足柄上郡～丹沢湖

山北町は神奈川県西部丹沢山塊西側に広がる町である。初夏のこの季節、長閑な里山は特産のお茶の新芽がキラキラと輝き、山からそよぐ風は川面をたどって爽やかに吹き抜けてゆく。都心から80Kmというそう遠くない場所にありながら、どこか懐かしい里山の風景がここには感じられる。今回は丹沢湖周辺を中心に見どころや立ち寄りポイント、更にはこれからシーズンを迎えることからおすすめのキャンプ場をご紹介したい。

東名高速大井松田I.C.から国道246号線を御殿場方面へ約6Km。新安戸トンネルを抜けた信号を鋭角に右折し旧安戸トンネル手前を左折、山道をひたすら登ること10分で最初の立ち寄りポイントである『大野山山頂』（標高723m）に辿り着く。大野山は山頂付近全体が広々とした牧草地となっており4月下旬からは家畜の放牧風景も見られる。また、木々の少ない山頂からは360度の大パノラマを楽しむことができ、ここからの富士の眺めは関東の富士見百景としても知られており一見の価値がある。この大野山山頂から先へは抜ける道が無いので同じ道を引き返さなければならないが、途中にある一軒の山小屋風の喫茶店『カフェリーフス』はハイキング帰りに訪れる客だけなく、バイカーもわざわざ立ち寄るという静かな有名店。帰り道に立ち寄って一杯の珈琲を楽しむのもよい。

丹沢湖は昭和53年に『三保ダム』建設によって誕生した人造湖であるが、丹沢の自然と人工物をみごとに調和させた風景を見ることができる。国道246号線から県道76号線を6Km程度進んだつり橋の手前の駐車場からは、洪水吐ゲートや湖底に沈んだ民家を復元した『三保の家』をみてまわることができ、三保の家に隣接する丹沢湖記念館ではキノコや山菜、地域の産物が販売されている。

三保ダムを後に丹沢湖を更に奥へと進むと、信玄の隠し湯と伝わる中川温泉という小さな温泉郷がある。美肌効果の高いアルカリ性単純泉は公営の『ぶなの湯』や秘湯の宿の雰囲気漂う渓流沿いの旅館などが穴場である。

中川温泉から『箒杉』と呼ばれる巨木の先は多くのキャンプ場があるが、その先の犬越峠はトンネル崩壊の危険から年中通行止めとなっているので、ここでも引き返さなければならず、ツーリングコースとしてはやや物足りない感じがあるかもしれない。たまには川のせせらぎに耳を澄ませ、風を感じ、雲の流れを眺めて時間を過ごしてはいかがだろうか。

三保の家。湖底に水没した世附地区で使われていた江戸時代末期の民家を移転復元したもの。

かながわの景勝50選や関東の富士見100景、ダム湖百選にも選ばれている美しい人造湖。サイクリングや釣り、ボートなども楽しむことができる。

箒杉。樹齢2000年といわれる巨木は、国指定の天然記念物に指定されている。