GROMをヨシムラチューンでリトルジャイアントに
取材協力/ヨシムラジャパン  取材・文/石橋 知也  写真/柴田 直行  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年08月28日
ビッグバイクやレース用のパーツ・チューニングのイメージがあるヨシムラ。その4ストロークチューンのトップコンストラクターが4ストミニを扱う。ちょっと意外な気もするが、じつはヨシムラのミニのチューンは歴史もある。もちろんパフォーマンスも精度も仕上げも超一流。ちょっと威張れるGROMが出来あがる。
FEATURE

ヨシムラのGROMはここが違う!!

4ストミニでも歴史があるヨシムラ

じつは、ヨシムラは1970年代からミニバイク用パーツをリリースしてきた。1970年代はホンダDAX用やXR75用が世界的にヒットした。近年ではモンキー、Ape、そしてGROMなどのマフラーやチューニングパーツを開発・販売してきた。

 

「1995年にモンキー用マフラーを発売しました。これが近年で最初のミニ用です。その後、改良を重ねて現在のマフラーは初期型から数えて10タイプ以上になります」

 

さらに2ストローク125ccエンジン用キャブレターとしてすでにあったOEMのミクニTMφ24mmを4ストローク用に改良・チューンして採用。ボアアップ用ピストンやシリンダーなどもリリースした。

 

「その後、ブームが下火になりましたが、Apeの発売で再燃したのが2003~04年頃でした。そこでボアップKITなどを開発。シリンダーヘッドはSOHCのままですが、燃焼室冷却方法に油冷を採用。モンキーなどの横型エンジン用と、Apeなどの縦型エンジン用のチューニングパーツが揃ったんです」

GROM用チューニングパーツ開発の要となったお2人。商品開発部・商品開発課課長の川口裕介さん(写真左)と、マフラー事業部・マフラー開発課課長の吉田学さん(写真右)。

独自開発・製作のミニ用キャブレター

市販車のEFI化が進む中、ヨシムラはキャブレターの可能性がまだまだ残されていることに着目した。キャブレターはまだ進化途中だと。環境・製作コスト・維持管理の問題から市販車は一気にEFI化されたが、モータースポーツやホビー(趣味)の世界では、キャブレターはまだ活かせると判断した。また、アジア各国で主流の125ccクラスのアンダーボーンバイクを使ったレースが盛んで、これを支援するためにも、リーズナブルで高性能なキャブレターが必要になった。

 

「これがYD-MJNキャブレターの生まれた背景です。アンダーボーンのレースにはもちろん投入しました。アジアの状況は昔の日本と似ていて、情熱はあるがチューニングやレースのノウハウが足りない。そこでパーツはもちろん、ヨシムラからもスタッフを派遣しました。アジアはまさにバイクブームでレースも盛り上がっていました」

 

当たり前だが、そうした人々はEFIよりキャブレターの方がイジりやすい。しかも精度が高いヨシムラ製なのだから、セッティングの結果が正直に出る。

アジア選手権にもなっているアンダーボーンクラス。ネーミングの由来はフレームが下に回っているから。130ccクラス(各社)とスズキ・アジアン・チャレンジの2クラスが主流だ。ヨシムラのキャブレターやマフラーは人気パーツ。

YD-MJN24/28キャブレターSET GROM

横型エンジン用ダウンドラフトキャブでφ24mm(2万9,000円)とφ28mm(3万円)があり、それぞれSTD125cc用と181cc用がある。マニホールドは同梱。ECUはSTDをそのまま使用する(点火マップ)。

ホビーとしてミニの存在価値は大きい

GROM 機械曲R-77S サイクロン タイプダウン装着
BAZZAZ仕様

BAZZAZでEFIチューンを施した仕様。排気量はSTDで BAZZAZ Z-Fi TC、Z-AFM (走行中A/F値測定)を組み、トラクションコントロール調整・マップ切り替え(2種類)用手元スイッチやオートシフターも装着。マフラーはダウンタイプ・フルエキゾーストR-77S。

GROM 機械曲R-77S サイクロン装着
キャブレター仕様

キャブ仕様181ccの最強バージョン。YD-MJN28キャブSET(マニホールドを含む)、キャブコンバージョンKIT、ST-2Mカム、アップタイプのR-77Sマフラー(フルエキゾースト)、BAZZAZオートシフターなどを組む。なお、ボアアップKITは他社製を使用する。

当たり前だが、4ストローク4気筒1,000ccエンジンよりも、4ストローク単気筒125ccエンジンのミニバイクの方が乗るのもイジるのも簡単だ。レースに使う、イジって楽しむホビー(趣味)として、このクラスは最適とも言える。ビッグバイク所有者のセカンドバイクとしても注目のクラスだ。

 

このホビー感覚はヨシムラの狙いでもある。バイクをイジる楽しさを、複雑で大きなビッグバイクでは味わいにくくなってきているのは事実。昔のGS750/1000やカタナの時代とは違う。エンジンを降ろすにも1人で出来るのがミニ。

 

「内容は単気筒でも4気筒でも同じ。でも大きさや数が違う。自分にも出来そうだな、と思わせる魅力は大きいですね」

 

「GROMのEFIチューン用のBAZZAZはビッグバイク用と同じ性能、仕様の製品を使用しています」

 

ミニの開発スタッフもビッグバイクと変わらない。もちろんミニ好きでもあるし、愛車としている人もいる。ヨシムラが作るモノに、排気量やサイズは関係ない。あくまでヨシムラ基準なのだ。

ヨシムラのGROM用パーツをクローズアップ

ミニながら重厚なサウンドとパワーを生み出すマフラー

『機械曲R-77S サイクロンカーボンエンド TYPE-Down EXPORT SPEC 政府認証』は、ダウンタイプのフルエキ。写真のサイレンサーはGROM用SMC(メタルマジックカバー/カーボンエンドタイプ)。

STDと同じアップタイプのフルエキ『機械曲 R-77S サイクロン カーボンエンド EXPORT SPEC 政府認証』。写真のカバーはGROM用STBC (チタンブルーカバー/カーボンエンドタイプ)。他にスリップオンもラインナップ。

GROM用マフラーは、STDと同じレイアウトのアップタイプ(フルエキゾーストとスリップオン)とダウンタイプ(フルエキゾースト)がある。サイレンサーはUSヨシムラがデザインしたR-77をベースに、小排気量用に開発されたR-77S。サイレンサーとしての性能が高いので中~大排気量の車両にも使用されている。カーボンエンドでパイプはステンレス。どちらもけっこうイイ音質でニヤリとさせられる。抜けやレスポンスもSTDとは全然違う。

 

「最初はSTDスタイルのアップタイプをリリースし、後からちょっと違うスタイルとして、ダウンタイプを開発しました。ダウンタイプは雰囲気が随分変わりますね。両者は排気管長がだいぶ違うので、消音効果や出力特性を合わせるためサイレンサー内部が少し異なります。低中速域の良さならアップタイプ、高回転域での抜けならダウンタイプでしょうね」

 

当然だが、排気管長はアップタイプが長く、ダウンタイプが短い。それぞれの特性に合わせたチューニングは、長いマフラー作りの経験が活きている。マフラーのトップブランドならでは技だ。パフォーマンスアップはヨシムラなのだから当然だが、細部までこだわった仕上げは、さすがのデキだ。

 

「このマフラーだけではないんですが、リベットもヨシムラオリジナルのディンプルリベットが採用されています」

 

これは是非チェックしてほしい所。汎用リベットでは味気ないからと、専用品を製作したのだ。小さいけれど、これもヨシムラ魂の証だ。

 

大口径ならではのパワーとフィーリングのキャブレター

ミニバイクの横型エンジン用に、ヨシムラが独自に開発したYD-MJNキャブレターは、大口径ならではのパワー、トルク、そしてフィーリングを感じさせてくれる。やっぱりEFIとは違う。これはボアアップしてST-2Mカムを組んだ場合、ハッキリ分かる。

 

「ボアアップした場合はどうしても大口径の吸気系が必要となりますが、最もシンプルに、且つ実戦的なパーツとしてはキャブレターなんです。横型用ダウンドラフトタイプの最新大口径キャブレターが無かったので、それなら独自で作れないものか、となったのが始まりです」

 

GROM用にはφ28mmとφ24mmが用意される。そして大口径キャブの弱点である低開度・低回転域や、開け始めでのレスポンスの遅れ、燃費の低下は、ヨシムラMJN(マルチプル・ジェット・ノズル)を組み合わせることで解消。全域でレスポンスが良く。コントロール性に優れたキャブになっている。

 

「もちろんMJNありきで開発した大口径キャブです」

 

また、EFI仕様をキャブ仕様に変換する場合の問題も、巧みな技で解決している。

 

「じつはEFI車をキャブ車にするのは大変なんです。燃料噴射用のECUをそのままに、TPS(スロットル・ポジション・センサー)をワイヤー途中に配置して活かすことで、STDのECUにある点火マップをそのまま使えるようにしてあるんです。こうすれば新たな点火系装置(フルトランジスターやCDIなど)に交換しなくても済むわけです」

 

YD-MJN28キャブレターSET GROMはφ28mm。専用マニホールドも含まれる。もちろんMJN仕様で高効率でレスポンスも燃費も向上。181ccボアアップには必需品。他にφ24mmもある。

 

ハンドルクランプ部に装備されてTPS。これはキャブコンバージョンKITに含まれる。テンプメーターは最新のPRO-GRESS1テンプメーターで、EFI車で管理が必要なでバッテリー電圧も表示。

乗れば分かる。このキャブレターは素晴らしい。キャブレターへのコンバージョンやセッティングもホビー感覚の範疇で、楽しみながらやればいい。

 

ビッグバイク用と同一のサブコンでチューンするBAZZAZ

BAZZAZ(バザース)は、ヨシムラが取り扱うアメリカ生まれの実績あるサブコンピュータ。STDのECUを使用し、その燃料マップを補正してマフラーやエンジンパーツのチューンレベルに合わせ、燃料を調整するサブコンだ。本体はGSX-R1000や隼などに使われるものと全く同一品で、機能も性能も同じ。そこにEFI仕様のGROMに合わせた燃料マップを入れてある。

 

「ST-1M/2Mカムの取扱説明書には専用の燃料マップが記載してあります。もちろんこれは標準マップで、あとは愛車に合わせて調整していただけます。普通にPCを使える方なら誰でも出来ますよ」

 

EFI仕様GROM用のBAZZAZ Z-Fi TC(オートシフターやトラコンなどが使えるタイプ)は、左サイドカバー内に装着される。配線は手順を追っていけば難しくない。スロットルボディはSTDを使う。

PCで表示される燃料マップ。スロットル開度5%毎、エンジン回転数500rpm毎に調整できる。色付きで表示されているのが補正範囲。表示は補正値:%(例+10%)、空燃比(例13.0)を切り替えられる。

簡単に言えば、燃料マップはエクセルのような表になっていて、そこの数値を書き込むことで新たな補正が可能になる。操作は簡単。BAZZAZソフト(軽いのでサクサク動く)を入れたPCとBAZZAZ本体を、USBを介して接続し、PC上で操作するだけ。キャブレターのジェット類の交換のように手が汚れることはなく、工具も必要無し。作ったマップはPCに何種類でもメモリーしておける。

 

「便利なのはZ-AFMです。Z-AFMは“セルフマッピング機能”を搭載しています。狙う空燃比がある場合はその数値を入力し、初心者で入力数値が分からない場合でも、BAZZAZが基準値として本体ユニットに登録している目標空燃比を入力すれば、Z-AFMが走行中に空燃比を計測し、狙う空燃比との差を取り込み、理想的な補正マップを作成してくれるという非常に便利なセッティングツールなのです。

 

エンジンの空燃比は、厳密に言うと、気温・湿度・気圧やマフラー交換、エンジンのチューニングによって変化していきます。Z-AFMを装着し、これらの条件の違いによる空燃比の差を素早くマップに取り入れることで、マシンが持っている本来のポテンシャルを楽しむことが可能になります」

 

簡単なデータロガーシステムで、8耐やMotoGPでやっていることと基本的に同じことが、GROMで出来るわけだ。また、イジって壊れる心配もない。あくまで補正の範囲で、壊れるほど無謀な数値では作動しない。

 

マップ(2種類)の切り替え用スイッチと、トラコン調整用スイッチ(回すボリュームスイッチ。0~10段)。ライトはオートシフター用。これらの装備はビッグバイク用と同じ。マップ切り替えスイッチは便利だ。

チェンジペダルをSTDからリンクロッド付きバックステップに交換すればオートシフターが装着可能。このシフトスイッチ(ユニバーサルストレインゲージ)は歪みセンサーを使ったもので最新レーサーと同機構。

また、オートシフター(クラッチ操作無しで全開シフトアップが可能)を使うには別途ステップKITが必要となるが、本体にZ-Fi TCを選べばトラクションコントロール(点火カット時間・感度などをスロットル開度やエンジン回転数などで設定可能。ギア毎でも微調整可能)も使用出来る。これはレースで大きな武器になる。そしてオプションのZ-AFMは、BAZZAZで設定してある他機種にも使えるので、長い目で見れば、決して高い投資ではない。

 

エンジンの潜在能力を引き出すカムシャフト

GROM用カムシャフトは作用角を大きくする方向でチューンされた。ST-1MはSTD排気量に合い、ボアアアップ時はST-2Mが必需品。4気筒用と比べれば小さくて短いが、この1本でGROMが変わる。

GROMのエンジンは元々がスポーツ用ではない。STDヘッドを上手く生かした仕様でST-2MでもSTDバルブスプリングが使える。EFI仕様はBAZZAZを使い、カムに合った専用の標準マップから始めると良い。

GROM用にはST-1MとST-2Mの2種類のカムを開発。もちろんST-2Mの方がパフォーマンスは高く、ボアアップ向きだ。

 

「GROMのエンジンは一般的なミニバイク用なので、バルブリフト量を大幅に増やすなど過激なチューンは出来なかったんです。それでも作用角(デュレイション)を大きくし、カムタイミングを調整することでSTD以上のパワーやトルクを引き出せました。でも、エンジン回転の上限は元々のエンジンが持つ許容範囲内に収めないといけないので、STDの回転リミッターは生かしてあります」

 

それでもそこまでの到達時間が圧倒的に違う。とくにボアアプップ(181cc)、YD-MJN28キャブレターと組み合わせた車両はフルサイズの200~250cc並の力強い加速。4速でリミッター(だいたい9,200~9,300rpm)に当たる。それでも回転しようとする。

 

スペックを見ると最大リフト量はST-1Mが吸排気共6.25mmで、ST-2Mが吸排気共6.5mmと、あまり大きくはない。ただ、作用角はST-1Mが吸気225°/排気220°に対してST-2Mは吸排気共250°と大きい。エンジンの資質に合わせた巧みなチューニングだ。

 

MOVIE

キャブレターへのコンバージョンは思っているよりイージー

作業はホビー感覚で出来る。落ち着いて手順取りにやればいいだけ。ただし、自分が乗るバイクなのだから扱いは丁寧に慎重に。使う工具、環境(床や路面に直接工具やパーツを置かないなど)はキチンとしたい。この辺はバイクのサイズに関係なし。でも、やっぱり単気筒で小さいバイクはやさしい。これがミニバイクの良い所だ。

 

LINE-UP

※価格はすべて税抜

機械曲R-77S サイクロンカーボンエンド
EXPORT SPEC 政府認証

STDと同じアップタイプ(5万4,000~6万4,000円)のフルエキ。写真はSMC(メタルマジックカバー/カーボンエンドタイプ)で、サイレンサーの仕様が選べる。約48%軽量化され、チタンカバー仕様はたったの2.6kg。
※他にスリップオンタイプもラインナップ。

機械曲R-77S サイクロンカーボンエンド
TYPE-Down EXPORT SPEC 政府認証

GROMのスタイルが一新されるダウンタイプ(5万9,500~6万9,500円)。STDから約46%軽量化。エキパイはSUS304で美しく耐久もアップ。アップタイプ同様にサイレンサーは4種類から選べる(価格は異なる)。

GROM(2013-)用ST-1M / ST-2Mカムシャフト(どちらも2万1,000円)

STDシリンダーヘッドの潜在性能を引き出すカム。ボルトオンで、ST-2MでもSTDバルブスプリングを使えるのでありがたい。EFI仕様にはBAZZAZ推奨マップも用意されるので安心。
※BAZZAZ等の燃料調整の補正が必要になります。

BAZZAZ(バザース)

『BAZZAZ』は、ガソリン噴射量を決める純正コンピューターに割り込み、STDの燃料噴射マップを補正するサブコンピュータ(サブコン)。ヨシムラジャパンはBAZZAZの日本正規輸入代理店として、商品の販売からアフターサービスまで対応する。

キャブレターコンバージョンKIT
(3万9,800円)

YD-MJNキャブレターを装着するときに必要なKIT。スロットルとキャブの中間にTPSを使用してSTDの点火マップを利用する。燃料コックも同梱。ハーネスや燃料ポンプは取り外さなくていい。

ヨシムラUSAハードパーツ
各種

エンジンプラグ(ラージとスモール共に2,900円)、ステアリングステムナット(3,500円)、ハンドルバーエンドSET(4,300円)、レーシングスタンドストッパーKIT(ブラケット付き1万1,000円)など高品質なハードパーツも用意される。

BRAND INFORMATION

ヨシムラジャパン

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。

 

住所/〒243-0303 神奈川県愛甲郡愛川町中津6748
電話/046-286-0321