掲載日:2022年09月30日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
HONDA REBEL500
現在国内の正規ディーラーでは250、500、1100とラインナップされているホンダ・レブルシリーズ。末弟のレブル250は言わずと知れた大ヒットベストセラーモデルであるし、レブル1100はアフリカツインの強固なエンジンをコンバージョンした長兄に相応しい佇まいを持たされたメガクルーザーだ。
そんな兄弟に挟まれた次男、レブル500は影が薄いと感じられがちだが、実はレブル250と共通というコンパクトで扱いやすいシャシーに、2倍もの最大トルクを誇るパワフルなエンジンを搭載しているという個性の強いパッケージングとなっている。
それに実は世界で販売されているバイクを見渡してみると、意外なほど同様のミドルクラスクルーザーというのを見つけることができないもので、故に既存オーナーがレブル500を選んだ理由というのをイメージすることができる。今回はそんなレブル500のパフォーマンス、使い勝手を探っていきたい。
旧世紀からバイクに乗ってきた私などがレブルという名前を耳にすると、1985年に登場した250cc並列2気筒エンジンを搭載したMC13という、いわゆるオーソドックスなアメリカンクルーザータイプのモデルを思い浮かべてしまうものだが、2017年に復活した現在のレブルは、モダンで新鮮味のあるデザインで纏められ、まったく異なる印象を受ける新時代クルーザーとして登場した。
その際にレブル250と合わせレブル500もラインナップされた。レブル250はいい意味でそのスタイリングからは想像ができないほど扱いやすく、よく走ることもあり、瞬く間にスターダムへと上り詰めた。一方のレブル500はというと、レブル250と比べてしまうと、その陰に隠れてしまっていたことも確かだ。
それには排気量の問題もあると思う。そもそもレブル250/500は、CBR250R/500Rのエンジンを流用する形で開発されたのだが、CBRの場合は日本国内のライセンスレギュレーションに合わせてCBR400Rが用意されたのに対し、レブルは500ccのまま国内で販売されているのだ。その分免許区分による間口が狭くなってしまっていることが、国内での流通台数に影響を及ぼしているのだと考えられる。
ただ、500~700cc程度のいわゆるミドルクラスでのクルーザーモデルというのはなかなか無く、それはレブル500特有のメリットにもなっている。それではレブル500に実際に触れていきたいと思う。
これまでレブルシリーズには250、500、1100とすべてのモデルをテストしてきた経験がある。250はヒットがうなずける扱いやすさとコストパフォーマンスの高さがあるし、1100は大柄でありながらもそれを振り回す楽しさがある。500はバイクメディアにてクルーザーの王者であるハーレーと乗り比べたことがあるのだが、むしろそこでレブル500の魅力を明確に知ることができた。
今回テスト車両に乗り出した際、ハンドリングに違和感があるとすぐに気づいた。後々タイヤを良く見てみると、サーキットで走らせたのかスタントライドをしたのかドラッグレースでも出たのか分からないが、センター部分がドロドロに溶けた後そのカスが固まったものが無数に表面にこびりついていることが分かった。つまりかなりしごかれたタイヤが履かれていたので、ハンドリングに関してはニュートラルなインプレッションが難しい。
なお、空気圧も確認したところ前後2.0指定に対し前1.9、後2.1だった。これを揃えただけでも多少ハンドリングは改善したので、タイヤ管理にはシビアであることを付け加えておく。
レブル500は2020年にマイナーチェンジを受けている。その内容はヘッドライト、ウインカー、テールランプなどの灯火類にLEDを採用。シフトインジケーターの追加やウンカーインジケーターを左右独立点滅とするほか、アシストスリッパ―クラッチの採用や前後サスペンションの最適化など走りの面でもブラッシュアップしている。
元々レブル250と同寸のボディであることもあり、ライディングポジションはとてもコンパクト。排気量は約2倍のエンジン、パワーも大幅に引き上げられているにも関わらず、車重20キロ増で抑えられているので、ビギナーや力に自信のないライダーも許容する。
特筆すべきはエンジンの特性であり、低回転からしっかりとしたトルクがあるため市街地でも扱いやすく、それでいながらもリミッターが作動する高回転までギュンギュン回り、スポーティな走りも楽しむことができる。このキャラクターはバイクに慣れ親しんだエキスパートライダーも魅了することだろう。
先述したように今回のテスト車両はタイヤの状態が良くなかったが、それを差し引いたとしても良くできたモデルであり、これだけのパフォーマンスを持っていながら、税込み新車価格が80万円を下回る設定なのは、とても魅力的に感じた。メインの一台として、サブマシンとしても楽しめるミドルクラスクルーザー、レブル500はベターな選択だと思う。
排気量471cc並列2気筒エンジンは、ボアストロークを67×66.8mmのスクエアタイプとし、全域に渡りフラットな出力特性を持っている。最高出力46馬力を8500回転で、最大トルク43Nmを6500回転で発生させる。
フロントタイヤサイズは130/90-16と小径ワイドな設定。キャストホイールはブラックアウトされたスポーティなデザインが用いられており、引き締まった印象を受ける足まわりとなっている。オーソドックスなシングルディスクブレーキだが効きは十分。
2020年に行われたマイナーチェンジによって、ヘッドライトをはじめとした灯火類がLED化された。モダンに纏められたスタイリッシュクルーザーに良く似合うだけでなく、旧型と現行モデルを見分けるポイントにもなっている。
ハンドルバーの中央にセットされた液晶メーターパネル。現行モデルではメーター内にシフトインジケーターが備わったほか、ウインカーインジケーターが左右独立点滅するようになっている。細かな部分だが恩恵は大きい。
マイナーチェンジに合わせて、テールライトもLED化され、旧型に比べ丸みを帯びた形状へと変更されている。デザイン的なまとまり感が向上しただけでなく、後続車からの視認性も高められている。
ミッドセットされたサイレンサーからは、ツインエンジン特有の歯切れの良いサウンドが響き渡る。個人的にはシリーズの中でも好みの音質だ。リアタイヤは150/80-16サイズで、フロントタイヤと比べて若干太い設定だ。
ライダーとパッセンジャーがセパレートとされたシート。ライダー側は座面が広く座り心地も良い。シートの脱着には工具が必要となる。なおサドルバッグやリアキャリアなども純正アクセサリーとして用意されている。
リアサスペンションはプリロード調整機構付きのツインショックを採用。マイナーチェンジの際に前後サスペンションにも手が加えられている。ただしストローク量はさほど多くなく、バンピーな路面では突き上げ感があった。
ステップ位置はミッドコントロールとされており、シートに腰を据え、足を自然におろした位置にある。車体を操る際にステップ入力もしやすく印象が良い。ただアフターマーケットではバックステップなども存在している。
ブラックに塗装されたハンドルバーはライダーに向かい緩やかにプルバックされた形状で、自然なライディングポジションをもたらす。幅も広くなく、体格を問わず扱いやすい印象だ。
レブルのデザインで大きなポイントとなっている独特なタンク形状。通常タンク部分は内ももが当たる下方に凹みを持たすのが定石だが、逆に上部をえぐっていることなどに、登場時には違和感を覚えたものだが、今となっては自然に目に映る。
ホンダのスイッチボックスは下がウインカー、その上にホーンボタンというレイアウトになっている。今でも乗り出した際に、間違えてホーンを押してしまう。慣れると思っていたが、なかなか慣れるものではなかった。
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