カワサキ ZRX1200DAEG
カワサキ ZRX1200DAEG
遊べるネイキッド。ZRXのDNAは不変だ

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
写真/磯部孝夫
取材協力/カワサキモータースジャパン

カワサキ ZRX1200DAEG – ZRXのDNAは不変

掲載日:2009年02月02日 試乗インプレ・レビュー    

選べるネイキッド
ZRXのDNAは不変だ

「本当はサーキットではなく、峠などでテストしてもらいたかったんですけどね」開発チームの人にそう言われながらDAEGに跨る。

カワサキがジャパニーズ・スタンダード・ネイキッドとして、日本の道を究める為に、日本専用車として作り上げた車両。だからこそ、日本の峠道で真価を味わって欲しいと思う気持ちは良く分かる。車体のディメンション、サスペンションの設定からタイヤのチョイスまで、全てが日本の峠を走った時に気持ちよく走れるように照準を合わせたパッケージングだからだ。筑波サーキットのようなカントがついた高ミュー路面より、箱根なんかで走らせたら、より奥深いハンドリングを楽しめるのだろう。それは又の機会に譲るとして、今回は、サーキットでDAEGの走行性能をできる限り感じ取ってみよう。

アイドリング状態のDAEGは最新の騒音規制に対応し排気音が小さくなったというより、メカニカルノイズが小さくなったように感じた。もともとZRXにはゴロゴロとした特有のメカノイズがあったが、それがDAEGは随分小さくなったようだ。

シフトペダルを踏み込みゆっくり発進しコースインする。今回は普段レプリカで楽しんでいる筑波とは少々勝手が違う。柔らかなシートに体を預け、コーナーに進入する。フルブレーキでは、ややフォークが入り込みすぎる感じがする。ブレーキを引きずったままコーナークリップを目指すレプリカライクな操作より、ブレーキは頑張りすぎず、リリースを終えたあと寝かし込むような、峠に近いライディングの方が合うようだ。このような設定は、峠で走り合わせた柔らかな足周りの影響だろう。

カワサキ ZRX1200DAEGの画像

クリップに向かって寝かし込んでいくと、ステップのバンクセンサーが早々と接地するが、車体は安定したまま旋回を続ける。スインングアームの下側にサブフレームを持つZRXシリーズは構造的にセンタースタンドが付かない。その為、比較自由な排気レイアウトを歴代で採用してきた。限界バンク角はネイキッドバイクとしては高く、バンクセンサーが接地するのは峠など一般道で限界を知らせる為のもの。まだまだ寝かし込んでいける余力はあるのだ。

そのままアクセルを開けていくと、ツーリングタイヤを装着しているDAEGのリアタイヤはエンジンのトルクに負けてユラユラとヨレ始め、限界を伝えてくる。ツーリングタイヤではDAEGのコーナーリングを支えるにはやや力不足のようだ。スプリング、ダンパー共に柔らかい設定のノーマルからもっと硬め、ハイグリップタイヤを履けば十分サーキットで遊べるポテンシャルがあることは容易に想像できる。

ペータルディスクを採用した新型ブレーキは、6ポッドから4ポッドに変更されたが、ブレーキフィーリングはむしろ向上している。

今回採用された6速ミッションは、ワイドレンジでトルクを発生させるエンジンと組み合わされ、コーナーでのギヤのつながりはずいぶん良くなった。ギヤ比が全く合わないようなコーナーは無く、気持ちよくつながる。やはり6速化の恩恵は大きい。

ストレートで感じるスムーズな回転上昇はZRXからDAEGになって一番体感し易い部分だろう。キャブレターで規制値に収めていたZRXに比べ、排気デバイスとインジェクションを採用したDAEGは明らかに力強く、スムーズに車体を加速させる。反面、低中速向けに設定が変わったカムの効果は感じられなかった。カムの変更で得られた低中速よりのキャラクターは排ガス規制などの対応で相殺してしまったのだろうか。結果的には高回転の伸びが良くなった部分が強調されている。

カワサキ ZRX1200DAEGの画像

どの速度のコーナーリングでも、サスが柔らかく動くが、車体のねじれなど不快な動きは感じられなかった。先代から引き継いだフレームと新作スイングアームのバランスで性能は向上しているようだ。落ち着いたハンドリングとも合わさり、不安感の少ないフレンドリーなキャラクターに仕上がったDAEG。日本専用と割り切った効果は十分に感じることができた。

DAEGの成り立ちは、ZRXの基本骨格と設計思想をベースに、日本専用設計としての新たな境地を見出すために、大きくリファインしたところにある。詳細に観察していくと、ありとあらゆる部分がリファインされていることが分かってくる。

アウトラインは前モデルを踏襲し、より大胆に昇華させたスタイリングだ。その中で、特に目につくのは、エッジを効かせたディティールと、シェイプされて鋭さを増したテール周りである。全体的に、アグレッシブなイメージを与えられており「日本専用」という目標に向けた作り手の割り切りを象徴しているかのようだ。

カワサキ ZRX1200DAEGの画像

そして、メカニズムを見ていくと、そのことがもっとはっきりしてくる。インジェクション以外は、とくに目新しいメカニズムを採用しているわけではなく、やはりZRX1200Rのあらゆる箇所を徹底的にリファインして基本性能を磨き上げている。変更箇所を挙げればきりがないが、性能的な特徴は、向上した低中速の走行性能と、6mm減らしたトレール量によって得られた軽快な運動性能にあると思われる。つまり、DAEGが目指したのはZRX1200Rよりも、トルクフルかつ軽快な仕様なのだ。

DAEGについて前モデルとの比較で語ろうとすると、変更されたディティールばかりに目がいってしまうが、目指す性能を、基本設計を大きく変えずに獲得できたことはむしろ重要なことだ。ZRX1200Rが、もともとカワサキが目指す日本専用設計車に近い完成度を持っていたからこそ、DAEGが各部のリファインの積み重ねで目指すべき性能を獲得できた、そう考えるべきだろう。

カワサキ ZRX1200DAEGの詳細は次ページにて

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