RUMBLE FISH / Z1R-II カスタム写真
RUMBLE FISH / Z1R-II カスタム写真

カワサキ Z1R-II

掲載日:2010年12月13日 プロが造るカスタム    

現在の17インチコンプリートにつながるルーツがここに

今ロードライダーをはじめとしたバイク雑誌の誌面を飾っているカスタムバイク。それには基本的に車両オーナーがいて、ショップに製作を依頼するというのが大半だ。そのプロショップも、元々はいちライダー、いちカスタムファンとしてカスタムに接してきて、それが高じてショップオープンへ……というケースが少なくない。

 

現在の日本のカスタムシーンでの代表格に挙げられるほどに発展したACサンクチュアリーも、代表である中村博行さんのルーツはそうしたものだった。中村さんはサンクチュアリーの立ち上げ(1995年)以前、個人的にツーリングクラブ“ランブルフィッシュ”の仲間内でカスタム手腕を奮っていた。このZ1R-IIは、その頃=1993年頃=におよそ4年の歳月をかけて独自チューンで仕上げたものだ。

 

「まず空冷カスタムの定番として、ハンドル、ステップ、マフラーを換えました。前後サスもイジッたのですが、ツーリングで400ccモデルに追い付けないほど車体がヨレるようになってしまった。そこでリヤショックをレイダウンマウントし、フレームは7カ所に補強を加え、前後ブレーキも強化しました。その後フレームにはさらに補強を追加したので、計14カ所になっていますね」とは、製作者にしてオーナーの中村さんの、当時の言だ。このフレームは一般的な、メインループの前部に補強を入れるのに加えて、中村さんが独自にループ後部にも同様の補強を入れた。また面白いのは、リヤのオーリンズショックのセッティングがどうしても合わず、ヨシムラKYBのTT-F1用に換装したところ、その途端に最高速が15km/hも伸びてしまったというエピソード。サスのマッチング、車体の構成がエンジンパワーの生かし方(乗り手の安心感からも来るのだろう)にも影響するということを、図らずも証明したケースと言えそうだ。

 

さらに、このZ1R-IIにはエンジンのオーバーヒート対策として、オイルクーラーで冷やされたオイルをクランクケースに戻す手前で分岐を設け、エンジン内部を通さずにバイパスしてシリンダーヘッドへと冷却済みオイルが流れるよう、オイルラインを工夫している(ラインにはブレーキライン用のステンレスメッシュホースを使い、サイズも考慮)。これにより、オーバーヒートも、当時Z特有と言われていたオイルにじみも解消されたという。オイル性能の向上や使用パーツ、素材、加工や精度等でこの手法は後には使われなくなっていくが、やってみたからこそ使う/使わないの判断ができるようになったのもまた事実で、ここには中村さんのZに対する愛情と熱心さが伝わってくる。

 

この自分仕様のZ1R-IIと、今後紹介予定のZ1-Rは、そのころ中村さんが新型車の17インチホイールや、各メーカーから出てくるリプレイス17インチタイヤをZに組み合わせて、ワイドタイヤの格好良さを採り入れると同時に、それによってSTDで19/18インチのZ(Z1-Rは前後18インチ)がディメンションや剛性の変化でいったん崩れたバランスを走っては直し、作っては直しして、17インチZへの理解を深めたカスタム。これらはまさに、今のACサンクチュアリー製コンプリートカスタム“RCM(リアル・コンプリート・マシン)”の礎だと言える。そして中村さんとサンクチュアリーは、現代バイクももちろん進化しているのだから、とまだまだ先があるとして、今もRCMの完成度を高めることに腐心している。そのルーツや考え方を知るにも、必見の1台だ。

ランブルフィッシュ(ACサンクチュアリー) Z1R-IIの詳細写真は次のページにて

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