モトグッツィ V7 Special
モトグッツィ V7 Special

モトグッツィ V7 Special – 伝統の縦置きVツインが全面刷新

掲載日:2013年02月21日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  写真・動画/MOTOCOM  衣装協力/HYOD

モトグッツィ V7 Specialの試乗インプレッション

モトグッツィ V7 Specialの画像

味わいを残しつつ
走りはよりパワフルに

V7スペシャルは、その場にあるだけでホッとするバイクだ。バイクが「鉄の馬」と呼ばれた頃の雰囲気を色濃く残すクラシカルなスタイリングや、何の電子制御も持たないシンプルな機構のエンジンと車体。古き良き時代を思い起こさせる縦置きVツインの穏やかな鼓動などが逆に新鮮。いろいろなストレスを抱える現代人の心を癒してくれる、そんな存在だ。

一番変わったのはエンジンだ。参考までにスペックで比較してみると、従来型のV7が40.1ps/6,250rpmだったのに対し、新型は50ps/6,200rpmと大幅にパワーアップしている。特に低中速のトルクが厚くなっていて、クルマを置き去りにする俊敏なスタートダッシュも可能。高回転域の伸びもスムーズになり、従来型では辛かった高速道路の追い越しも楽になった。OHV2バルブという古式ゆかしいレイアウトではあるが、フィーリングはより軽やかに、現代的にリファインされているのだ。

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ハンドリングは素直。見た目がクラシカルなので一見クセのある乗り味を想像してしまうが、走り出してみると極めて普通で、乗りやすいバイク。フロント18インチホイールということで、高速の切り返しなどではやや慣性力の大きさを感じるが、逆に言えばそれが安心感につながっている。倒し込みでもキレ味鋭い最近のスポーツモデルとは違い、穏やかに舵角がついてくるので、コーナリングでもゆったりしたリズムで楽しめる。さらに比較的タイトなワインディングが楽しい。スロットルワークだけで自在に切り返していく、そんなシーンが得意だし、走っていて気持ち良い。正立フォークとツインショックというコンベンショナルな前後サスペンションと、ほど良いしなり感を持ったスチールフレームの組み合わせは、高い次元ではないところで操る楽しさを教えてくれる良さがある。ブレーキもガツンと効くものではなく、逆にそれが全体としてウェルバランス。もちろん、油圧ディスク+4ピストンなので、必要十分な制動力も持ち合わせている。エンジンが強化されて従来型よりパワフルな走りが楽しめるのだが、車体は基本的に従来どおりなので無理な突っ込みなどは禁物だ。ギャップのある路面ではバイクの挙動が激しく出る場面もあった。そこはネオクラシックらしく、まったりとエンジンの脈動に揺られ、バイクとの対話を楽しむ走り方が楽しいし、このバイクに合っていると思う。

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軽くコンパクトな車体は市街地でも有利だ。縦置きクランク特有のトルクリアクション(スロットルオンで右に車体が傾ぐ動き)も、走り出してしまえば気にならないレベル。足着きの良さが渋滞路でも安心感を与えてくれる。従来モデルは夏に試乗したこともあり、渋滞路では空冷の弱みである熱ダレ傾向が出たときもあったが、こと新型に関してはそのあたりもだいぶ改善されているようだ。また、従来型は大きく左右に張り出したヘッドカバーにヒザが当たることがあったが、新型ではエンジンがコンパクト化され、ニーグリップ時の違和感もなくなった。ライダーの体格にもよるが、大事な要素だと思う。

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Uターンもやりやすい。ハンドル切れ角が大きく、加えてホイールベースも短いため小回りが利く。グラッとしても、車重が軽く足着きもいいので、心理的不安も少ない。極低速で粘りのあるエンジンも有利。ただし、乾式単板クラッチ特有のクセは相変わらずなので、発進だけは丁寧につないでやりたいところだ。

往年の味わいを残しつつ、より信頼性が高まったエンジンと、バイクらしいオーソドックスな車体を持った現代のクラシック。V7は気負いなく普通に乗れるイタリアンバイクである。はじめての外車に選びたい人はもちろん、スペックに踊らされることに疲れたベテランライダーにこそ、是非おすすめしたいモデルだ。

モトグッツィ V7 Specialの詳細写真は次ページにて

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