エンジニアリング キヨナガ / Z1000J カスタム写真
エンジニアリング キヨナガ / Z1000J カスタム写真

カワサキ Z1000J

掲載日:2011年02月23日 プロが造るカスタム    

随所に今ならではの工夫を凝らし
1981年AMAスーパーバイクを再現

カスタムで多く見られるレーサーレプリカ仕様。これを作るという作業は、ある意味で難しく、ある意味で容易でもある。まず容易な面については、ベースモデルが市販車ベースである場合。同じ市販車をベースにできるという意味で、形状や背景も取り込んで行きやすい。1970~1980年代のAMAスーパーバイクレーサーは、その意味でモチーフに事欠かない。ストックシルエットという規定があって、市販車のシルエットを維持することが課されていた。そのために通常はレーサー化にあたって回転計以外は外してしまうようなメーターもケースは残さないといけなかったし、1970年代前半は排気系もSTDの形状を残すということで、カワサキZ1は4本出しのまま、中身を変えて工夫したEXを装備したほどだった。

 

難しい面については、細かい考証が挙げられるだろう。同じベース車であってもいつの、どのカテゴリーの、誰が乗った、どこで走ったというところまで細かく再現するのか(する必要があるのか)。素材や寸法までレプリカしたいなら、徹底的にやるのもいい。だが行き過ぎてもマニアックになるばかりで、ある程度の適当さが必要な場合もある。

 

いずれにせよ2000年代に入ってからはWEB環境の発達などによって、資料探しやパーツ/グラフィック製作といったこともラクにはなってきた。ただ、資料がどこまで正確なのかという判断力はより高めなければいけなくなった(又聞きなどでなく、一次情報の重要性がそれだけ増している)。

 

1980年代初等の“ローソンレプリカ”も、考証や解釈がさまざまあったものの、ようやく落ち着いた。市販車でのローソンレプリカはカワサキがローソンの1981/1982年AMAスーパーバイクチャンピオン獲得を記念して、それぞれの翌年となる1982/1983年型に市販した角タンクのZ1000R(Z1000R1とZ1000R2で、タンク上に記念ステッカーを貼付。ただし1983年型はローソンの世界GP参戦によるヤマハへの移籍との関係でそのステッカーの文字も“スーパーバイクレプリカ”となる)だ。だが、ローソン自身の1981年のチャンプ獲得時の愛機は、そのベースモデルとなる丸タンクのZ1000J(当地ではZ1000呼称)。さらにZ1000S(Z1000S1)は、1981年のZ1000Jローソン車のデッドコピーによって作られた市販レーサー(ローソンはほとんど使っていない)だ。

 

そうした意味でこのERKキヨナガ製Z1000Jカスタムを見てみると、カラーリングも含めて1981年のローソン“スーパーバイク”レプリカと言うことができる仕上がりだ。丸タンクに濃いめのライムグリーン、紺色のストライプ、ゴールドカラーのホイール。ヘッドライトもメーターも前述のストックシルエット規定によって形状は維持されているから、ゼッケンプレートがない程度と思っていい。

 

オーナー北園さんがモディファイを決意したのは、たまたま参加したサーキット走行会。そこで抱いたよりハイレベルな走りを実現したい、という北園さんの気持ちに応えるべく、キヨナガがまず行った作業は、足まわりの刷新だった。トリプルツリー+φ[38→]43mmインナーチューブのフォークは1997~ZRX1100、トラス形状のスイングアームはZRX(400)用で、前後17インチホイールはイタリア・テクノマグネシオ製。ホイールを社外品とし、他の大物を純正品とするパターンは純正流用でよく見られるものだが、いずれもローソンのスーパーバイクを意識しての選択だ。

 

とはいえ、北園さんとキヨナガはルックスの向上だけを考えたわけではない。全長が短かったZRX用フォークには、落ち着いたステアリング特性を得るためにフォーク延長キットを追加するなど、各部に適切な処置がなされているのだ。

 

一方のエンジンは、Z1000Jの直系後継で互換性もあるZ1100Rのピストン、同じくGPz1100用クランク+コンロッド、Z1000S1用バルブスプリングなどを組み込み、排気量は998→1089ccに拡大(この排気量では純粋にはローソンレプリカと呼べなくなるが、Z1000S1やGPz1100のパーツはローソンらのAMAレーサーを元に開発されたという側面があるから、背景を取り込んでいると言える)。このパワーの増加に対応するため、J系カスタムでは定番の左後部エンジンマウント補強も行い、エンジンのずれも予防している。

 

はっきりした考証と、当時の系列モデルパーツ、そしてその後に得られた技術や手法をしっかりと投入、当時の雰囲気を再現しながら現代的な性能を獲得した。それがキヨナガ製Z1000Jの実像と言っていいだろう。

エンジニアリング キヨナガ Z1000Jの詳細写真は次のページにて

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