っても過言ではないだろう。

 

その創業は1987年。絶版逆輸入車の卸商としてスタートした。当初は純正パーツも豊富にあったものの、年を経るごとに欠品が増えていった。しばらくはストックがあったが、やがてそれも払底する。そのため必要に迫られてリプロパーツの製造に着手し、今日のような業務形態となっていったのだ。純正と同等かそれ以上のクオリティを持っており、国内はもとより、海外の愛好者からも高い信頼を得ている。

 

INTERVIEW

あの頃の“カッコ良さ”を
歳を重ねた今、あらためて感じるために

「ターゲットは現在50歳前後の、1960年代産まれの“オヤジたち”ですね」と同社の武 浩代表。ゼファー400/χ用Z400FX外装セットの仕掛け人であり、ターゲットの世代ど真ん中である。今も心に強く刺さっているバイクが、カワサキZ400FXであり、そのスタイルをゼファーで再現することで“気楽に”付き合い楽しめる存在になれるとの思いから企画された。

 

まずはZ400FXについて述べておこう。1979年にカワサキからリリースされ、その後の400ccクラスの流れを決定づけたバイクだ。1975年に免許制度が改正されて“中型免許”が実施され、400ccクラスが“事実上の最大排気量”となったのだ(排気量制限の無い免許は試験場でしか取得できず、また合格率も低く、相当にハードルは高かった。そのためナナハンを筆頭にした、400ccより上の排気量のバイクは非現実的な存在として、憧れの対象外だった)。

 

そのスタイルは1クラス上の堂々としたものであり、中免ライダーにとっては嬉しいプレゼントだった。そのパワートレインたるエンジンは、クラス唯一の4気筒でDOHCというメカニズムを備えていたのである。当然大ヒット作となり、その成功は他の国産メーカーからもヨンヒャク4気筒の登場へと繋がったのだった。

 

実際にZ400FXを手に入れた人もいれば、免許は無いが「いつかはFXに乗るぞ!」と、教室の片隅でバイク雑誌を見ながら語った記憶のある人もいるだろう。なかには乗ったことすらないのに、ヤマハRZ(2スト)派と言い合いになったりして…。

 

つまり、“オヤジ世代”は、そろそろ子育ても終盤になりつつあり、ここで“かつての憧れを手にしてみませんか?”という提案なのである。“本物”のZ400FXを手に入れることも考えられるが、それはさまざまな意味でシンドイ。気負わず、気楽に楽しめることが絶対条件だと武代表は考え、ベース車両をゼファー400、及びゼファーχとしたのだ(ちなみに、Z400FXの末裔がゼファーである。ボア×ストロークは異なるが、Z400FXのエンジンがゼファーのベースとなっており、クランクケースには名残を見ることができる。Z400FXが400ccの4気筒化を促進したように、ゼファーは、それまでのレーサーレプリカ一辺倒に終止符を打ち、その後の各社からネイキッドモデルの登場となる契機となったモデルである)。

 

武 浩氏(ドレミコレクション代表)。レーサーレプリカ全盛時の1987年にドレミコレクションを設立。絶版旧車の逆輸入を手掛け始めており、現在に続く空冷Z系の認知度向上の立役者となった1人。

ゼファーZ400FXバージョンと武代表。Z400FXが一世を風靡していた頃に二輪免許取得年齢となった“ど真ん中世代”。そのため思い入れも強く、このプロダクトが実現したのだ。

ゼファー400とゼファーχ、どちらをベースモデルにするのが良いか? 武代表によると「エンジンの回り方の感じなど、Z400FXに近いのはゼファー400の方ですね。フォークも細いから、全体の雰囲気としても違和感が無いと思います。ゼファーχはフォークに加えて、現状だとホイールが3本スポークなこともあって、FXをカスタムしたような感じになりますね。走りの点では、ゼファーχの方が現代的なフィーリングに近いと思います。なので、親子の共通の楽しみとするのなら、子世代も満足できるゼファーχの方が良いのではないでしょうか?」

 

詳細は下のディテール写真に記すが、見た目の印象は実に良くできている、その時代を知っている人が携わったことが理解できる仕上がりだ。屋外での取材撮影中にも「FXですか?」と尋ねられたほど。

 

このバイクはゼファー400のZ400FX仕様ということになるが、それでは何かモノ足りなさを感じる。また“Z400FXレプリカ”と記すのも違和感がある。“ZR400FX”の方がシックリとくるのである(ちなみにZR400は、ゼファーの型式)。

 

惜しむらくは、前下がりのスタイルであることだ。これはベース車であるゼファーがフロント17インチであることに起因している。だが、それも解消されそうだ。フロントの18インチホイールを開発中とのことであり、それが組み合わされれば、タンク下端のラインの傾きも大幅に是正されるに違いない。

 

「求めたのは“カッコ良さ”ですね」と武代表。「その昔に“FXいいな”と思っていた、あの感じ。それをまたいま、再確認してくれたらと思います。そして時間が取れた時に、近くのコンビニへの足でもいい、そこでバイクを見てニヤっとして帰ってくる、当時乗っていた人も、憧れで終わってしまった人も、このバイクを通してそんな楽しみを趣味として持ってもらえたらな、と考えています」。

 

PICKUP PRODUCTS

ドレミコレクションのゼファーFXバージョンを見てみよう

ゼファー(400及び550、χ)を、Z400FX化するためのパーツがドレミコレクションからリリースされた。ゼファーはZ400FXの子孫的なポジションだが、当然のことながらスタイリングの再現の要となる外装に互換性はなく、いずれも新開発製品だ。車体装着時に適切なバランスとなるよう留意され、製品化までには幾度もの修正を経てきている。

 

バイクの“顔”とも言えるタンクは純正同様のスチール製。これは車検対応とするための素材選定だ。フェンダーもFXと同様スチール製。サイドカバーやテールカウルなどの樹脂製品は、カスタムパーツではF.R.P.が用いられることが多いなか、ABSとされているのも特筆すべき点だろう。量産効果を前提とすることにより、F.R.P.並の価格に抑えられている。ABSは細部の再現性に優れ、それもあって採用に踏み切られている。ここは妥協できなかった部分でもある。細かな部分、ヘッドライト下のエンブレムや前後のウインカーなども用意され、眺めているだけでも楽しい時間を過ごせるだろう。

 

  • ゼファーFXバージョン
    ゼファーによるFXバージョン。ベース車があるからカテゴリー的にはカスタム車なのだろうが、その範疇で留り切らない仕上がりだ。

  • ゼファーFXバージョン(正面)
    E3カラーに合わせたメッキフェンダーを装着。

  • ゼファーFXバージョン(正横)
    E3シルバーカラー。

  • ゼファーFXバージョン(右斜め後方)
    新設計の42.7φショート管を装着。

  • ゼファーFXバージョン(後方)
    セットになっているフェンダーレスキットとノーマルフェンダーを一緒に使うことが出来る(要加工)。

  • ゼファーχFXバージョン
    後期型のゼファーχは足回りにも大幅な変更を受けており、こちらがベースになると太くなったフォークや3本スポークのホイールで、FXのカスタム的なルックスとなる。

  • ゼファーχFXバージョン(正面)
    E4カラーに合わせ、フロントフェンダーは同色塗装。

  • ゼファーχFXバージョン(正横)
    E1?E4カラー、12色をラインナップ。

  • ゼファーχFXバージョン(右斜め後方)
    画像では、べース色が黒く思われるが、実際は当時同様、青みがかった濃紺色。

  • ゼファーχFXバージョン(後方)

  • フロントフェンダーはスチール製(ゼファーに装着されているのはメッキ仕様)。18インチホイールにも対応している。

  • ゼファーχに装着されているフロントフェンダーはペイントされることを前提としたもので、サーフェイサー仕上げの物をタンク同色に塗装されている。

  • タンクはスチール製のため、車検にも対応。タンクキャップもFXと同様の角形とされている。

  • タンクのエンブレムはネジ留め式で、ロングピッチのエンブレムであれば取り付け可能。

  • シートは表皮違いの2種類が用意されており、こちらはZ400FXのE1?E3に装着されていたタイプ。

  • Z400FXはE4で大幅なマイナーチェンジが行われ、シート表皮がこのタイプになった。外装セットには前期、後期に加え、カスタムタックロールシートの3種用意されている。

  • サイドカバーは端の部分など細かい部分の作り込みに優れたABS製。エアクリーナーボックス装着車には、そのための“逃げ”が必要であり、その加工が必要になる。

  • テールカウルもサイドカバー同様ABS製。

  • テールカウルには引き出し式の小物入れが備わっている。これは元々Z400FXには無かった装備だ。容量はスマホ、プラスアルファぐらい。

  • テールカウルの装着にはフェンダーレスキットの使用が前提となる。ナンバーの角度調整が可能な機構も取り入れられている。

  • テールランプは、テールカウルからの“出具合”を調整することが可能とされている。レンズの色は赤とクリアが用意されている。

  • ヘッドライト下のエンブレムは、画像のメッキタイプとχに装着されているブラックタイプの2種類がある。文字タイプの違う数種類がラインナップされている。

  • 前後のウインカーは、MK2、FXタイプ。ステーはスタンダードとショートの2種類から選択が可能。

  • ミラーZ2タイプ。画像のブラックとメッキの2種類がラインナップされている。ショートとロングの2つのステーが備えられている。

  • ベース車がゼファー初期型であれば、左右のスイッチボックスはZ2タイプハンドルスイッチキットに変更可能。

  • ベース車がゼファー初期型であれば、左右のスイッチボックスはZ2タイプハンドルスイッチキットに変更可能。

  • 右のポイントカバー(パルシングコイルキャップ)は、中央に“DOHC”と入っている。このFXに近いデザインのタイプ以外に、Z2タイプも用意されている。

  • オイルフィラーキャップと交換するタイプの油温計。クランクケース内の温度を表示する。

  • マフラーはショートタイプ。ベースとなったゼファー及びゼファーχは右の1本出し、それに対してZ400FXは左右2本出しだった。

  • リアショックはZ400FXショートピッチサスペンション。リザーバータンクの有無で印象が大きく異なる。こちらの車両では、スイングアームはブラックアウトとされている。

DOREMI
COLLECTION

ZEPHYR400
ZEPHYR400χ
専用外装セット

FXタイプスチールタンク、サイドカバー左右(ABS製)、テールカウル(ABS製)シートAssy(3種類から選択)、専用フェンダーレスKit、タンクキャップ、ペイントベース外装セット/8万8,000円(消費税別)

各種ペイント済みセット/14万円?17万5,000円(消費税別)

BRAND INFORMATION

株式会社 ドレミコレクション

【本社】

住所/岡山県倉敷市広江1-2-22
電話/086-456-4004
FAX/086-456-4007
営業/10:00-19:00
定休/毎週土曜日、第2日曜日、祭日

【東京営業所】

住所/東京都墨田区提通1-11-23
電話/03-5631-8228
FAX/03-5631-8227
営業/10:00-19:00
定休/毎週土曜日、第2日曜日、祭日

日本国内ではレーサーレプリカの全盛期だった1987年に絶版逆輸入車商として創業。その業務の過程で必要になったことからリプロパーツの分野に進出。カワサキZ系及びマッハ系をメインに多数リリースしており、愛好者からの信頼に応えている。培われているノウハウも豊富にあり“再生新車”で知られるフルレストアコース車両でも知られている。