掲載日:2018年03月30日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川健太郎 写真/KTM 動画編集/山家健一 衣装協力/HYOD
第一印象はスリムでコンパクト、そしてシートやハンドルなど車体が全体的に低い感じがする。690DUKEをはじめとするDUKEシリーズは、やや腰高のモタード的なデザインだったが、790では雰囲気がより普通のロードモデル的になっている。
跨ってみるとシートは低めで沈み込む前後サスペンションにより足着きも良い。そして、シートが広くフラットで前後に動きやすく、走行シーンによってライディングポジションを自由に変えられるのがいい。前に座れば足着きはさらに良くなるし、やや腰を引けば広い座面でツーリングでも快適。ハングオフなどのスポーツライディングでも決まる。ハンドル切れ角も左右66度と大きく、極低速から粘るエンジンのおかげでUターンなどもしやすい。
肝心のエンジンだが、これがとても気持ちいい。スムーズで鼓動感があって振動は少ない、という理想的なフィーリングだ。75度位相クランクと435度(360度+75度)の不等間隔爆発の組み合わせによる鼓動感はVツインのLC8に近い感じ。振動の少ないスムースな回転はエンジンの上下に備えられたデュアルバランサーのおかげだ。低中速がトルクフルで街乗りの速度でもストレスなく走れるし、その気になれば10,000回転過ぎまで引っ張ることもできる。690と比べてもよりトルクフルで高回転も伸びる、この出力特性こそ並列2気筒ならではのメリットだ。
ハンドリングは素直で、軽快だが一方で安定感もある。低く搭載されたエンジンや1,475mmと長めのホイールベースに加え、エンジンを剛性メンバーとして利用した新設計のフレームも効いていると思う。どこかしなやかで、パッと乗ってすぐに馴染めるハンドリングだ。
前後140/150mmの豊富なストローク量を持つWP製前後サスペンションは荒れた路面でもよく追従してくれ、今回初採用というJ1製(刻印はKTM)のブレーキもコントロールしやすく、マキシス製のOEタイヤも特に不安ははなかった。足まわりに関してはややコストダウンも見え隠れするが、今回の790がスタンダードモデルの位置付けと考えれば過不足ないレベルと言えるだろう。
さらに790で注目したいのは多彩な電子制御だ。公道ではライドモードをいろいろと切り換えて試してみたが、コーナーの先に突然現れる砂だまりなどに対してもトラクションコトロールやコーナリングABSのおかげで落ち着いて対処できるし、急な下りのシフトダウンではエンブレを適正化してくれるMSRやスリッパ―クラッチのおかげで後輪ロックの恐怖から解放された。さらに新設計のクイックシフターはダウン側にも機能するため、走行中はほとんどクラッチレスでいけるなど、ライディングに関わる操作が飛躍的に楽になっている。これはセーフティーの面から見ても歓迎すべき進化と思う。
サーキットでも試乗してみたが、ピーク105psのエンジンは出力的にも扱いやすく、むしろ開け開けで積極的にスポーツライディングを楽しめると思う。ペースを上げていくとサスペンションに落ち着きが欲しくなるが、タイヤも含めてこのモデルがあくまでもストリートをメインステージとして設定していることが分かる。さらに本格的な走りを望むなら、カスタムするか、いずれ出てくるかもしれない「R」バージョンに期待したい。690からの流れを考えればKTMとしても当然考えていると思う。
「SCALPEL(外科用メス)」の異名をとる790DUKEだが、意外なほど乗りやすくとっつきやすいモデルだった。逆に言えば、コントローラブルだからこそライダーの腕次第では過激なパフォーマンスも可能ということ。新世代のDUKEは初期型にしてかなりの完成度を持ったモデルだと思う。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!