
掲載日:2017年06月28日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/小松 男 写真/真弓悟史(走行写真)、バイクブロス・マガジンズ編集部、KTM
ヘッドライトやテールライトをLED化し、インストルメントパネルもフルカラーTFT液晶にするなど、総じて軽量化されているイメージを持つ新型390デュークなのだが、スペックシートを確認すると、乾燥重量が従来モデルよりも10kg増えた、149kgとなっている。かろうじて150kgを下回っているものの、軽量を売りのひとつとしていた390デュークであるために、その点が走りにどう影響してくるのか気になるところでもある。
今回ユーロ4に対応しているということもあり、これまでボディ下部に設置されていたサイレンサーが車体サイドに移設され、その変更によって内部構造が変えられたためなのだろうか。その点も含めていよいよ試乗してみたいと思う。
跨ってみるとライディングポジションは、それほど大きく変わっているという印象を受けないものの、着座位置は割と高めだ。ただ手を前に伸ばした際に触れるハンドル位置が従来モデルよりも若干低くなっているように感じ、従来モデルで感じた窮屈感は薄れている。毎度スモールデュークに乗る際に頭をよぎるのだが、このシャシーで125から390までのバリエーションを持っているのは凄いことだと思う。
イグニッションを回しエンジンをスタートさせる。新しいエキゾーストシステムからはシングルエンジン特有の歯切れの良いサウンドが聞こえてくる。走り出してすぐに気づくのは、最高出力や最大トルクに関しては従来モデルと同様のスペックでありながらも、非常にスムーズで扱いやすい特性になっているということだ。熟成されたエンジンというのもあるだろうが、大きくは新採用のライドバイワイヤによってエンジンマネジメントを制御しているからだと思う。スパルタンさで言えば薄れたとも表現できるが、どの回転域でも意のままにパフォーマンスを発揮するため、むしろエンジン自体は強くなっているように感じるのだ。
新型390デュークは「ザ・コーナー・ロケット」というキャッチコピーが付けられている。実際に走らせてみるとそのコピーライトが偽りないことが分かる。新設計の前後サスペンションはしっかりと路面の状況を伝えてくるのだが、フロントフォークのトラベル量が下げられたのも寄与している。従来モデルがやや足長モデルのように加減速時に前後方向に掛かるピッチングを楽しみながら走らせるのに対し、新型ではよりスポーツライクな味付けとなっているのだ。ただ今回試乗を行ったのがサーキットだったということもあり、このセッティングが市街地でどう影響してくるかは、ライダーの走り方や好みに左右されると思う。
ライディングの資質に関して上々の印象を受けつつも、やはり所有欲を満たしてくれる満足度的な観点で言えば、TFTフルカラー液晶ディスプレイの存在が大きい。ライディング中、常に目に入ってくる部分でもあるし、ハンドル左のスイッチボックスに備わる十字ボタンも直感的に扱いやすい。このディスプレイだけでこのクラスのバイクもずいぶんと未来的になったものだと感じるのだ。しかしスマートフォンなどのデバイスが一般的に普及した今、近い将来そういったガジェットをUSB接続させるといったモデルも出てくるのかもしれない。
コンパクトなシャシーにパワフルなエンジン、そして煮詰められた足まわりが奢られ、その進化は誰もが納得するものであると思う。同クラスのライバルモデルの多くはツインエンジンを採用していることもあり、シングルエンジンのピックアップの鋭い特性は、少し走らせただけでもワクワクさせてくれるものだ。さらにオプションのパワーパーツを使ってカスタマイズすれば、極上のスポーツツーリングモデルにも、サーキットレーサーにも仕立てることができる。遊びの幅は無限大。エキサイティングなバイクライフを提供し続けるKTMの魅力が詰まったモデルである。
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