部品屋K&Wは愛知県の安城市にある。国道23号線沿いの工業地帯。名古屋から南東方向に伸びる幹線道路は昔からの街道でもあるが、現在はバイパスが引かれて農業地帯だった場所に大型の倉庫や工場が進出、新たなる産業ベルト地帯として発展してきた。
ショップは、入り口に看板も存在しないいかにも生産ファクトリーという印象である。国道23号線は高架になっているので、しっかりと場所を把握してから訪れないとうっかり行き過ぎてしまうのだ。しかし、ここはアメリカンカスタムを製作依頼するバイク乗りが数多く訪れる人気ファクトリーである。その人気の秘密を探ってみた。
「僕は大型機械のオペレーターとして、ここに3年前から来ています。カスタムバイクやパーツ製作の全般に関わっていて、お客さんとのコミュニケーションもとります。カスタムバイクの製作は、ショップとユーザーがきちんとディスカッションしながら進めていくことが重要だと思っています」
話を伺ったのは伊達裕樹さん。若いマシニングオペレーターである。K&Wには、最新鋭の大型加工機械がたくさん据え付けてあり、ここで数多くのパーツが製作されているのだ。設計もすべてK&Wで行い、フィニッシュまで一貫している。特にアルミ素材を使用した削り出しのパーツ群は、独特の輝きを持った個性的なパーツとして多くのカスタム愛好家から支持されている一品である。
「お客さんは、何か自分でもカスタムに関わりたいものです。全部ショップ任せのワンオフパーツだけで芸術品のようなカスタムを製作するのも凄いですが、それはユーザーのものと言うよりビルダーの作品というイメージになってしまう。もちろん、そんな特別な1台を創作することも得意なんですが、一般的なカスタムというカテゴリーには当てはまらないわけです。高品質なボルトオンパーツを製作することは、ユーザーの工夫で個性的なカスタムを作り上げる手助けになるんですよ」
パーツの購入だけではなく、実際にカスタムの製作を頼むライダーは、足しげくこのショップに通って、実際にパーツの取り付けを手伝ったり、パーツ磨き込み作業をする人も多いという。それはやはり、自分のバイクをより個性的なカスタムにするための愛情表現でもある。国産車がベースでも、ハーレーでもその点は全く同じなのだ。人と違うシルエットを作り上げることがカスタムバイクの目的。しかし、その全てをビルダーに委ねるのではなく、自分自身も参加する。ボルトオンパーツに要求されるものは、その演出力と、製品精度である。
K&Wは、明るいショールームを用意した清潔感のある現代的なショップではない。しかしその工房には、バイク好きならたまらない機械油と金属の匂いが溢れ、製作途中のカスタムバイクや珠玉のパーツを生みだす工作機械が置かれている。その技術水準の高さは、製作されるパーツを見れば、誰でも確かめられることである。
数々の大型機械を導入することで、製作できるパーツの種類や加工の範囲などが大幅に増える。ビレットパーツの製作は、まずノーマルから正確な寸法を取り、CADでの3D設計図を作成。それをコンピューターにインプットし、マニシングセンターにて削り出す。フレームの加工もやはり3Dでの設計図を起こし、正確なアライメントの計算。直進性とハンドリングを決定するためのトレール量算出など、数字で完璧に管理された状態を具現化するという方法で製作される。それは、これまでのカスタムショップが行なってきた見た目のシルエットだけを重視する方法ではなく、走行する上でも、目的に応じた設計ができるということでもある。ボルトオンパーツにおいても、その製作理念は変わらず、品質の良い、長く愛されるパーツ製作というコンセプトで全ての製品が世に送り出されているのだ。
基本的にボルトオンキットを駆使しながら、フレームのネック部分のワンオフ加工とオールペイントを施したカスタム。元々繊細なイメージのあるビラーゴ250をベースに、その素材をうまく生かし、贅肉を削ぎ落したスタイルとなっている。
最も大きな変更点はリヤ周りで、スイングアームを取り去って、オリジナルのハードテールキットをボルトオンで装着。シートレールは切断されている。エンジン上部にあるプレス構造のメインフレームはパイプフレームに変更。小型のガソリンタンクから見える骨格の美しさも大きな特徴となった。
エンジンはオリジナルトップカバーに交換。ボルトオンパーツで販売中である。
マフラーは、ボルトオンタイプのショットガンマフラーのエンド部分を加工。素材はステンレスとなる。
点火コイルの移設キットはボルトオンパーツ。ジョッキーシフトキットもミッドコントロール用として販売中である。
フレームやフロントフォークはノーマルのままでも、これだけ低く長いイメージのシルエットを作り出す。一見リジットに見えるフレームだが、リヤサスペンションを持つドラッグスターの構造をうまくモディファイしているのだ。
ベース車両のドラッグスターから贅肉を極力取りはらい、ステップの移設やハンドルバーの変更でフリスコスタイルに仕上げたチョッパー。前後ホイールサイズはそのまま、クラシカルなタイヤをチョイスすることでオールドスクールチョッパーのシルエットを見事に表現しているカスタムである。
細部を良く見ると、たとえばエンジンからキャブレターまでの構造はノーマルのままだが、クロームのエアークリーナーボックスを違和感なく取り付けたり、サイドカバーの変更でメタル感を演出したりと、ポイントを押さえたモディファイであることに気付く。
住所/〒444-1222 愛知県安城市和泉町大海古2-12
電話/0566-92-7010
FAX/0566-79-2383
営業時間/10:00~19:00
定休日/なし
ショップは最寄りを走る幹線道路(国道23号)沿いに居を構える。最新鋭の大型機械を導入することで唯一無二のオリジナルパーツを多数展開。また、カスタムマシンのクオリティもご覧の通り他を圧倒する。目印はショップ前に並べられたカスタムバイクである。