アラゴスタはオランダ・トラクティブ社のダンパーと日本製のスプリングを組み合わせた日本発のサスペンションメーカー。国内の2輪車向けにはモトテックLLCが開発・発売元だ。そのモトテックは“その車種を知り尽くしたカスタムショップとの共同開発が近道”として、パートナーショップを全国で募集・拡大中。今回は新たにパートナーとして加わったK-Ⅱプロジェクトで、両者の考えなど聞いてみた。
バイク用のアラゴスタ・リアショックが発売されたのは2014年のこと。当初はツインショックのみだったが、今春からモノショックのバリエーション拡大を始めている。面白いのは、対象とする車種を専門に扱うショップとの共同開発を行うこと。ここでは、最新作となるZX-14RとZZR1100用の開発でパートナーを組むK-Ⅱプロジェクトにお邪魔して、モトテックLLCの杉山さんと同店の北村さんに、話を聞こう。
──そもそも、モトテックはなぜ、ショップとの共同開発を行うのか。
杉山「特定車種を専門に扱うショップさんは、そのバイクに関する知識が圧倒的に多いじゃないですか。僕たちがその域に達するのはリアルでないし、協力関係が築ければ、お客さまに短期間でお届けできる。それが一番の理由ですね。今回はZX-14R用を、ということでパートナーを探しましたが、K-Ⅱさんと組めて、お客さんにZZR1100のオーナーもいたことで、対応車種も増やせました。これもメリットです」
──ZX-14Rを扱うお店は多くあるがK-Ⅱプロジェクトを選んだのは?
杉山「他社のサスペンションも複数扱っているし、装着実績もある。K-Ⅱさんなら我々の製品もフラットな視線で見てもらえるかな、と」
──K-Ⅱプロジェクトからはモトテック=アラゴスタはどう映る?
北村「サスペンションは本体の性能はもちろんですが、例えばモノショックならホース類をどう取り回すか、イニシャルの別体油圧コントローラーを、いかに綺麗に装着してお客さまに満足いただくか、も大事。そこまで付き合う、と杉山さんは行動でも示してくれるから、ウチのようなショップには有り難いですね」
杉山「ショック本体も、アラゴスタはスプリングとダンパーそれぞれの仕事を大事に考えてますよ(笑)。特にスプリングは命。サーキットを主眼とした高レートのスプリングを使い、ストリート用にはダンパーを抜くことで乗り心地の良さを狙う、というような場当たりではなく、ライダーの体重や目的に合わせてそれぞれに、細かくスプリングを選んでいただけます。お客さまのためにも、やはり車種特徴とサスを知り尽くしたショップの存在は大きいのです」
サスペンションの基本はよく動くスプリング。ダンパーでそれを適切にコントロールしてこそサスが生きる、と。スプリング在庫も豊富だ
自身のカワサキ系メガスポーツ好きもあり、お店にはZX-14RやZZR1100が集結。「ZZRは触るお店も減って、クチコミで全国から来ますね」
──それらの販売方法は?
杉山「今回のZX-14RとZZR1100用は弊社HPの製品ラインナップに掲載しますが、その購入はK-Ⅱプロジェクトさんへと誘導します。ただ、両車用はK-Ⅱさんの専売品ではありません。他のショップとパートナーになれば、そこのスペシャルも作る。誤解のないように加えれば、セッティングデータはお店の財産。我々を介しての共有は考えていません。お客さまは好みに合ったお店で、アラゴスタを自分用にオーダーしてもらいたい。ちなみに、空冷のGPz1100Fや750ターボなどに対応するショックは、岐阜のスピードショップイトウさんに、お付き合いいただいています」
モトテックでは、上記のパートナーシップに賛同してくれるショップも広く募集中だ。身近のショップでオレンジスプリングのショックを目にする日も、遠くはないだろう。
ZX-14RとZZR1100用に開発中の、リアショックのテーマは“コンフォート”。柔らかめのサスと細かな設定ができる圧側ダンパーで、よく動きつつ腰砕け感のない、相反する2要素を持たせるという。これはアラゴスタ製品の基本特徴で、無段階イニシャル(油圧アジャスター付き)調整、高・低速2系統の圧側/伸び側ダンパーに車高調整機能と、スポーツサスに求められる機能は抜かりなく搭載される。両車用サスの価格は21万600円~。詳細はK-Ⅱプロジェクトへ
取材当日の作業で最適位置にアジャスター類を置いたZZR1100への装着例。イニシャルアジャスターはマフラーバンドと共締めで車体マウント。ライダーが調整しやすいよう、日常整備でホース類が邪魔にならないように、装着できた
アラゴスタサスを導入した、もう1台はZX-14R。写真では分かりにくいが、外装上部にはシルバーのめっき塗装も施されるが、ブラックを基調に、油圧アジャスターに合わせたオレンジのラインが統一感を醸す。リアサスのセッティングはこちらもまだ途上。スプリングレートも豊富なアラゴスタを使えば、腰高なZX-14Rの車高もライダーに合わせて車高調整も思いのままという。跨っただけでも安心感が享受できるのだ