

掲載日:2014年07月31日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真/岡 拓 動画/倉田 昌幸 衣装協力/HYOD
第一印象で口をついて出た言葉は「小さいな~」だった。ニーゴー(250cc)とまでは言わないが、400ccクラスの車格だ。シルエットは最近流行りのストリートファイター風だが、どこか優しさを感じさせるのがホンダらしい。
跨ってみると、これまたスリムで足着きもすこぶる良い。海外のファイター達と比べると、足まわりがソフトセッティングであることも影響しているのだろう。体重を預けるとスッと前後サスペンションが沈み込むので安心感がある。ハンドルも適度な高さで、かつ非常に近いところにあるため、ライディングポジションも楽だ。車体前後が切り落とされ、センターにぎゅっとマスが凝縮されたボディは、一見すると過激な感じもするが、実は万人向けに乗りやすく作られていることが、跨っただけで分かる。
乗り味もジェントルだ。ストリートを普通に流していると、ちょっとパワフルな“ヨンヒャク”といったところ。回転数を上げなければサウンドも低く唸っているだけだが、調子が変わるのが6,000rpm辺りから。スロットルを開けると直4ならではの伸びやかな加速感とともに、胸のすくような高周波サウンドを楽しめる。ついつい、常套句的な表現になってしまうが、それほど正統的な直4のフィーリングを再現したエンジンと思う。2気筒には鼓動感、3気筒にはシルキーさと、エンジンレイアウトそれぞれに独特の魅力があるものだが、直4はなんと言ってもサウンドだ。あの絞り出すような“金切り声”にはいつも身震いしてしまう。
そして、直4のもうひとつの魅力が上昇感。どこまでも上りつめていくような、クリアで繊細なパワーフィールがまた気持ちいい。こうした直4のいいところをCB650Fはすべて持っている。加えて、排気量のさじ加減もうまい。スーパースポーツなどの典型的な高回転型エンジンのネックである極低速でのトルクの細さを、排気量を50cc分上乗せすることで補っている。低速で粘るエンジンはハンドル切れ角の大きさと相まって、Uターンなどもしやすい。
フレームはエンジンのキャラクターに合わせて、しなやかさを生かしたスチール製を採用しているが、これは正解だと思う。乗り味の柔らかさは硬すぎないフレームに加え、しなやかな正立フォークによる部分も大きいと思う。ただ、リアショックについてはもう少しグレード感が欲しかった。リンクを持たないカンチレバータイプのシングルショックなのだが、シンプルな構造はいいとして、ギャップでの吸収性はいまひとつ。攻めたい人は社外品にリプレイスという手もあるだろう。ブレーキも必要十分なレベル。ABS標準装備なので、路面が悪いところでも安心感は高い。
特別パワフルでもないし、最新メカも電子制御もない。でも、だからこそ誰が乗っても扱いやすい。そして伝家の宝刀である“直4”フィールはピカイチだ。その意味で、ホンダの原点『CB』の名に恥じない出来だと思う。ちょっとした街乗りからショートツーリングまで幅広く使える。普段の足として通勤にも使いながら、週末は半日コースで近場のワインディングまでひとっ走りしてくる。そんな気楽な使い方ができる大型バイクだ。
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