【ホンダ ゴールドウイング ツアー 試乗記】大海原を目指せ! 風を起こせ!

掲載日:2023年03月10日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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HONDA GOLDWING TOUR

地球上あまたにあるモーターサイクルの中において、唯一無二、水平対向6気筒エンジンを採用するホンダ・ゴールドウイング。プレミアムツアラーの頂点に君臨する最新モデルをテストする。

半世紀近くにも及ぶ
ゴールドウイング史の最新モデル

地球上にはバイクやクルマを製造するブランドはあまたあるが、ホンダは間違いなく世界最高峰の”エンジン屋”だ。ホンダの歴史を振り返ると特に60年代のレーシングバイクの分野では、超高回転型の小排気量多気筒エンジンの活躍などで顕著に見られた。一方でスーパーカブのような一般向け車両では高性能高耐久で世界中にファンを持つことになった。

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そのホンダが世の中に送り出す最高峰エンジンのひとつ、水平対向6気筒エンジンを搭載する豪華クルーザーがゴールドウイング ツアーだ。最新の排出ガス規制に対応し新色を増やして2023年2月16日に発売された最新モデルのテストリポートを送る。

ホンダ ゴールドウイング ツアー 特徴

限りある人生、一度は触れたい
威厳に満ちたフラッグシップツアラー

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ゴールドウイングの冠を持つバイクが登場したのは1974年のことでGL1000というモデル名だった。北米マーケットをターゲットに水冷999cc水冷対向4気筒エンジンを搭載したそのモデルは、まだカウルなどを持たないネイキッドモデルであった。

1980年には後継モデルとなるGL1100へバトンを渡す。手前に大きく引き込まれたアップタイプのハンドルバーや、クッション性の高い2段シートの装備、さらにエアサスペンションの採用など、クルーザータイプへと舵を取り始める。並行して大型のフロントフェアリングやサイド&トップケース、ステレオサウンドシステムが追加されたインターステートというモデルを追加、このスタイルが現在まで続くゴールドウイングの基礎となっている。その後1988年に登場した4代目となるGL1500ではついに水平対向6気筒エンジンを採用し、そこから坦々とブラッシュアップが施されながら、北米だけでなく世界中のマーケットに受け入れられていった。

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初代の登場から約半世紀、いつの時代もゴールドウイングは最先端を行くプレミアムツアラーとして進化をしてきた。現在販売されているゴールドウイング ツアーは2018年にフルモデルチェンジが行われた6代目にあたり、巨大化をたどってきたゴールドウイングを、扱いやすくかつ運動性能を高めるべく軽量化や、フロントサスペンション機構にダブルウィッシュボーン式を用いることなどの改良が加えられている。そして先日、現行排気ガス規制のクリアや新色の追加などが施された2023年モデルが登場したのである。

ホンダ ゴールドウイング ツアー 試乗インプレッション

ゆったりとした乗り味と、
スポーツできる運動性能を両立

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バイクに乗っている乗っていないを問わずとも、近寄りがたいと言わんばかりのオーラを放つ巨体。多くの人が初めてゴールドウイング ツアーを目の前にした際にそう感じることだろう。

ハーレーダビッドソンのウルトラ系やBMWモトラッドのK1600シリーズなども近しい存在ではあるのだが、ゴールドウイング ツアーはパフォーマンスはもとより、ニホンシャライクなデザイン的な面で「Japanese Huge Model」の代表とされており、それが国内だけでなく海外でも多くのファンを生み出してきた。

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車体に跨ってみると、ポジションはワイド気味だが扱いにくそうというわけでもない。それはライダーまで近づけられたハンドル、座り心地の良いソファのようなシート、足を自然に下ろした位置にセットされたステップの三点支持が絶妙なバランスとなっているためだ。

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エンジンを目覚めさせ走り出す。現在はDTCモデルしかラインアップされていない。なのでクラッチレバー操作は不必要である。一番最初の発進時こそ違和感があったものの、走り出せばこれが快適そのものである。変速ショックはほぼなく、私の頭の中を覗かれているのかと思うようなシフトチェンジを行ってくれる。渋滞路などではクラッチレバー操作をしないことの快適さを存分に知ることができた。

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両足のつま先から腿の付け根まで使い、ぴったりと車体を挟み込めば、全長2615mm、車重390kgという超ド級サイズの車体を意のままに操ることができる。この人車一体感に私はすぐさま魅了されてしまったのだ。

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市街地を抜けて高速道路に乗ると、さらに真価を発揮するステージになる。独立懸架タイプのいわゆるダブルウィッシュボーン式のフロントサスペンションは、路面追従性が非常に高く、どこまで車体を倒しこんでも安心感があり、一方でしっかりとした手ごたえをライダーへと伝える。私はテレレバーという独立懸架サスペンションを採用する古いBMWモトラッドを普段使用しているので、この感触にむしろ親近感を覚えるが、テレスコピックフォークを縮ませて曲がることに慣れていると、最初は戸惑うかもしれない。ただ、是非その先にある世界を満喫してほしいと思う。

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スポーツモードにセットするとエンジンのキャラクターは豹変し、内に秘めたるパフォーマンスを解放し襲い掛かってくる。考えて見てほしい、400kg近い車体と2000cc近い水平対向6気筒エンジンのパワーの組み合わせを。もちろんコーナーの続くワインディングロードを走らせれば切り返し時のお釣りはあるが、それも含めて操ることが気持ち良い。これほどまでにスポーツライディングを楽しませてくれるトータルバランスの高さには脱帽するしかない。

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シート&グリップヒーターは神装備であるし、走行風をしっかりと遮るスクリーンとフェアリング、しっかりとライダーの耳に届くオーディオシステム、フィーリングだけでなくサウンドも最高のエンジン。普通ならばこの手のツアラーは、インプレッションをとるテストライド以外では走らせたくないと思えそうなのだが、快適な移動手段過ぎて、ちょっとコンビニへという時にも使わせてもらってしまった。

プレミアムツアラーを上がりバイクと例える方もいるかもしれないが、どうせ上がるならば、一分一秒でも早く上がった方がいい。こんな贅沢なバイクをいつまで作ってもらえるかわからない。買うならいまだ。

ホンダ ゴールドウイング ツアー 詳細写真

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1833cc水平対向6気筒エンジンは、ボアストロークを73×73mmとするスクエアタイプ。最高出力126馬力を5500回転で、最大トルク170Nmを4500回転で発生させる。低回転ではドロドロと高回転ではシルキーなフィーリング。

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フロントタイヤは130/70R18サイズ。ラジアルマウントされたダブルディスクブレーキは、タッチ、効き共に好感触で、400kg近い車重を高速走行時でも一気に安定して制動させる。エンジンとタイヤの距離感に注目。

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フロントタイヤアーチを覗き込んだところ、ダブルウィッシュボーン式のいわゆる独立懸架サスペンションを伺うことができる。この事により、フロントタイヤとエンジンの距離を近づけることができ、扱いやすく高い剛性感も得られている。

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上下に可動させることができる電動スクリーンもゴールドウイングのお家芸。両脇に取り付けられたサブスクリーンや、ダッシュパネル上に備わる跳ね上げ式フラップにより、いかなる環境下でも快適な走行が可能。

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ゴールドウイングの専用エンブレムを連想させるLEDヘッドライトと、快適性や運動性能を実現した大きなカウル。カウル類のスペースを広げることは重量増にもつながるものだが、旧モデルと比べて現行モデルは約38kgもの軽量化を成功している。

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シート高は745mmと抑えられている。ライダー側は前方に向かってシェイプされていること、腿、膝、くるぶし、と両足の内側がしっかりと車体をホールドできるように設計されている。パッセンジャー側もゴージャスで座り心地バツグン。スピーカーもインサートされる。

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ライダー側のステップは”バー”というよりも”ボード”という形状に近い。DCTのみの販売となっており、シフトチェンジレバーはない。パッセンジャー側のステップはたたんでいる時のデザイン性、使用時の快適性を両立させた。

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車体左側にパーキングブレーキレバーが備わっている。マニュアルミッション車ではないこともあり、坂道などでの駐車時で頻繁に使用した。なお、坂道発進時のヒルスタートアシスト機能も備えている。

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物理キーを使用することなくイグニッション操作を可能とするホンダスマートキーシステムが用いられている。身に着けて近づくだけで、サイドポケットやケース類の開錠が可能。スマートキー側には車両の場所を知るアンサーバックスイッチがある。

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これだけの数のスイッチがあると、どう操作すればよいか悩みそうなものだが、そこは長年蓄積してきた経験をもとにスイッチレイアウトがされており、ハンドルスイッチもセンターコンソールスイッチも使いやすい。エアバッグを標準装備する。

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フルカラー7インチTFTディスプレイを、左右のアナログメーターで挟むインストゥルメントパネル。ライディング中、常に目に入る部分であり、車両状況などのインフォメーションも良く伝わってくる。両サイド下に備わるスピーカーの音質も良い。

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フロント周りと同じくボリューム感満点のリアセクション。サイドケースと合わせてデザインされたテールランプはウイングラインをモチーフとされた左右セパレートタイプ。リアトランクの仕様見直しなどで、旧モデルと比べ全長を55mm短縮した。

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トランク、サイドケースどちらも大変使い勝手が良い。普段持ち運ぶ撮影機材もすっぽりと飲み込んでしまった。ラゲッジスペースは合計で110リットルの大容量で、これは2人分の3泊4日の荷物を想定している。

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ドライブシャフトを内蔵した片持ちスイングアーム。左側のみフレームと締結し、右側はスイングアーム保持のみとするピボット軸構造を世界初採用している。剛性力と軽量化を両立させている。

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7速+リバースDCTを搭載。ダイレクトかつ途切れ感のない変速を実現している。ウォーキングスピードモード(微速前後進機能)も使いやすく、駐車時に大変重宝した。

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