

掲載日:2009年02月05日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
跨る前にブリットの周囲を一回りしてみた。どの角度から見ても美しい。ヴィンテージバイクそのもののスタイルなのに新車の輝き…こんなバイクがいまだに手に入ることが素直に喜ばしい。優美なラインを描くゴールドラインの入ったフューエルタンク、ヘッドライトに埋め込まれたメーター類、現行車をこのスタイルにカスタムしたいというユーザーはいくらでもいるだろう。シングルやツインエンジンを愛する私だが、くっきりとクビレが強調され直立する単気筒エンジンに、現行シングルエンジンにはない優美さを感じてしまった。50~60年代の英国車に採用されていた腰下のケース形状も腰上の美しさを引き立てるポイントだ。
ではブリットに跨ってみよう。シート下にスプリングを配したサドルシートを採用しているため、カタログ上のシート高は760mmと高めだが足つきは思いのほかいい。シート先端が詰まった形状をしており、身長178cmの私だとひざは余裕を持って曲がる。両足ともベタ着きだ。ハンドルポジションは肩幅より少し広く、高さは腰のあたりにある。フットポジションは前でも後ろでもなく、自然に足を下ろしたところにステップがあった。古いバイクの写真集で見たような、背筋をピンと伸ばして走るスタイルだ。キック始動のみのバイクなので、エンジン始動はやや緊張したものの、心配する必要はない。キックのタイミングはYAMAHA「SR400」のように圧縮上死点を探り、タイミングを合わせ踏みおろすだけ。キックペダルは力を入れなくても軽々と下りるので、初心者でも苦労することはないだろう。
走りはじめて戸惑うのはやはり右シフトと左ブレーキだが、これもすぐに慣れることができた。ただ、左のブレーキペダルはじわじわ踏まないと、急ブレーキになってしまうので注意が必要。リアブレーキ主体で停まるバイクということに注意して欲しい。古い設計の350ccエンジンは非常に非力だ。ちょっとした追い越しでもしっかりとアクセルを回す必要があり、現代のバイクのような加速感はない。しっかりとシフトチェンジをしてやらないとギアが空回りすることもあり、せわしない運転には向いていないだろう。しかし、そんなことはまったく気にならない。50~60kmくらいでのんびり流すのが気持ちいいのだ。長いサイレンサーから吐き出される排気音と、エンジンから響くタペットなどの機械音を楽しみながら、自分のペースで走り回った。他のバイクや車に追い抜かれようがお構いなし。このバイクで走っていれば、キップを切られることも少ないだろう。長時間乗ると車両の微振動から少し疲れを感じるが、心地よい疲れなので気にならない。エンジンフィーリングはホンダのスーパーカブや、耕運機のような感じだ。のんびりとしたバイブレーションが心を穏やかにしてくれる。かつてのバイク乗りはこんなエンジンフィーリングを味わいながら、ツーリングを楽しんでいたのか…ヴィンテージバイクの魅力を少し垣間見ることができた気がする。
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