BMW Motorrad R1200S
BMW Motorrad R1200S

BMW Motorrad R1200S – 珍しい前傾姿勢でワインディングが楽しい

掲載日:2008年03月27日 試乗インプレ・レビュー    

BMWの歴史でキーとなった「S」
これに値する最強のスペック

今回紹介するR1200Sは、BMW伝統の空冷水平対向2気筒エンジン、通称「ボクサーツイン」の中で、2008年3月時点で最強のパフォーマンスを持ったモデルだ。これまでBMWのモデルラインアップは、同じエンジンをそのままの仕様でさまざまなモデルに採用することが多かった。しかし、R1200Sのエンジンは外見こそ他のボクサーと同じながら、エンジン内部をチューンし、他モデルより高いパワーを与えている。また、一世代前のR1150シリーズより1割以上軽くなったボクサーエンジンを搭載する現行Rシリーズの中でも、さらに1割近い軽量化が図られているのもR1200Sが特別な存在であることの証だ。昔からBMWは、車名にキャラクターを示すアルファベットを付けている。R1200Sの“S”は“Sport”の略で、まさしくポーツモデルの証。歴代のモデルで“S”を冠したモデルには「R69S」や「R90S」などがあるが、その時代時代でBMWの最高のスペックが与えられたモデルとして知られている。R1200Sもこの「S」を冠するにふさわしい性能が与えられているのは言うまでもない。BMWの優秀なツーリングバイクも好きだが、スポーツバイクも大好きな僕にとって、R1200Sの試乗はとても楽しみだった。

BMW Motorrad R1200S 特徴

12psアップと200kgを切る車重に
スポーツライドを意識したつくり

BMW Motorrad R1200S 写真R1200Sのフィロソフィーは他のボクサーツインのモデルと共通だ。公道を安全に楽しく走れるバイクとして、高い信頼性を持つ車体や、テレレバーをはじめとした革新的な足回りなど、他のモデルと共通する仕様は多い。しかしその一方でスポーツモデルの“S”として、他のボクサーツイン搭載モデルとはいろいろな面で違いが見られる。具体的には、R1200S専用のカムやコンロッドの採用、エンジンの圧縮比を12.0から12.5にアップ、バルブリフト量拡大による燃料供給量の増大などだ。さらに、高回転に備えてバルブスプリングを強化するといったチューニングも施されている。また、車体周りも見直され、トラス構造のフレームに補強が施され、シートレールはアルミ製の別体式とされた。こうしたシャシーの強化と軽量化によって、装備重量で213kg、乾燥重量なら200kgを切るという、国産スポーツバイク並みのスペックを実現している。

車体はBMWの全モデルの中でもひときわコンパクトで、各部がスポーツモデルらしい構成となっているのもR1200Sの特徴。シート高は830mmとかなり高めで、広くて大きい形状と相まって、積極的に体重移動をしてコーナリングすることを意識させられる。タンデムシートはあるもののグラブバーはなく、明らかに一人で楽しむことを前提としているようだ。サスペンションも見た目は他のボクサーツインと同じでも、よりハードなブレーキングに対応するセッティングが施され、オプションで前後オーリンズ製のショックユニットを装備した仕様も用意されている。また、ABSを装備するハイライン仕様車では、サーキットを走るときなどのために、ABSをカットするボタンが付いている。ボクサーツインという前提こそ同じであれ、他のモデルとは趣を異にしている。

BMW伝統の空冷水平対向2気筒エンジン。R1200Sのものは圧縮比、バルブリフト量、専用エキパイなどのチューンにより、11.4kg-m/6800rpmとトルクこそ他のボクサーより細いものの、最大出力は122ps/8250rpmと12馬力もアップしている。

Rシリーズ最高峰のボクサーエンジン

BMW伝統の空冷水平対向2気筒エンジン。R1200Sのものは圧縮比、バルブリフト量、専用エキパイなどのチューンにより、11.4kg-m/6800rpmとトルクこそ他のボクサーより細いものの、最大出力は122ps/8250rpmと12馬力もアップしている。

独自のフロントサスペンション「テレレバー」。フォークと車体を結ぶAアームによってブレーキング時のノーズダイブが減る。Sではさらにその傾向を強めるセッティングとなっている。ハイライン仕様車は前後ショックがオーリンズ製になる。

他に類をみないテレレバーサス

独自のフロントサスペンション「テレレバー」。フォークと車体を結ぶAアームによってブレーキング時のノーズダイブが減る。Sではさらにその傾向を強めるセッティングとなっている。ハイライン仕様車は前後ショックがオーリンズ製になる。

先代R1100Sから受け継ぐ、テールカウル内にサイレンサーを収める形式のハイアップマフラー。テールライトはLED式で、それ以外の灯火類を簡素化。サーキット走行時には簡単に取り外すことができる。

スタイリッシュなマフラー

先代R1100Sから受け継ぐ、テールカウル内にサイレンサーを収める形式のハイアップマフラー。テールライトはLED式で、それ以外の灯火類を簡素化。サーキット走行時には簡単に取り外すことができる。

スポーツモデルらしくシートは830mmと高め。体重移動による入力をしやすくするためフラットな形状になっている。そのため足付き性はあまりよくない。テールカウルには一応タンデムシートが付く。

やや高めのシート

スポーツモデルらしくシートは830mmと高め。体重移動による入力をしやすくするためフラットな形状になっている。そのため足付き性はあまりよくない。テールカウルには一応タンデムシートが付く。

BMW Motorrad R1200S 試乗インプレッション

BMWには珍しい前傾姿勢
ワインディングが楽しい

BMW Motorrad R1200S 写真BMWというバイクに対するイメージは、なんと言っても“旅バイク”だろう。ラインアップにいろいろなモデルがあり、それぞれキャラクターを持っているが、その根底にあるのはやはりツーリングだった。近年のモデルにはそれが当てはまらないモデルが増えつつある。R1200Sもまたがった瞬間に他の伝統的なモデルとの明らかな違いが感じられた。830mmというシート高は小柄な僕ではつま先を付けるのが精一杯。左右の足を踏み変えるためには、車体を揺らさないように細心の注意を払って腰をずらす必要がある。そのうえ、ハンドル位置はシートから決して遠くないが、手を伸ばすとタンクに伏せた状態を強いられるほど位置は低い。高速道路ではスクリーンを超えた風がモロにヘルメットに当たり、他のモデルのようなウインドプロテクションはないといっていいほど。国産4気筒スーパースポーツにまたがっているような感じなのである。また、車体の軽さもスポーツモデルそのもので、取り回ではスペック以上の軽さを感じた。

BMW Motorrad R1200S 写真このスパルタンなキャラクターは走りはじめても同じだった。スロットルへの反応は明らかに他のボクサーツインと違い、シャープで大胆。3000回転以下のトルク感が薄く、発進時や極低速ではエンストにとても気を遣う。しかし、ひとたびスピードに乗れば、ライダーマインドを掻き立てる加速を見せてくれる。ほとんどのシチュエーションで力不足を感じることはなく、明らかに他のRシリーズとは一線を画す。ワインディングではその印象がさらに強くなる。バイクの軽さもあってか、コーナーの進入ではバイクを寝かせようとする意思にとても素早くシャープに反応する。なおかつ、テレレバーのフロントサスペンションがもたらす安心感は絶大。コーナーの入り口に多い減速帯やギャップ上で、強くブレーキをかけながら進入しても車体が揺すられることはない。コーナーリングで一番不安なのがブレーキングというライダーも多いが、テレレバーの恩恵はこのときにもっとも感じられるだろう。抜群の安定感とスポーティなキャラクターのおかげで、ワインディングでは自分のライディングがうまくなったように感じたほどだった。

BMW Motorrad R1200S こんな方にオススメ

ツーリング性能は最小限
だからこそ実現したスポーツ性

スポーツモデルとわかっていてもBMWのブランドイメージから、「とは言ってもツーリングもできるでしょ?」と考えたくなるところ。しかし、R1200Sにツーリングでの快適さは期待しない方がいい。もちろん、国産スーパースポーツでツーリングするライダーもいるのだから、R1200Sでもツーリングは不可能ではない。しかし、かなりのタフネスさをライダーに求めてくるだろう。やはり、R1200Sはスポーツバイクと割り切って向き合うことをオススメする。その代わり、ワインディングやサーキットでの走りを楽しみたいという向きには最高のボクサーエンジン搭載モデルだと自信を持って言える。もちろん、BMWとしての高い信頼性や、安全に配慮した設計思想など、ライダーに優しい部分も持ち合わせている。これからスポーツライディングを楽しんでみたいというライダーにもぜひオススメしたい。

BMW Motorrad R1200S 総合評価

心地よい疲労感を残してくれた
初めてのBMWスポーツモデル

以前、先代のR1100Sに何度か乗ったことがある。そのときの印象は、他のモデルよりややスポーツ寄りのポジションというものだった。しかし、R1100Sは他のスーパースポーツに比べると大柄で重く、いい意味でも悪い意味でもBMWらしいと感じたものだ。スポーツモデルであっても、国産スーパースポーツのような尖がったものではなく、あえてダルな部分を残して幅広いライダーの使い勝手を考慮していたと思う。R1200Sに代替わりして以降、さまざまな機会で実車を見ることはあっても、走らせてみたことはなかった。どこかで「とはいってもBMWのスポーツモデルでしょ」とうがった見方をしていたからだ。しかし、今回の試乗で、ワインディングの楽しさだけではなく、心地よい疲れを感じたのである。この感覚はスーパースポーツとまったく同じだ。これまで乗ったBMWではそんな経験をしたことがなかったが、このとき初めてR1200Sは真のスーパースポーツだと確信した。

SPECIFICATIONS - BMW Motorrad R 1200 S

BMW Motorrad R1200S 写真

価格(消費税込み) =
184万8,000円(Active Line)

空冷水平対向2気筒エンジンを搭載するRシリーズの中で、ひときわ高いパフォーマンスを持つロードスポーツモデル。専用にチューンされたエンジンや足回り、ポジションなどが、スポーツライディングに特化したキャラクターを主張している。

■エンジン = 空油冷4ストロー水平対向2気筒 1,169cc
■最高出力 = 122PS/8,250rpm
■最大トルク = 112N・m/6,800rpm

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