スズキ GSX400F/インパルス(1981)

掲載日:2014年05月30日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI GSX400F/Impuls(1981)

2気筒のGSX400Eで4バルブ化にメドをつけたとはいえ、スズキは他社よりもいち早く400ccのGSX400Fの4気筒エンジンにも4バルブを導入。先進メカをアピールすることで、4ストのスズキのイメージを早く高めることに腐心したのだ。ほぼ同じ時期に開発が進められていたGSX1100Sカタナの先進性に対して、日本のマーケットを主体にしたGSX400Fはやや保守的なスタイルで勝負に出たカタチだった

GS系の世界的成功で4スト技術に自信を得たスズキは、国内主流の400cc級に先陣を切って
4スト4気筒DOHC 4バルブというハイメカを投入、先進性を強くアピールした。

スズキ初のミドルマルチ

GSX400Fを語るにはまず、GS750に触れないわけにはいかないだろう。まさに社運を賭けて開発したスズキ初の4スト4気筒スポーツであり、その後のスズキ製4スト車の礎になった車両であるからだ。

スズキの肝入りでデビューしたGS750は、国内はもとより、むしろ欧米でエンジンの高い信頼性と潜在能力で高評価を受けた。1976年のことだった。作りは奇をてらうことなく、オーソドックスの極み。それが先駆者たちを追い越す、もっとも合理的な方法でもあった。

スズキは続いてGS1000を発売し、レース部門でも大活躍。4スト4気筒スポーツの評価を不動のものにした。

そんな’70年代後期の国内市場はといえば、免許制度変更の影響を受けて、400=中型クラスが国内市場の中心をなしていた。中でもメインは4スト並列2気筒エンジンを積んだスポーツモデルだった。

しかしその流れは、’79年にカワサキがZ500FXベースのZ400FXを発売して爆発的な人気を呼んだことで一変した。ヤマハがXJ400で追随。スズキもこれを追う形で、GSX400Fが’81年4月にデビュー。スズキ初の4スト4気筒中型スポーツの登場となった。

もともとは’80年の秋に輸出用GSX400Fの発表で始まり、同年11月の大阪国際オートショーで国内仕様がデビューという流れだった。スペックはすでに先行するカワサキとヤマハの400ccに、真っ向から対決できるだけの力量を備えていた。

それどころかGSX400Fは同じDOHCでも4バルブを採用して、ライバル他車にはないハイテクぶりをアピールした。400ccの4気筒はエンジンのボア径が小さく、4バルブ化が難しいとされたが、スズキはこれを他社に先駆けて採用した。

しかも、’80年にデビューしたDOHC4バルブのGSX750E、GSX1100Eの流れを汲むTSCC型4スト4気筒エンジンで、まさに勢いのあるスズキを見事に演出したのだった。TSCCとはツイン・スワール・コンバスチョン・チャンバー(2渦流燃焼室)の略で、シリンダーヘッドがふたつのドームに分かれ、それぞれに吸気・排気の2バルブを配置。吸入された混合気は燃焼室内でふたつの渦流を起こし、燃焼効率を高めるもの。

また、点火プラグが燃焼室の中央部に、しかもピストン圧縮面に近くセットできるので、燃焼速度も短縮され、高回転にも対応できる。

事実、TSCC搭載のGSXシリーズは既存の2気筒も含めて、スズキならではの素早いレスポンスが実感できた。もはや、スズキは4スト・エンジンのメーカーとして、むしろ先進性に溢れる、というイメージを確立したのである。

先進性といえばスタイルも他を圧倒する手法を用いた。それはデザイナーにハンス・ムートを起用した、カタナの登場であった。エンジンで他社を追い越したプライドがあっても、スタイルは今ひとつ。GS750、GS550、GS400の3機種はあくまでも上質感に溢れるオーソドックスなスタイルであったからだ。並列2気筒のGSX400E/250Eではスタイルでも先進性をアピールしたが、世界中を驚かせるには至らなかった。そこで打った次の手がカタナであった。4スト分野でまだ歴史が浅い、この時期のスズキの、社内の志気高揚に貢献したはずだ。

奇しくもGSX400Fは、GSX1100Sカタナとほぼ同じ時期にデビュー。外観はカタナとは大きく異なり、フォルム全体はやはりオーソドックス。しかしレイアウトの基本はカタナと変わらず、4ストDOHC・TSCCエンジン、左右2本出しマフラー、星形キャストホイールも同デザイン。見逃せないのがGSX400Fの燃料タンクだ。

フォルムこそオーソドックスだが、SUZUKIと書かれたデカールの下のラインは実際にプレスの入った上面と下面を分離して立体感を生み出す手法。カタナに使うライン手法を応用したものだ。

スズキは約1年後の’82年3月にGSX400Fを小変更。2トーンのボディカラーとしたほか、片側だけだったアンチノーズダイブ機構ANDFを、フロントフォーク両サイドにセット。ホーンもデュアルタイプとしてグレードアップ。

もともとスズキは4スト・スポーツで他社よりも軽量性を重視したが、’82年7月登場のGSX400FSインパルスはさらに4kgもの軽量化を実現。排気量を限界までアップし、ヨシムラと共同開発したサイクロンタイプの4in1マフラー採用で、エンジン出力は3馬力プラスの48馬力へ。黒塗装エンジンやマフラーに、シングルシート風デザインは新たなファンを生み出したのだ。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

大人しくも見えるデザインだが、実は前衛的なGSX1100Sのカタナに採用した燃料タンク下のキャラクターラインを巧みに採用。ライバルにはない、スズキ独自のテイストをアピールした

2代目のGSX400Fではアンチノーズダイブ機構がフロントフォーク片側から両側セットへ。カタログではホーンが2代目にデュアル型になったことが明記され、車体色は単色3タイプから、2代目では青/白、赤/白の2タイプへ。リヤショックはADDF(オートマチック・デュアル・ダンピング・フォース)型へ。このほか、タンデム用シートベルトのアンカー取り付け位置が2代目では後方に

ヨシムラと共同開発のサイクロンマフラー採用、ボアをφ45.2→45.3mmに変更して、398ccから399ccという排気量アップ。圧縮比も10.5から10.7に。これによって出力を45馬力から48馬力へアップしたインパルス。ただし、リヤブレーキはドラム式。スポーティな走り方にリヤはディスク不要と考えたのか、軽量・低コスト化のためかは不明だが、同車の登場はインパクトが大きかった

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