取材協力/ヨシムラジャパン  取材・文/石橋 知也 写真/柴田 直行  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

ヨシムラの大型アドベンチャーモデル用マフラー、7角形断面のHEPTA FORCEサイクロンに、BMW R1200GS、スズキ V-Strom1000 ABS、ホンダ CRF1000Lアフリカツンなど人気モデル用がラインナップし、国内外で高い支持を受けている。ヨシムラと言えばロードスポーツモデル用のマフラーやチューニングパーツのイメージが強い。それがなぜ? その真意と、アフリカツイン用HEPTA FORCEのパフォーマンスを探った。

FEATURE

アドベンチャー用でも
世界的に高い評価

ヨシムラが大型アドベンチャー用マフラー、HEPTA FORCEサイクロンのリリースを開始したのは2014年だった。その第1弾がBMW R1200GS用で、以後BMW F800GS/700GS、スズキ V-Strom1000 ABS、そして最新作ホンダ CRF1000Lアフリカツンなど、各メーカーを代表する人気モデル用が揃った。

本場ヨーロッパでは発売以来、高い支持を得ている。なぜ、ヨシムラがアドベンチャーモデル用のマフラーをリリースしていくのか、その狙いとは…?

「今やこのクラスはヨーロッパで大人気で、各メーカーの主力モデルが揃っています。ヨーロッパのユーザー/ディストリビューターからも強い要望もありましたけれど、ヨシムラとしても人気のあるモデルにマフラーをリリースするのは当然です。スポーツ出来るバイクであれば、ヨシムラがやっておかしくはないですから」

そう語るマフラー開発課の吉田学さん(ヨシムラジャパン・マフラー事業部・マフラー開発課次長。アドベンチャーモデル用マフラーへの期待は大きい。海外向けもヨシムラジャパンで開発・生産する)。

確かにヨーロッパ主要国のカテゴリー別の新車販売台数では、このクラスが最も多く、完全に主力となっている。そして第1弾となったR1200GS用HEPTA FORCEサイクロンの反響は、実際大きかった。BMWユーザーとヨシムラのブランドイメージはどうもリンクしない、と日本では思われたが…。

「我々が思っている以上に、素直に浸透しました」

ヨシムラはマフラーの世界のトップブランド。良い製品を見極める目があるユーザーが多いということだ。ヨシムラジャパン製のマフラーではもちろんだが、海外においてもアメリカに拠点を構えるヨシムラR&D(通称:USヨシムラ)がリリースしているマフラーは、AMAのトップレースで採用され、モトクロッサー、エンデューロバイク、クワッド(4輪バギーモデル)用として人気が高い。また、ヨーロッパでも2016年世界GPMXでチャンピオンを獲得した、ティム・ガイザーのホンダCRF450RWにUSヨシムラ製のマフラーが装着されているなど、オフロード界でも最高のマフラーとして認知されている。

「国産メーカーからGSに乗り換えたユーザーも多いので、ヨシムラを知っていただいていた、ということもあるでしょう」

日本でもBMWのラインナップの中で、GSはとくに人気がある。ツーリング先で出会うBMWは圧倒的にGSが多い。そしてGSのライバルとして、Vストロームやアフリカツインが登場した。

日本でもツーリング派は、アドベンチャーモデルへ乗り換える人が増えているのだ。

ビッグツインならではの
難しい消音

アフターマーケットのマフラーに求めれるのは、STDとは異なる魅力ある音質、スタイリング、パフォーマンスだ。この要求はどのカテゴリーのマシンでも変わらないので、ヨシムラにとってマフラー作りそのものの姿勢は同じ。そしてユーザーはヨシムラらしい品質を求め、ブランドを信頼する。

音質が良く、心地良いので楽しさ倍増(91dB/3,750rpm)。ビッグツインらしさを味わえる。タウンスピードではジェントルで、もちろん車検対応。大人のマフラーだ。

そのマフラー開発でアドベンチャーモデルならではの工夫や難しさはあるのだろうか? 並列4気筒のロードスポーツとはエンジンの特徴も、使い方も違う。

「まず、大型アドベンチャーモデルの多くはビッグツインで、排気脈動が並列4気筒とはまるで違うので、消音は大変です。1発の爆発力が大きい。並列4気筒用のようにはいかないんです」

BMWが水平対向2気筒(180度V型)、Vストロームが90度Vツイン、アフリカツインが270度クランク並列2気筒だ。

「爆発間隔の違いよりも、爆発力の特性の違いでしょうか。アドベンチャーモデル向けはすべてスリップオンのHEPTA FORCEなんですが、外観は同じでも中身は車種毎に違うんです」

さらに厳しい排ガス規制からEFIの燃調が薄く、その影響は特に減速時に出る。

「スロットルオフで減速が続くとアフターファイヤー(ポンポンという音)が出やすい。これは不快です。内部のパイプを太くして抜けを良くするほど出やすい。かといって細くすれば性能が出にくく、音質も高くなる。この辺の調整が車種毎に違うんです」

内部は単純なストレート構造ではないものもある。また、アドベンベンチャーモデルはオフロードも走行するので、本体はもちろん取り付け強度も高いものが要求される。

「マフラーバンドは、オンロード用は1本ですが、アドベンチャーモデル用は2本です。オフロードでの振動対策です。スタイリングもヨシムラマフラーの中では比較的大きめなので、2本にすることで精悍さも演出されたので良かったですね」

アドベンチャーモデル用HEPTA FORCEのマフラーバンドは2本。振動でクラックが入りやすい個所なので強度アップは必須だった。スタイリング上もアクセントになっている。

実車に装着されたHEPTA FORCEは、R1200GSにもVストロームにもアフリカツインにも、見事に合っている。STDマフラーと比較すると軽快感があるスタイリングで、ヨシムラらしいスポーツ性を感じる。また、取り付け位置も極力内側に追い込んであってスリムになっていることなど、さすがの仕上がりだ。

アフリカツイン用にはヨシムラのロゴが刻印されたヒートガードが追加される。STDのヒートガードとの繋がりも考慮し、違和感なく流れるようなラインにデザインされる。

特にアフリカツイン用はそう感じさせる。これはSTDパイプと連結させた後のテールパイプを巧みに曲げて(曲げた2つのパイプを溶接で繋いだ凝った構造)、斜め後方に上がる車体のラインに合わせつつ、極力内側に納めてあるからだ。これで純正パニアケースを装着できるからうれしい(これはどの車種用も同じだ)。

IMPRESSION

体感する加減速のスムーズさと上質な音質。
軽量化の恩恵でグラつきも減少。

アフリカツイン用で少し実走してみる。エキゾーストノートは低音域が素晴らしく、ビッグツインらしい力強さがある。スロットルを大きく開けた加速時は弾けるような爆発力を感じさせ、それでいて暴力的な音になっていない。あくまでジェントルな重低音だ。減速はスムーズでアフターファイアーは気にならない程度。見事だ。

こういった低速でコントロールしなければいけない場面で、マフラーの軽さが効く。重心から遠く、しかも上側はできるだけ軽くしたいからだ。

音はSTDよりメリハリがあって、スポーツマインドに響く。どの回転域、スロットル開度でもギクシャクせず、トルク谷もなく、スムーズだ。一定速での落ち着きもあって、これならロングツーリングも疲れにくいだろう。

規制もあってパワーアップ自体は数馬力だが、もっと上に感じる。ちなみにEURO規定では、出力はSTD±5%以内に収めなければならない。

話は少し外れるが、一定速での音質・音量は、実は疲れや眠気に大いに影響する。大き過ぎても疲れるし、1日1,000kmのような長距離・長時間だと眠くもなる(疲れだろう)。逆に小さ過ぎれば退屈で、乗っている愉しさが味わえない。これはアフリカの砂漠を走っていても同じ。音は本当に大事だ。

アドベンチャーモデルのマフラー取り付け位置はかなり高い。マフラー重量が運動性に影響しないわけがない。ちょっとした不整地を走ったとき、ヨシムラマフラーを装着したアフリカツインはSTDより、バイクが振られたときや立ちゴケしそうな極低速のときに安定感がある。グラっとしにくいし、もしそうなったとしても穏やかなのだ。

マフラー単体で見ると、装着されたSTC(チタンカバー/カーボンエンドタイプ)はSTD比-1.3kgの3.7kgだ。この高さで1kg以上の軽量化はかなり効く。舗装路でも切り返しはもちろん、交差点を曲がるときでも、その差は体感できる。

HEPTA FORCEは7角形の本体から異形4角形のエンドに繋がる独特の美しさがある。強度やサイズ・太さなども充分検討されて造詣で、その長さがアドベンチャーモデルにはピッタリだ。

美しいスタイリング、上質でスポーツ心をくすぐる音質、向上した安定性とハンドリング。スリップオンでここまで変わるのだ。さすがヨシムラ。今後もこのクラス向けの製品の充実に、大きく期待したい。

DETAILS

  • アフリカツイン用STC (チタンカバー/カーボンエンドタイプ。9万3,000円・税抜)。アフリカツイン用はすべてヒートガードが付属する。チタンカバーとカーボンエンドの組み合わせは最も軽量で3.7kg。カバー(チタンとステンレス)、エンド(ステンレスとカーボン)、仕上げの組み合わせで全8タイプがある(7万8,000円~9万8,000円・税抜)。

  • スズキVストローム1000 ABS(2014~)用STBC (チタンブルーカバー/カーボンエンドタイプ。9万3,000円・税抜)。チタンカバーの焼け色処理が美しく存在感がる。STDの5.4kgに対して3.6kgと軽量。仕上げの組み合わせで全8タイプ(7万3,000~9万3,000円・税抜)

  • BMW R1200GS(2013~)用SMS (メタルマジックカバー/ステンレスエンドタイプ。8万1,000円・税抜)。精悍なブラックカバーだ。STD5.0kgに対して3.9kg。最軽量のチタンカバー/カーボンエンドだと3.7kg。仕上げの組み合わせで全8タイプ(7万3,000~9万3,000円・税抜)

  • BMW R1200GS(2013~16)、R1200RT(2014~16)用のラジエターコアプロテクター。ヨシムラ独特のメッシュパターンでプロテクト力も冷却効率もアップ。錆にくいステンレス製(2万2,500円・税抜)。他アドベンチャーモデル用も期待したい製品だ。

LINE-UP

掲載商品について、さらに詳しい記事を見る。

MOVIE

ホンダCRF1000L Africa Twin用Slip-On HEPTA FORCE サイクロンのサウンドとスタイリングを動画で見てみよう。

BRAND INFORMATION

ヨシムラジャパン

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。

住所/〒243-0303 神奈川県愛甲郡愛川町中津6748
電話/046-286-0321