TAVAX ENGINEERING / Z1 カスタム写真
TAVAX ENGINEERING / Z1 カスタム写真

カワサキ Z1

掲載日:2010年11月08日 プロが造るカスタム    

好きだからで作り上げた入魂作、そのルーツ

TAVAX ENGINEERING / Z1 カスタム写真1980年代後半にルーツを持つ現代カスタムは当初、当時のスーパースポーツ系パーツの純正流用から始まった。一部にはオリジナルフレームや削り出し(今でこそ一般化したNCマシニングセンタも、当時ショップレベルで使うというようなことはほとんど考えられなかった)のアルミ製パーツなどを作っているショップもあったものの、その多くはレースにルーツを持つ、いわゆるコンストラクター系。純粋なストリート系ショップで、大がかりな作業を手がけられるところはまだほとんどなかった。そんな状況で当時業界に衝撃を与えたのが、このタバックス・エンジニアリングによるオリジナルフレームのZ1改である。そのオリジナルフレームは何とアルミ角断面パイプを曲げて作られたダブルクレードル=当然ワンオフ=で、スイングアーム、マフラー、フューエルタンク(何とこれもアルミ製)、ライトステー等々の各部パーツも、すべてタバックス製オリジナル。それでいながら佇まいはまごうことなきカワサキZ1のそれ。このマシンの登場は、まさしく衝撃的なことだったのだ。

 

チューニング作業はエンジンとメーターだけという状態からスタート。そのエンジンは903→987cc化でスープアップされると同時にクロスミッションが組まれ、キャブレターもVM26SCに換えてCRφ33mmが装着されている。このあたりのパッケージングはいかにも1980年代の当時風といった印象で、スズキのGP500レーサー・RG500用フロントフォーク、ヤマハのTZ250純正ホイールなどを使った足まわりも、今となっては懐かしい。そして、このマシン最大の特徴でもあるアルミ製フレーム。これはタバックス代表・田端さんの手によって曲げ加工、溶接、バフ加工と一連の加工が施されたこだわりの逸品で、これ単体でも十分鑑賞に耐えうるだけの美しさを持っている(製作当時も、少しでも溶接をかじったことのある人のほぼすべてが、ビード跡を一見しただけで息を呑んでいたほど)。一方でこのフレームは車体全体の軽量化にも貢献しており、総重量は何と185kg(Z1-STDの重量は乾燥で233kgだから、50kgどころではない軽量化が実現された)。20年近く前のカスタムということを考えると、やはりこれは驚異的な1台だったと思う。

 

さらにこのZ1には、この手のカスタムにしては珍しいとも言える、続きがある。この角型アルミフレームから10年少しを経て、田端さんはSTDと同型の丸パイプを使った2代目のZ1を作る。これには通常の取り回しからエンジン後方下部のチャンバーを経てテールカウル上に排気系を取り回した上方排気と、オイルクーラー部から採り入れた新気をそのテール部に流す冷却系が採用され、この1台目と同様の白×青に塗られる外装パーツは、すべてアルミ製(サイドカバー等も叩き出し!)となる。その後に作られた3代目は、エキパイがエンジン下でなく両側に取り回された上でテール部に続くように上方排気を進化。このためにダウンドラフトFCRを使ったり、アンダーカウルの位置に追加燃料タンクを置いたり、上下フォークブラケットを中空タイプで製作するなど、作るごとにすごさが増す。次に作るものは常に今あるモノを超えないといけないという意志も内包しているようだ。

 

そしてこれらに共通した製作コンセプトは「見ていて飽きが来ず、乗って楽しい、自分だけのZ1」。オリジナルパーツを多用しながら、全体のバランスはZ以外の何ものでもない。それを支える各部バランスの良さと造形センスの良さのルーツは、このZ1に見て取れる。作られて以後も10年以上輝きを失わないカスタムの、まさに見本と言っていい1台だ。

タバックス エンジニアリング Z-1の詳細写真は次のページにて

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