取材協力/本田技研工業株式会社  取材・文・撮影/田宮 徹  構成・撮影/ダートライド編集部
    掲載日/2011年12月8日

CRF250Lが見せる可能性
ホンダオフロードの未来

国内軽二輪枠いっぱいの排気量が与えられたオフロードモデルが、ホンダの新車ラインアップから消えて4年以上。現在、ホンダオフロードモデルの開発をとりまとめている塚本飛佳留氏によると、「その間、多くのホンダファンやオフロードファン、そして会社内部の人たちから、このままではホンダのオフロードに未来はないという声を、たくさんいただきました。現在も販売を続けているXR230は、フレンドリーな性能を重視した空冷223ccモデルで、これにはこれの良さがありますが、スポーツ性能という点などで考えると、やはりこのタイミングで新たなモデルが必要という結論に到達」したのだとか。

 

塚本氏が言う「このタイミング」とは、もちろん2011年秋のことでもあるが、同時にロードスポーツCBR250Rの開発が進んだ時期を指しているはずだ。このモデルは、国内仕様が2011年3月に発売開始されたタイのホンダで生産されるグローバルモデルで、求めやすい価格と幅広い層にマッチする走行性能が魅力の水冷249cc単気筒車だ。小中排気量帯のオフロードモデルには、シングルエンジンが使われるのが一般的。「CBRと同じ完全新設計エンジンを使い、CBRと同じようにタイで生産すれば、開発や生産にかかるコストを抑えながら新たなオフロードモデルが開発可能」というわけだ。

今回お話を伺った本田技術研究所の塚本氏。オフロードモデル全般の開発を取りまとめている。

今回お話を伺った本田技術研究所の塚本氏。オフロードモデル全般の開発を取りまとめている。

単なる流用と思うなかれ
こだわりのエンジン開発

しかしホンダといえばこれまで、このクラスのエンジンでは空冷RFVC(放射状4バルブ方式燃焼室)単気筒にこだわり続けてきた。水冷エンジンを使うことに抵抗はなかったのだろうか?

 

塚本氏によれば、「厳しくなり続ける環境規制に対応するためには、空冷ではいつか限界が来ます。逆に空冷のまま新たな環境規制に対応しようとすれば、必然的に走行性能を落とさざるを得ません。それでは、我々が求める性能を実現することができないので、水冷タイプの中でも最新型となるCBRのエンジンは必須」だったようだ。

 

そのエンジン開発においては、「あくまでもCBR用が先行しつつも、ある程度はCRF用の開発もオーバーラップしていて、オフロード用として必要な要素を盛り込んでもらいました」と塚本氏。というのも、「ロードモデル用に限定されたエンジンを流用したのでは、オフロードでの楽しい走りを実現できるエンジンを開発するのが難しくなってしまうから」なのだとか。「最低限の変更でオフロードにベストマッチするエンジンを、CBRの開発陣と協力しあうことで実現」したそうだ。

 

具体的には、「CBRに対してCRFのエンジンは、低中回転域でのトルク感を重視」しているとのこと。高回転域での伸びが必要不可欠なCBR用のエンジン特性そのままでは、オフロードで後輪が空転しやすいということもあるようだ。ただし同時に「もちろんオンロードでも使われるバイクなので、アスファルトの上でも満足できる性能を追求」したという。

環境規制に対応しつつ求められる走行性能を実現するために最新水冷エンジンが採用された。

環境規制に対応しつつ求められる走行性能を実現するために最新水冷エンジンが採用された。

CBR250Rとオーバーラップして開発されたエンジンは、オフロード性能を考慮した特性が与えられている。

CBR250Rとオーバーラップして開発されたエンジンは、オフロード性能を考慮したエンジン特性が与えられている。

トレードオフにしない
性能と低コストの両立

一方で車体もあらゆるシーンにマッチする性能がテーマ。たとえば「オンロードでのブレーキング時を考慮し、剛性の高い倒立フロントフォークを採用したほか、市街地での機敏なコーナリングを可能にするためにも、アルミ製スイングアームは必要と判断しました。もちろんこれらは、オフロードでのスポーツ走行時にもメリットがあります」と塚本氏。スチール製のフレームについては、「じつはアルミ製フレームを検討したこともありましたが、いろんなお客様に乗っていただきたいと考えたときに、アルミではコストと性能のバランスが悪いと判断しての選択です。その分、スチールの持つしなやかさというメリットを活かすために、フレームを完全新設計しています」と、塚本氏は説明してくれた。

スチールのしなやかさを活かした完全新設計の楕円ダブルチューブフレームが採用されている。

スチールのしなやかさを活かした完全新設計の楕円ダブルチューブフレームが採用されている。

発売に向けて膨らむ期待
価格やモデル展開の展望

車名には、これまでの「XR」ではなく、モトクロッサーからスタートしたオフロードブランドの「CRF」が使われている。北米市場ではすでに、公道用のオフロードモデルにもCRFの車名が使われているので、これはそれほど驚くことではないだろう。

 

外装デザインも「最先端であるCRFをモチーフ」としている。「法規制の関係から、ヘッドライトがどうしても大きくなってしまうのですが、最終的にはmm単位で小さくして、世界中の法規制に適合させながらもデザイン性にこだわりました」と、塚本氏は開発時の苦労点を教えてくれた。ちなみに、ここまでスタイリングが決まっていると、オフ仕様でさえまだ市販予定モデルという段階ながら、モタード仕様の発売が気になるところ。塚本氏によると、「日本だけでなく世界中の市場で、すでにそういう声が上がっています。我々としても検討すべき要素」なのだとか。今後の新たな発表にも注目したいところだ。

 

短いインタビュー時間中に何度も出てきた「コスト」という言葉と、その後にホンダ関係者から逆に質問された、「オンロードとオフロードって、どちらが高額なイメージがありますか?」という問いかけ。ここから考えて、車両本体価格がCBR250Rの約45万円よりも安くなることは、どうやら間違いなさそうだ。

 

塚本氏によれば、「オンロードでもオフロードでも楽しめ、世界中のあらゆるレベルのライダーが、いろんなシチュエーションで満足できるモデルというのが、このCRF250Lの開発テーマ」なのだとか。ずいぶん高い目標設定に聞こえるが、塚本氏にはそれが達成できたという自信がうかがえた。市販車発表の日が待ち遠しい。

モロクロッサーのイメージが強いCRFというネーミングも北米市場では公道モデルでもすでに使われている。

モトクロッサーのイメージが強いCRFというネーミングも北米市場では公道モデルでもすでに使われている。

グローバルモデルとして各国の法規制に対応すべく大型化されたヘッドライトはミリ単位でデザインバランスの調整がされている。

グローバルモデルとして各国の法規制に対応すべく大型化されたヘッドライトはミリ単位でデザインバランスの調整がされている。

塚本 飛佳留
本田技術研究所 二輪R&Dセンター

ホンダ二輪車の開発などを行っている本田技術研究所の塚本飛佳留氏は、モトクロッサーを含めた市販オフロード系モデル全般の開発を取りまとめている。一方で、HRCの新型市販レーサーNSF250Rの開発責任者を務めた経歴もある。自身もオフロード走行が大好きなライダーで、今回の東京モーターショーで展示されたCRF250Lのカスタマイズコンセプトモデルには、「自分の趣味が思いっきり反映されている」と笑う。こちらのモデルは、キャブ時代のCRF250R(市販モトクロッサー)をモチーフとした、2本出しマフラーを採用!

CRF250Lのカスタム写真

CRF250Lのカスタム写真

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