掲載日:2022年02月15日 フォトTOPICS
取材協力/スノーランド塩原 取材・写真・文/後藤 武
スノーモービルに乗ってみたいと言い出したのは22歳のカンタとシューヘイだ。乗り物が大好きでクルマには乗っているが、バイクはこれから免許取得を考えているところ。そんな2人、スノーモービルのレンタルがあると聞いて興味津々。栃木県のスノーランド塩原に出かけていくことにした。
このフィールドの魅力は2つ。1つは関東近辺で最大級の広さを誇っていること。なんたって総面積は東京ドーム14個分。技量や雪のコンディションなどに応じて様々なフィールドをチョイスすることができる。
そしてもう1つはハイパフォーマンスマシンに乗れてしまうこと。カンタが選んだのはSRX600。2ストローク3気筒エンジンを搭載したこのスノーモービルは、バイクで言えば2ストのレーサーレプリカ。レースでも大活躍した。
SRXが登場したのは98年。ちょうどスノーモービルの世界でも排ガス規制が叫ばれるようになった頃だ。その後はスノーモービルも急速に4スト化が進んでSRXは2年で生産中止されることになった。
つまりSRX600はヤマハの2スト技術が注ぎ込まれた最後のハイパフォーマンスモデルってことになる。バイクでいうとRZ250的なマシンだ。
シューヘイの選んだSXバイパーは、SRXをベースとしたクロスカントリーモデル。足回りやトラック(キャタピラ)を変更して悪路の走破性を高めている。このモデルも2ストの軽さとパワーを最大限に生かした走破性で話題になった。ちなみにどちらも最高出力は120hpオーバーだ!
エンジンを始動した瞬間、大排気量ハイパワーな2ストエンジン独特の排気音と吹け上がりで2人は大興奮。だだっ広い雪原だから、このパワーを思う存分全開にすることが出来る。
2スト3気筒だってことに加え、ノーマルで集合チャンバーを装着しているもんだから排気音も相当にエキサイティング。2スト好きがこのマシンに乗ったら「やっぱり2スト最高だ」って感涙にむせぶことは間違いない。
バイクでも絶滅危惧種に近いハイパワー2ストを思い切り走らせることが出来るなんて最高の贅沢。このエンジンのフィーリングを楽しむためだけにスノーランド塩原に行った、という人がいたというのも頷ける話だ。
「雪はなんでも覆い尽くしてくれる」みたいな表現をした昭和な小説があったが、正しくその通りで地面の凸凹はすべて雪の下。丘陵のゆるやかなアップダウンだけがパウダースノーで形作られる。なんか湖の上を走っているような不思議な気分になる。
ハイパフォーマンスなスノーモービルは、大ジャンプなどを考えて足回りも強化されている。だからマシンを曲げる時は荷重変化を利用してサスペンションを沈ませ、フロントサスが伸びてくる前に鋭くターンインする必要がある。
荷重を利用した乗り方はクルマと似ているが、コーナーリングスピードが上がってきたら車体のインに大きく体重移動する一体感やテクニックはバイクのよう。右コーナーでは大きく体重移動すると、バイクのようなスロットルではコントロールが難しくなるので、スノーモービルはすべて親指で操作するサムスロットルシステムになっている。
と、速く走らせる為には中々難しくなるのだけれど、スノーランド塩原のマシンは、比較的サスも柔らかめに設定してあるようで、スノーモービル初心者の2人が乗っても簡単に曲がってくれる。
変速機はオートマチックでクラッチもないから誰でもスロットルを開けただけで、このパワーを体感出来てしまう。イージーに楽しめてしまうのにライディングを突き詰めていくと実に奥が深い。ライダーならハマること間違いなし。今年は雪のコンディションも素晴らしいから、ぜひ一度体験していただきたいものである。