ヤマハ YZF-R1
ヤマハ YZF-R1

ヤマハ YZF-R1 – レースの世界でも活躍するヤマハ最速マシン

掲載日:2013年01月10日 試乗インプレ・レビュー    

取材・撮影・文/淺倉 恵介

ヤマハ YZF-R1の試乗インプレッション

ヤマハ YZF-R1の画像

強烈なレスポンスを誇るパワーフィーリングと
「ハンドリングのヤマハ」の名に恥じないコーナリング

走り出して最初に感じたのは、異常なまでに鋭いレスポンス。スロットルをわずかに開いただけで、瞬時にエンジンが反応して回転を上げる。これは今までに体験したことのないレベルだ。反応が鋭いのは良いが、やや敏感過ぎる印象。不用意にスロットルを開閉するとギクシャクしてしまい、少々辟易した。低速域が粘るエンジン特性ではないので、ついつい低いギアで走ってしまうということも原因のひとつではある。それにしても神経質ではないかと感じたのだが、これを解消する方法もしっかりと備えられている。YZF-R1 には D-MODE という出力選択システムが装備されている。基準となる STD モード、低中速域のレスポンスをさらに高めたAモード、穏やかで扱いやすいBモードの3種類が選択可能なのだが、Bモードに設定すると気を抜いていても走りがギクシャクしたりしない。ただ、トレードオフとしてレスポンスは大幅に落ちるので、YZF-R1 本来のキレ味抜群のレスポンスを味わいたいのなら、STD かAモードを選びたい。スロットル操作に注力する必要はあるが、うまくキマった時の快感はかなりのものだ。V4 エンジンやツインにも似た、クロスプレーン型クランクシャフト独特の排気音を聞きながらの強烈な加速はクセになる。軽量2ストロークマシンの瞬発力とも、大排気量大重量車の押し出されるような加速感とも違う、YZF-R1 だけの瞬間移動的な加速、これは一度味わう価値がある。

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これは個人的な感想で、全ての乗り手に当てはまるものではないが、国内の峠道にありがちなRの小さなコーナーが続くような道では、Bモードで走った方がラクで速い。STD のレスポンスを活かせるのはよほどの高速ワインディングかサーキットだろう。数日間、数 100 キロにわたって試乗を行い、一般道、ワインディング、高速道路など様々なシチュエーションを走ったが、いつのまにかBモードを使っていることが増えたのは事実である。ただ、この YZF-R1 にはトラクションコントロールシステムが装備されている。スロットルが敏感だと、コーナリング中のドン付きを恐れて開けられない。だが、トラクションコントロールを信じて、とにかく開け開けでいけば持ち前のパワーを活かせるのだろう。ちなみに、このトラクションコントロールシステムはかなり頻繁に介入するセッティングのようだ。コーナリング中だけでなく、ストレートでも無闇にスロットルを開けると、作動インジケーターが光っていた。これは基本的な設定らしく、介入度合いを弱めに調整しても、比較的頻繁に介入してくるようだった。それにしても、我々は意識せずにリアタイヤをスリップさせて走っているのだと気付かされる。もちろん、トラクションコントロールが介入したからといって、昔のバイクのスピードリミッターのように車速が急に落ちたりはしない、トラクションコントロールが働いていることはインジケーターで報されはするが、走りの感覚に違和感はない。

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また、多くの人が気になっているところが、国内仕様の最高出力についてだろう。国内仕様の最高出力は 145PS、フルパワー仕様では 182PS を発揮するのだから、数字だけを見れば、かなりデチューンされているという印象を受ける。自分自身 200PS クラスのライバル車に乗った経験もあるし、パワーが落とされた YZF-R1 の国内仕様は一体どの程度の走りをみせてくれるのか? と、興味半分、疑問半分でスロットルを全開にしてみた。正直なところ、感想もナニもない。あっという間にスピードリミッターが効いてしまうので、パワーを味わうヒマもなかった…。加速力は圧倒的で、その上それらしい迫力も感じない。スロットルを開けると瞬間移動的に高速域に達してしまうのだ。YZF-R1 のフルパワーが本領を発揮するのは、さらに上の速度域であることは間違いない。リミッターの範囲内では、車体のスタビリティはビクともしないし、世界は穏やかなままなのだ。是非とも、サーキットでリミッター無しの状態で走ってみたい。フルパワー仕様との出力差について語るのはそれからだ。そして、これだけは言っておきたい、国内仕様は充分以上に速い。

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そして運動性はかなりのものだ。コーナーではニュートラルに1次旋回し、スロットルを開け始めて2次旋回に入ると、猛然と車体が向きを変える。慣れないうちはインに寄り過ぎてしまったほどだ。基本的にニュートラルなハンドリングで、ラインの自由度も高い。ただ、荷重設定は高めで、フロントを押し付けるような走りをしないと車体が落ち着かない。個人的には、もっとフロントフォークの伸び側ダンピングを利かせたセッティングを試してみたいところだ。リアサスペンションは、実にしなやかに動いてくれるので何の不満も感じなかった。圧側ダンパーは高速/低速調整可能の2ウェイタイプだし、油圧式のプリロードアジャスターも装備しているのだが、触ろうとする気すら起きなかった。車体剛性は高く、一般道レベルでは「走る、曲がる、止まる」全ての面で不安は微塵も無い。さすが、長年かけて完成させてきたデルタボックスフレームの最新作だ。ハードブレーキングでフロントフォークが、ダイブすることもない。また、このフロントブレーキは絶品だ。引きずりなどが解消出来ず、姿を消しつつある6ピストンキャリパーだが、4パッド化によって作動性を向上。レバー操作に対して実にリニアに制動力が立ち上がるし、絶対制動力の高さは言うまでもない。扱いやすく強力な、教科書通りの優秀なブレーキシステムだ。

取り回し性も良好、なにしろ車重が軽い。足着きは良いとは言えないが、同クラスのライバルと比較しても平均的なもの。重心が高いので、身体が小柄な人は停止時に不安に感じるかもしれないが、車重が軽いのでどうにでもなるだろう。ライディングポジションについては、ハンドルがかなり低いので覚悟が必要。街乗りやロングツーリング向きではない。またスクリーンが低いので、高速走行時に風圧を避けようとすれば、かなり上体を折り畳む必要がある。加えるのなら、エンジンの発熱量は大きく、ノロノロ走っていると水温は簡単に 100 度を超え、センターアップマフラーの宿命でシートも熱くなる。YZF-R1 は純粋なスポーツバイクだから、コンフォート面が弱いのは仕方ないこと。そして日常使用に目をつぶってもなお、YZF-R1 には乗る価値がある。そもそもリッター・スーパースポーツで得られるものは何だ? というと意見はいろいろあるだろうが、個人的には非日常を手に入れるためのものだと考えている。快適性を求めるなら4輪にでも乗っていればいい。気の遠くなるような加速力、ナイフの刃先のような鋭いコーナリング、瞬間の快感を味わうための道具として YZF-R1 は最良のチョイスのひとつなのだ。

ヤマハ YZF-R1の詳細写真は次ページにて

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