掲載日:2022年06月01日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
HONDA REBEL250
X世代のバイク乗りとして考えると、レブル250というモデルは1985年に登場したアメリカンクルーザー、レブル250(MC13)を思い浮かべてしまうが、そんな旧時代の話など、あっという間に吹き飛ばす程の大ヒットモデルとなった現行レブル250(MC49)。2017年からの発売なので新型というには少々時間が経ってしまった感も否めないが、何にせよスクーターを除き、現在街中で最も見かけるモーターサイクルと言っても過言ではないだろう。
斬新なスタイリング、足つき性が良く使い勝手の良いクルーザータイプであること、車検制度がなく高速道路にも乗れる250ccクラスということなどの理由があると挙げたとしても、これほどまでに売れるとは誰も思ってもいなかったことだろう。しかし実際に乗ることで、レブル250が持つ魅力、素晴らしさ、完成度が分かってくる。今回はベストセラーモデル、レブル250を吟味する。
現行のレブル250が登場した時、その独特なデザインに一瞬躊躇したことを今でも覚えている。燃料タンク形状やフレームワークによるものなのか、それともフロントのファットタイヤなのか、一概にコレと言えないのだが、これまでのクルーザーモデルとは違った印象を受けたのだ。そんな私のもやもやをよそに、レブル250は年齢の若いライダーをはじめ、幅広い層に支持され、一日に何台ものレブル250を街中で見かけるようになった。
その後バイク雑誌にて数種のクルーザーモデルを比較する企画を行った際に、レブル250と同じく2017年に登場したレブル500に試乗、ライバルとして用意したモデルよりも取り回しが楽でキビキビと走ることができ、何よりも気軽に乗れるキャラクターは、レブル兄弟、特にレブル250が突出していた。このことから直感的に良いバイクだと伝わってきたのだった。
違和感があったデザインも、ストリートに溢れかえればすぐに見慣れた。登場から3年が経った2020年にはマイナーチェンジが施された。その内容は、灯火類がすべてLED化、ギアポジションインジケーターを追加、アシストスリッパ―クラッチの装備などで、さらにヘッドライトカウルや、フォークブーツカバーなどを装備するレブル250Sエディションというグレードが追加されている。
久しぶりに触れることになったレブル250。車体に跨ると690mmと低く抑えられたシートから、フレンドリーさが伝わってくる。エンジンを始動して出発する。昔のレブル250は並列2気筒エンジンだったのに対し、現在のレブル250はシングルエンジンを採用している。そもそも信頼性の高いCBR250Rに搭載されているシングルエンジンをベースにしているので頑丈であるだろうし、低回転時の粘り、スロットルワークに対するピックアップの良さも折り紙付きだ。
フロントタイヤサイズが130/90-16と小径でワイドな設定であるため、入力に対してクイックでありながらも重厚感があるハンドリングだ。このサイズのタイヤの場合、ハンドルをこじるような乗り方になる場合もあるのだが、小排気量で軽量なことや、フロントフォークとそれを支持するフレームのネック部分の設定が絶妙なバランスなので、直進安定性をスポイルせずに、軽快なハンドリングを実現している。込み入った路地裏を走り回る際にも、ワインディングロードを楽しむ場合でも気持ちよいのである。
それとマイナーチェンジ後から装備されているギアポジションインジケーターはやはり便利であるし、スリッパ―クラッチも意地悪なシフトダウンを行っても許容してくれるので安心できる。
何処をどう走らせてみても欠点を見つけることができなかった。はっきり言ってこんなバイクは珍しい。楽しくて持ち良く、そして便利なのである。タンデムテストも行ったが、ライダー、パッセンジャーともに上々の印象であり、250ccクラスなので高速道路を使ったツーリングにも出かけることができる。友人らとの遊び、カップルデートのツール、そして日常の足として、バイクに求めるすべてをカバーしてくれる。
テスト車両は10000キロを超す走行距離のものだったが、まったくへたりを感じさせることはなかった(しっかり整備されている広報車なので当たり前ではあるが)。ちゃんとメンテナンスが施されている個体であれば、ユーズドの購入を視野に入れても良いだろう。テスト走行中、一日あたり5台以上のレブル250に遭遇したので、相当な台数が流通していることが分かる。もう少し時間が経てば相場もこなれてくるはずだ。
数日間レブル250を乗り回し自分で所有し楽しむことも良いバイクだと考えたものだが、オトーサン的な立場で語らせてもらうならば「もし子どもがバイクの免許を取得したら、あてがっても良い」と思える一台に仕上がっていると思えた。毎日乗り回すだけでなく、カスタムやメンテナンス、そしてツーリングなどバイクライフをトータルで学べる一台であるし、もし親子で一台ずつ所有すれば、一緒に出掛けるのも楽しいことだろう。
レブル250は免許を取得して最初の一台としても、年を重ねて行き最後のバイクとしてもお薦めすることができる一台となっているのだ。