BMW Motorrad R1200RT
BMW Motorrad R1200RT

BMW Motorrad R1200RT – 至れり尽くせりの豪華装備

掲載日:2008年02月28日 試乗インプレ・レビュー    

30年続くBMW RTシリーズ
その最新モデルの真価はいかに

ツーリングバイクの代名詞ともいえるBMW。その中でもロングツーリングを志向するライダーのために用意されたのが今回紹介するR1200RTだ。BMW Motorradの各モデルは、R、K、Gなどのシリーズの後に排気量、そして最後にRTなどのタイプを表す記号を持っている。ツアラーファミリーのRT、ST、GT、LTの2文字目はいずれもTour(ツアー)を意味しているが、RTの「R」はそこにドイツ語で旅行を意味する「Reisen」を加えたもの。このモデル名が示唆するとおり、R1200RTはよりロングレンジのツーリングを楽しむためのモデルとなっている。RTの名を冠するモデルは1978年のR100RTが初代で、その後K100やK75シリーズにもRTモデルがラインアップされた。4バルブの新世代ボクサーエンジンを積むR1100シリーズの1モデルとして、R1100RTが。2001年には排気量を1150ccに拡大したR1150RTにビッグマイナーチェンジ。そして、1200ccとなった新世代の“EVO”エンジンを搭載するR1200シリーズのRTとして生まれたのがこのR1200RTだ。このように、R100RTの誕生から30年以上に渡って脈々と受け継がれている「RT」というモデル。いずれもロングレンジのツーリングを快適に楽しめるよう、ライダーに負担の少ないポジションや大型のフェアリングとスクリーン、そして大容量のラゲッジスペースを備えている。しかし、こうした長距離ツアラーを、決して安楽なだけの乗り物にしないところがBMWの哲学。高回転型のボクサーエンジンや、テレレバーやパラレバーといったテクノロジーで、バイクとしての積極的な走りの楽しみを忘れていないのがR1200RTなのである。

BMW Motorrad R1200RT 特徴

大柄なフェアリングが目立つものの
ライダーを守る機能が盛りだくさん

BMW Motorrad R1200RT 写真前から見るとはっきりとR1200RTそれとわかる大柄なフェアリングを持つのが最大の特徴。大きなヘッドライトを中心に、上方には縦に長く伸びる大きなスクリーン、左右にはミラーをビルドインするウインカー、そして下にはしっかりBMWのアイデンティティを示すキドニーグリルを持った、威風堂々とした佇まいを見せる。この圧倒的なボリュームはライダー側から見ても同じで、ブラックアウトされたコンソールパネルが、左のミラーから右のミラーまで、まるでクルマのコンソールパネルのように広がっている。この大柄なフロントセクションこそ、RTを長距離ツアラーたらしめているところで、どんな速度域でもライダーを完璧に走行風から守り、快適で安心感のある空間を与えてくれる。また、リアセクションも、幅広なコンビネーションランプや、車体の一部のようにデザインされたパニアケースが、フロントセクションに負けず劣らず、抜き去るものに強烈な存在感を与えてくれる。

バイクとしての基本コンポーネントは、低重心の水平対向2気筒エンジンに、Aアームとフォークで構成されるテレレバーサスペンションと、シャフトドライブのパラレバーを組み合わせるという、現行Rシリーズ共通のもの。ここにぐっと手前に引いたハンドルを組み合わせることで、ライダーの上半身が起きるポジションとなっている。シートはライダーとパッセンジャーで独立しており、たっぷりとしたボリュームと適度なコシと柔らかさがあって、パッセンジャーも快適に過ごすことができる。また、装備面でも快適なツーリングを実現してくれるアイテムを満載しているのもRTならでは。グリップヒーターや燃費などを表示してくれるオンボードコンピューターは標準装備で、189,000円高のプレミアムラインでは、スイッチひとつでプリロードと減衰力を調整できるESA(電子調整式サスペンション)や、設定した速度を自動的に保ってくれるクルーズコントロール、シートヒーターなどを装備。さらに、滑りやすい路面でリヤタイヤの空転を防ぐASC(オートマチックスタビリティコントロール)や、FM/AMラジオ・CDが楽しめるオーディオなどをオプションで追加できる。こう並べていくとまるでクルマのようであり、バイクにはこんな快適さはいらない、という向きも。見方を変えれば、快適にすることでライダーの体力や知力を長く保たせることができ、その結果、より遠くに行くことができるわけだ。そう考えると、これらの快適装備はまさに長距離ツーリングの強力な武器となのである。

パニアケースを標準装備。ボディ同色に塗装された完全防水仕様。片方で32リットルの容量があり、シート後方のキャリアにオプションのトップケースも取り付けると大容量のラゲッジスペースが得られる。

大容量パニアケースを標準装備

パニアケースを標準装備。ボディ同色に塗装された完全防水仕様。片方で32リットルの容量があり、シート後方のキャリアにオプションのトップケースも取り付けると大容量のラゲッジスペースが得られる。

フェアリングにビルドインされたミラー。ハンドル下を通して写し出された後方の視界を、ハンドル上から見る独特の構造。肩越しより幅の狭い脇の下越しに後方視界を得るため、左右のミラー幅を狭くしながら広い視界が得られる。

フェアリング一体構造のミラー

フェアリングにビルドインされたミラー。ハンドル下を通して写し出された後方の視界を、ハンドル上から見る独特の構造。肩越しより幅の狭い脇の下越しに後方視界を得るため、左右のミラー幅を狭くしながら広い視界が得られる。

試乗車には左パネルにオーディオのスイッチが並ぶ。オプションでFM/AMラジオとCDチェンジャーを取り付けることができ、その周波数やトラック番号などは、メーター中央にあるボードコンピューターのディスプレイに表示される。

FM/AMラジオ+CDも楽しめる

試乗車には左パネルにオーディオのスイッチが並ぶ。オプションでFM/AMラジオとCDチェンジャーを取り付けることができ、その周波数やトラック番号などは、メーター中央にあるボードコンピューターのディスプレイに表示される。

ヘッドライト直上から伸びやかに広がるスクリーンは電動可変式。左グリップ脇のスイッチを操作することで角度と高さを変えられる。一番寝た状態でも風はほとんど当たらないが、真っすぐに立てると高速でも静かな環境が得られる。

走行中でも角度が変えられる電動スクリーン

ヘッドライト直上から伸びやかに広がるスクリーンは電動可変式。左グリップ脇のスイッチを操作することで角度と高さを変えられる。一番寝た状態でも風はほとんど当たらないが、真っすぐに立てると高速でも静かな環境が得られる。

BMW Motorrad R1200RT 試乗インプレッション

スクリーンやカウル、サス…
至れり尽くせりの豪華装備

BMW Motorrad R1200RT 写真実車を前にしての第一印象は、やはりデカイの一言に尽きる。特にミラーからヘッドライトを抜けてミラーへつながるボリュームは、威圧感すら感じられる。このボリュームはしっかり重さにつながっていて、サイドスタンドによる停車姿勢から車体を起こそうとしたり、バイクを押し引きしたりすると、満タン時の装備重量281kgという重さをズシリと感じる。しかし、跨ってみると、とっつきにくささえあった重量感をあまり感じなくなるのも事実。780mmと800mmの2段階に調整できるシートを下げたせいもあって、小柄な私でもしっかり足の指で地面をつかむことができ、バイクがグラグラして怖いということはない。手前に引かれたハンドルによって極低速でも明確に自分の行きたい方向をバイクに伝ええられるし、体が直立するほど体が起きるので足でしっかりバイクをホールドすることもできる。その上、ボクサーツインによって得られる低い重心が、止まっているときや極低速でもバイクを安定させる成分として働いてくれる。その結果、小柄な私でさえ少し慣れてしまえばあまり大きさを意識することなくライディングできるようになった。ただやはり、幹線道路に出るまでの細い路地では、巨体とエンストに気を遣ってしまう。というのも、1000cc超の2気筒エンジンというとハーレーのような粘りのあるトルクをイメージしてしまうが、BMWのボクサーツインは明らかに高回転型で、アイドリングから2000回転あたりは、丁寧にクラッチを使わないとエンジンが止まりそうになる。マルチシリンダーエンジンに慣れているライダーは注意が必要だ。

BMW Motorrad R1200RT 写真走り出してまず気が付いたのは、風がほとんど当たらないこと。小柄な私の場合、ヘルメットの上半分に風が当たるくらいで、体にはまったくといっていいほど風を感じない。さらに、電動スクリーンを上げるとヘルメット周辺の風切音もなくなってしまう。そうすると不思議なもので、どんなスピードであってもそのスピード感がなくなってしまうのだ。またR1200RTはオプションでオーディを装備することができ、コンソールの両端にしっかりツイーターが独立したスピーカーを備えている。オーディオのスイッチを入れてFMラジオを聴いてみることに。街中を走る分にはちゃんと音楽を楽しむことができ、高速でも道路交通情報をしっかり聞き取ることができた。これは、フェアリングとスクリーンによる静かな環境があるからこそ楽しめるというものだろう。こうした、ライダー感じるネガな要素を少しでも排する姿勢は、テレレバーというフロントサスの効果でも感じられる。速度感がないためついつい飛ばしてしまうワインディングでは、勢いコーナーで強いブレーキをかけることになるのだが、テレレバーのおかげでフロントが沈むことなく、ただただ、コーナーに合わせてバイクを寝かせばバイクが曲がっていくのだ。実は以前にもこのBMWのテレレバーサスペンションを持つモデルに乗ったことがあるが、最初は普段テレスコピックサスペンションの馴れているためか面食らうが、慣れてくるとスイーッ、スイーッと何事もなくコーナーを抜けていく感覚が、気持ちよくさえなってくる。こうした、R1200RTの至れり尽くせりの装備は、走行中のライダーに負担となるあらゆる物を排することで、より遠くに行きたい、というライダーの欲求を実現しようとするものだということを改めて感じさせられた。

BMW Motorrad R1200RT こんな方にオススメ

快適なツーリングを求める方へ
タンデム側の快適さも素晴らしい

どんなシチュエーションでも使えることより、スポーツライディング、ツーリング、オフロードと、使う目的に合わせてより特化したラインアップを充実させるBMW Motorrad。R1200RTもそんな中でロングツーリング志向のユーザーの欲しい装備をすべて備えているといっても過言ではない。特に恋人やパートナーとタンデムでツーリングを楽しみたいという向きにR1200RTは最適なモデルだといえよう。それは、ライディングポジションやフェアリングによる防風性能、そして数々の装備による快適さというだけではない。それらに加えてボクサーエンジンとRTというキャラクターの組み合わせが、どことなくゆったりとしたリズムを与えてくれ、心地よい時間を過ごさせてくれる。これをライダーだけが独り占めしておくにはもったいない。ぜひとも、恋人やパートナーとタンデムで日本の果てまで走りにいくことをお勧めしたい。

BMW Motorrad R1200RT 総合評価

ゆったりとした時間を過ごせる
極上のロングレンジツアラー

昨秋に同じBMWのツーリングモデルK1200GTに試乗した際に、同じロングレンジツアラーであるR1200RTと比べたらどうなのだろうという興味が沸いてきた。それだけに、今回の試乗はとても楽しみにしていたのである。K1200GTが並列4気筒エンジンを積んで生まれ変わったときに、それまでのRSの派生モデルとしてではなく一からツアラーとして作られたため、キャラクターとしてかなりRTに近くなった。その一方、R1150RTのときには装備面でK1200GTに少し見劣りしていたRTは、R1200RTになってGTと変わらない充実した装備が持てるようになった。そうすると、あとはバイクとしてのキャラクターの違いで選ぶことになるわけだ。今回R1200RTを試乗して感じたのは、ボクサーツインエンジンが奏でるサウンドが、まるで地方航空路線を結ぶターボプロップ機のエンジン音に聞こえたこと。低回転ではシリンダーが動く鼓動とバタバタという音が、まるで滑走路上を動き出したような感じで、走り出すとあまり音色が変わらない感じも飛行機的。BMWが航空機エンジンのメーカーだったということを思い出させてくれる。ジェット機のようなエネルギッシュさを秘めたエンジンのK1200GTに対して、R1200RTのプロペラ機的なのどかさが、ライダーにゆっくりとした時間を与えてくれるような気がした。また、個人的にはR1200RTはオーディオが付くこと、そして私が初めて知ったBMWが近未来的なミラー一体型のフェアリングを持つK100RSで、その憧れ!?のビルドインミラーを持つR1200RTにちょっぴり傾きかけたのも事実。私にとってのロングツアラーは、積極的に楽しいK1200GTと、ゆったりとした時間を過ごせるR1200RT、さて、どちらにするか、さらに悩みは深まってしまった。

SPECIFICATIONS - BMW Motorrad R 1200 RT

BMW Motorrad R1200RT 写真

価格(消費税込み) =
224万9,500円(Hi Line)

空冷水平対向2気筒エンジンを搭載するRシリーズのツーリングモデル。大柄なフェアリングと大容量のパニアケース、シートヒーターやクルーズコントロール、オーディオなどの装備で、ソロ、タンデムを問わず快適にロングツーリングを楽しめる。

■エンジン = 空油冷4ストロー水平対向2気筒 1,169cc
■最高出力 = 110PS/7,500rpm
■最大トルク = 115N・m/6,000rpm

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