掲載日:2024年03月05日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/KTM JAPAN 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
KTM 390 DUKE
MotoGPやダカールラリーなど、トップカテゴリーのレース界で活躍するKTM。そのアグレッシブなイメージのままに進化を続けるDUKEシリーズが2024年モデルで一新された。KTMにとって2024年はDUKE誕生30周年という記念すべき年であり、第3世代となった390DUKEも相当気合が入ったものとなっている。エンジンと車体、外装を含む全体の90%のコンポーネンツを新設計とするなど、従来モデルとは別物と言っていい進化を遂げた。
デザインは従来のストリートファイター風から、より洗練されたスポーツ純度の高いデザインへと見直されている。フューエルタンクは形状を改め表面の質感をアップ。タンクスポイラーも鋭くシェイプされた。新しくなったLEDヘッドライトやTFTディスプレイが高級感を醸し出している。
エンジンも次世代型へと進化した。LC4c(コンパクト)と名付けられた軽量コンパクトな水冷単気筒の排気量を399cc(従来は375cc)までアップ。シリンダーヘッドとギアボックスを新設計し、従来から1psアップの最高出力45psを実現しつつEURO 5+にも対応している。
シャーシも新設計となり、フレーム剛性を最適化したスチール製トレリスタイプと軽量アルミダイキャスト製サブフレームの2ピース構造とし、トリプルクランプを含めたディメンションも見直された。
サスペンションは前後ともトラベル量150mmを確保したWP製APEX倒立フォークに同じくAPEX製リアショックを採用。スポークの数を減らした軽量ホイールと改良された軽量ディスクブレーキ(フロントφ320mm+4P、リアφ240mm+2P)によりハンドリングを向上。湾曲スイングアームに合わせてマフラーをコンパクト化、オフセットされたリアショックによるエアボックス配置の最適化などにより、従来モデルに比べてシート高を10mm低く設定するなど全面的にリファインされている。
また、3種類のライドモード(ストリート/レイン/トラック)に加え、最新バージョンのスーパーモトABSとコーナリングMTC、ローンチコントロールを標準装備。オプションでクイックシフターを用意するなど電子制御も上級モデル譲りだ。さらにKTMコネクトアプリを介した音楽プレーヤーや着信応答、ナビゲーションなど便利な機能も新たに搭載。まさに新世代のマシンに相応しい仕様となっている。
明らかにDUKEなのだが、よく見ると従来モデルと同じところがない。スタイルだけ見ても、足長のモタード風だった初代(2014~)からファイター風の先代(2017~)を経て、新型はより正統派のスポーツネイキッドへと洗練させた。従来モデルから引き続きインド生産になるが、ディテールの作りも含めて非常にクオリティが上がっている印象だ。
今回、新たに投入されたLC4cエンジンはパワフルかつ洗練されていて、荒々しいというよりは緻密な感じ。加速しながら滑らかなタッチのクイックシフターでギアをかき上げていく高速コーナーが最高に気持ちいい。臆せずにスロットルを思い切り開けられる快感はこのクラスならではだ。その意味で初心者から扱いやすく、ベテランの好奇心も満たしてくれるポテンシャルも十分にある。回転上昇がスムーズで気持ちよく、排気音もよりレーシーな抜け感のあるサウンドになった。一方で従来モデルの中速域での弾けるトルク感がやや薄らいだ気がするのはユーロ5+の影響だろうか。KTMの開発者によると、環境性能を追求しつつ馬力を稼ぐためにも排気量拡大が必要だったらしい。
ハンドリングは軽快かつシャープで安定感があり、狙ったラインを正確に切り取っていく走りはKTMならでは。車体はカッチリしてサスペンションはしっとり。ブレーキも強力で入力に対する効きもリニアでコントロールしやすい。従来モデルに比べて走りの面でトータル的にワンランク余裕が増した感じだ。本気で走らせれば相当スポーティで、腕に覚えのある猛者なら限界まで攻め込んでみたくなるポテンシャルを持っていると思う。否そういうコンセプトで全面刷新してきているのだ。
ライポジの自由度も上がった。シートが低くなったがウレタンは逆に厚みが増して快適性もアップ。また座面がフラットかつ長くなり前後に動ける余裕ができたおかげで、加速時に腰を引いて伏せたり、ハングオフしたときに自然なフォームが作れるようになった。結果的にリラックスして乗れて、長距離も疲れにくくなったことも大きなポイント。ちなみに流れの速い欧州の高速道路でもストレスなくクルーズできた。
車重が153kgから165kgへと増えているのが気になったが、そう感じさせない軽快なハンドリングだ。理由としてはトリプルクランプのオフセット量の見直しと軽量ホイールの採用。加えて標準装着の「ミシュラン・パワー6」が軽いことも奏功していると思う。ちなみにパワー6は埃っぽいスペインの峠道でも常に信頼感のあるグリップで応えてくれた。街中でのUターンでも十分なハンドル切れ角があり、人が歩く程度のスピードでも回転数とトルクが安定していて扱いやすさは変わらなかった。
タンク容量も1.5L増えて15Lになったことで航続距離も400kmに届くとか。楽なライポジと合わせてスポーツツーリングも楽しめると思う。見た目のグレード感も増して、本気を出せばクラス最強級に速いし、それでいてアクセルを開けても使い切れるパワー。搭載された電子デバイスも400ccクラスとは思えない充実度だ。KTMの心意気を感じるマシンである。
KTM 390DUKEパワーパーツ装着車。
スチール製トレリスフレームにエンジンを吊り下げる構造は従来どおりだが、捩じり剛性を高めたメインフレームとアルミ製サブフレームを持つ2ピース構造となり、エンジンも軽量コンパクト化が図られた。写真はオプションのエンジンガードを装着。
LC4cと名付けられた水冷単気筒DOHC4バルブエンジンはストローク量を24mm伸ばして排気量399ccに拡大。シリンダーヘッドとギアボックスの最適化などにより従来比1psアップの45psを実現した。
フロントにφ320mmディスクとラジアル4Pキャリパーを装備。スポーク数を減らした新型ホイールにインナーローターを省いたディスクを直付けするなど、徹底的にバネ下を軽量化することでハンドリングを向上。
リアも同様に軽量化されたφ240mmディスクと2Pキャリパーを装備。湾曲タイプの新型アルミ製スイングアームの下側スペースにショートマフラーをコンパクトに配置する。
メインフレームとスイングアームを直接的にリアショックでつないだシンプルな構造。大きくレイダウンしたリアショックを車体右側にオフセットすることで、シート高を従来より10mm下げつつエアボックスとタンク容量も拡大。
従来のサドル型シートを改めスーパースポーツタイプへと大きくデザインを変更。座面はフラットかつ前後に長くなりライポジの自由度が向上。フォームの厚みを増して快適性も高められた。写真はオプションのリアシートカバーを装着。
滑り止めのローレット加工が施されたスチール製ステップバーも新デザイン。バー先端にもギザギザがあり踏ん張りが効いてステップワークしやすい。
エッジの効いたシャープなシルエットに進化。LEDヘッドライトの外側を囲むようにLEDポジションランプを配置した新しいフェイスデザインやヘッドライト下まで伸びたタンクスポイラーがアグレッシブさを強調する。
後ろから見るとT字に見える面発光タイプの新デザインLEDテールライトを採用。従来の3段式LEDと比べるとだいぶ印象が異なる。※撮影用にライセンスホルダーは取り外されています。
新たに5インチTFTディスプレイを採用。ライドモードやMTC、ローンチコントロールに加えスピードリミッター機能やラップタイマーも装備。またKTMコネクトアプリによる音楽プレーヤー、着信応答機能、ターンバイターンナビゲーション機能も搭載。
TFTディスプレイを操作するためのスイッチギアは人間工学的に最適化された新デザインを採用。照光式スイッチを備えているが、目視しなくても指先の感覚で操作しやすくなっている。
DUKEシリーズ誕生30周年記念ということで初代620DUKEをはじめ歴代モデルを一堂に展示。実車とともにヒストリーも紹介されていた。
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