取材協力/スペシャルパーツ忠男 取材・撮影・文/淺倉 恵介 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2014年7月16日


SP忠男から、またもや画期的なエキゾーストパーツが登場。エキゾーストシステムに膨張室を設けることで、今までにないパフォーマンスを発揮させる”パワーボックス”シリーズに、純正エキゾーストパイプと交換するタイプの新製品”パワーボックスパイプ”が新たにラインナップ。フルエキゾーストシステムでもスリップオンマフラーでもない、全く新しい排気系カスタマイズ。パワーボックスパイプのポテンシャルに迫る。

サイレンサーはスタンダードのまま
エキゾーストパイプ交換が走りを変える!!

SP忠男のパワーボックスは、ネーミングに“ボックス”とあるように、排気経路に膨張室を設けることで、パワー特性のコントロールを実現したカスタマイズマフラー。エキゾーストシステムの性能を決定する要素は様々だが、中でも重要なのがエキゾーストパイプの“太さ”と“長さ”。エキゾーストパイプの“どの部分”を“どれくらい長く”、“どの程度の太さ”を持たせるかでマフラーのキャラクターが決まるといっても過言ではない。そこに“膨張室”という、新しい要素を盛り込んだのがパワーボックスだ。エキゾーストシステムに膨張室を追加することで、排気脈動を積極的にコントロールし、狙ったパワー特性を実現するのがパワーボックスなのだ。

 

パワーボックスはスリップオンタイプからスタートし、フルエキゾーストタイプにラインナップを拡大。その、どれもがユーザーから絶賛をもって迎えられているのだが、この度新製品の“パワーボックスパイプ”が登場した。このパワーボックスパイプは、エキゾーストパイプ部分のみを交換し、サイレンサーはノーマルをそのまま使用するというもの。マフラー交換といえばフルエキゾーストタイプかスリップオンタイプが常識。いくらパワーボックスとはいえ、エキゾーストパイプだけの交換で、走りの違いがどれほど出るものなのか?。そんな試乗前の予想は大きく覆された。パワーボックスパイプの威力は、それだけ驚きに満ちたものだった。

 

まずは、ノーマルのセロー250で走ってみる。正直なところ、文句の付けようがない。低回転域からトルクが粘り、スロットルをどこから開けてもしっかりとパワーがついてくる。刺激的な速さはないけれど、セローは速さを求めるバイクではないだろう。街乗りや、林道をノンビリと走るには最適な一台だ。

 

このマフラーのどこを変える必要があるのだろう? と考えつつ、エキゾーストパイプをパワーボックスパイプに交換。エンジンを始動させても、ノーマルサイレンサーを使用しているだけに排気音が大きくなったりはしない。だが、ライダーに届く音は、金属音が混じったようなやや硬質な音質に変わる。これは、エキゾーストパイプの材質が変わったことと、エキゾーストシステムの構造が変わったことで、エンジンの燃焼状態も変化しているのが理由のようだ。

 

また、耳を澄ますとわずかに「チ、チ、チ…」という連続音が聞こえてくる。これは、膨張室内に排気ガスが吹き出ている音だという。そして、実際に走り出して驚いた。全体的にトルクが上乗せされ、押し出し感が強くなっている。トルクの立ち上がり方に唐突さはなく、ウルトラフラットなパワー特性。あらゆるシチュエーションで、1速上のギヤで走ることができる。そして、最も違う点がスロットル操作に対するリニアリティ。スロットルを開くと、ノーマルにあった「待ち」がなく、即座にパワーがついてくる。もっと回転を上げて、もっと積極的にマシンを走らせたくなる。それでいて、レスポンスが不要に過敏になっていないところが素晴らしい。まさに「リニア」としか形容のしようがないのだ。非の打ち所がないとも思えたセロー250だが、まだこれほど走りを楽しくできるのか……と、驚かされた。

 

続いて試乗したのは、国産トレールマシン随一のスパルタンなマシンであるWR250R。ノーマルであってもパワフルで、走りは実に刺激的。スロットルレスポンスに神経質な部分はあるが、これもマシンの味だろうと思わせる。それほど過激な乗り味が魅力的なマシンだ。だが、パワーボックスパイプを装着したところ、WRの走りの魅力が更に広がった。パワーの繋がりがとにかくスムーズになり、どこからでもワイドオープンできるのだ。一瞬、低速トルクを落としてレスポンスを鈍くしているのかとも考えたのだが、そうではない。スロットル操作に対しパワーはキッチリとついてくる。キツい上り坂で全開加速を試してみたのだが、ノーマルと同等かそれ以上にパワフルに加速する。パワーを落とさず、スムーズに繋げることで、スロットルがより開けやすくなっている。これは速い。WRの過激な乗り味に面白さを感じていたのだが、持ち前のハイパワーを自在に操れるパワーボックスパイプの走りに、すっかり魅せられてしまった。

 

2台のマシンを試乗して、パワーボックスパイプの走りの楽しさにノックアウトされてしまった。しかも、面白いのが2台とも異なった特性が持たされていることだ。セロー250は、ノンビリとしたノーマルにムチを入れるようなスロットル操作にリニアなパワー特性を、WR250はパワフルなエンジンパワーを自在に引き出せるようにと調教されている。マシンが本来持つ走りの良さに、磨きをかけるようなモディファイ。走りの「気持ちイー!!」を最優先する、SP忠男のマフラー造りのポリシーを実感した。パワーボックスパイプ、これは本当に凄いパーツだ。

POWER BOX PIPE for SEROW250 1万9000円(税抜)

POWER BOX PIPE for WR250R & X 1万8000円(税抜)

右がセロー250用のノーマルエキゾーストパイプ、左がパワーボックスパイプ。膨張室の有無だけでなく、エキゾーストパイプが湾曲している部分までの長さが異なっているのが判る。

テールパイプと接合部分を比較したもの。左がセロー250用のノーマル、右がパワーボックスパイプ。パワーボックスパイプの方は、パイプ経がはるかに大きい。細部にわたり変更が加えられているのだ。

パワーボックスパイプが切り開く
新しいマフラーカスタムの可能性

マフラーのカスタムなら、サイレンサーを変えるものという風潮に一石を投じるパワーボックスパイプ。常識破りのこのパーツは、如何にして生み出されたものなのだろうか? SP忠男のマフラー開発のキーマン、大泉氏に話を伺った。

 

スペシャルパーツ忠男
大泉 善稔 氏

SP忠男のマフラー開発を統括する立場にあり、同社の全てのマフラー開発に関わる。ライダーの感性に訴えかける「気持ちイー!!走り」を感じられるマフラー造りをモットーとしている。

 

「きっかけはWR250Rマフラーの開発を手がけたことでした。我々も、最初はスリップオンマフラーを作ろうと考えていたんです。ですが、実際のところ排気量は大きくはありませんから、限られたパワーを活かしながら法律に適合させようとするとなかなか難しい。制約が大きくて、面白いマフラーに仕上げるのが難しかったんです。そこで、もっと自由に我々の持つノウハウを活かせる部分がないかと考えてエキゾーストパイプに目をつけました。SP忠男は、走りの「気持ちイー!」を実現するパーツ造りを目指しています。それが、エキゾーストパイプでそれが実現できるなら、別にサイレンサーにこだわる必要はありませんから」

 

だが、トレール車のエキゾーストパイプは長くはなく、また車体もコンパクトなため、車体への装着を考えるとレイアウトの自由度は少ない。

 

「SP忠男にはパワーボックスの技術がありますからね。スペース的に制約の大きいトレール車のエキゾーストパイプでも、パワーボックスなら面白い特性が持たせられるという確信はありました。パワーボックスのスリップオンマフラーやフルエキゾーストを開発してきて、ノウハウはかなり蓄積できていましたから。実は、膨張室というのは取付ければ性能が上がるというものではありません。装着する位置や、膨張室の容量の違いで、大きく特性が変わります。しかも、その変化がかなりピンポイントなんです。大まかな性能は設計段階で予測できますが、最終的には試作品を何回も作り直し、実走を繰り返して煮詰めていく必要があるので、開発には手間がかかるんです。けれど、上手く作れば大きな効果が得られるのもパワーボックスなのです」

 

なるほど、パワーボックス構造があって、初めて実現したのがパワーボックスパイプというパーツなのだ。また、ノーマルサイレンサーを使用することで、無用な音量アップしないところもポイント。

 

「カスタムパーツといえど、法律に適合していることは当たり前です。また、最近の傾向として『性能は上げたいけれど、音が大きくなるのイヤ』というユーザーさんが増えています。ノーマルサイレンサーを使用するパワーボックスパイプは、音量の変化はあまりありませんから、その点でも御好評をいただいていますね。競技用のサイレンサーと組み合わせてレースに使われているユーザーさんもいらっしゃいますが、そうした使い方でも性能アップしたとの声をいただいています」

 

パワーボックスパイプは、排気系のパーツとしては飛び抜けてリーズナブル。性能アップを考えると、とんでもないバーゲンプライスに思えるのだが?

 

「実は、価格に関してはかなり無理をした設定なんです。素材も高品質なものを使用していますし、パワーボックスは開発にもコストがかかる。本当のところは、もっと高く設定したいのがホンネです。(笑)ですが、手の届きやすい価格にすることで、一人でも多くのユーザーさんに装着していただきたい。より多くのユーザーさんに、マフラー交換で得られる走りの楽しさを知っていただきたいんです。パワーボックスパイプが、そのきっかけになればと考えているんです」

今回、パワーボックスパイプをテストした、セロー250とWR250Rで実際に排気騒音の計測を行った。上の写真でメーターのついた計測機械はエンジンの回転計。手前の赤いクリップでイグニッション系から回転数を拾う。排気騒音は最高出力を発生させる回転数の50%の回転数で計測する。そのため、タコメーターの無い車種でも回転数を測る機械が必要になのだ。白い機械が騒音計。排気口から45度の方向で、50cm離した位置で計測を行う。

 

 

 

POWER BOX PIPEで排気音量ダウン!!

今回、実際に音量の計測を行ったところ、セロー250、WR250Rの2台共に排気音量がダウンした。サイレンサーが同じであっても、エキゾーストパイプの変更により、エンジンの燃焼状態が変化した結果だと考えられる。大気の状態やエンジン温度は厳密には同条件ではなかったが、十分参考になるデータといえる。パワーボックスパイプは静かで速い、そして走りが面白い!!

 

 

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ただ今鋭意開発中!!
GRAND MAJESTY400用 POWER BOX PIPE

人気のビッグスクーター、グランドマジェスティ400用のパワーボックスパイプがただ今開発中。近日発売予定だから、オーナーなら要チェックだ。

BRAND INFOMATION

スペシャルパーツ忠男

マフラーをはじめ、様々な高性能パーツをラインアップする老舗のパーツメーカー。SP忠男のトレードマークである“目玉のマーク”は、同社代表の元モトクロス全日本チャンピオン“忠さん”こと、鈴木忠男氏のルックスをモチーフにしたものだ。性能がアップするだけでなく“走りの楽しさ”を基本コンセプトに掲げるSP忠男のパーツは、ライダーならば一度は装着してみたい逸品だ。

■住所/東京都台東区北上野1-7-5
■電話/03-3845-2010
■営業時間/11:00~19:00
■定休日/毎週水曜日、毎月第3火曜日

SP忠男ではユーザーへのサービスを充実させるため、ネットでダイレクトストアを展開中。
ダイレクトストアでは様々な購入者特典が用意されているので、SP忠男製品を購入するなら、
SP忠男ダイレクトストアがお薦めだ。

 

SP忠男ダイレクトストア

機械イジリが苦手な人にとってマフラー交換はたいへんな難作業。ショップに依頼しても思った以上に工賃がかかるものだ。ところが、SP忠男ダイレクトストアでSP忠男製マフラーを購入した場合、なんと取付け工賃が無料! しかも、世界中どこでもSP忠男のメカニックが出張してくれるのだ。申し込みはマフラー購入時に「出張取付け希望」と申し出るだけ、交通費はユーザー負担となる。

 

 

マフラーを交換した後、始末に困るのが取り外されたノーマルマフラーだ。JMCA取得、政府認証マフラーのSP忠男製マフラーは車検対応なので、ノーマルマフラーを保管しておく必要も無い。しかし処分するには費用がかかる…。SP忠男ダイレクトストアでマフラーを購入した場合、不要になったノーマルマフラーを無償で回収してくれる。マフラー出張取付けを依頼すればマフラー交換時に回収してくれるし、それ以外はSP忠男上野店にマフラーを送ればいい。その際の送料はユーザー負担となる。

SP忠男ダイレクトストアでのマフラー購入者向けサービスとして、ダイレクトストア限定エンブレムが用意されている。専用デザインを採用しており、カラーは赤と青の2タイプから選択可能。他では絶対手に入らない、プレミア感抜群のエンブレムだ。

 

通常版のエンブレム(写真上)と、SP忠男ダイレクトストア限定のエンブレム(写真下)。限定エンブレムは写真の赤の他、同デザインで青いタイプも用意されている。どのエンブレムを選ぶかはユーザーの自由だ。