スズキ バンディット1200S
スズキ バンディット1200S

スズキ バンディット1200S – 秀逸なフィーリングに名残惜しさを感じる

掲載日:2007年03月29日 試乗インプレ・レビュー    

スズキ バンディット1200Sの試乗インプレッション

スズキ バンディット1200Sの画像

思い出深いSUZUKIの油冷エンジン
秀逸なフィーリングに名残惜しさを感じる

ボクはオートバイに17年も乗っているが、いつでもどこでも乗るのが専門であり、あまりメカニズムのことに詳しくない。だから、油冷エンジンの仕組みがどのようになっているか詳しく頭の中でイメージすることができない。が、しかし、ボクがオートバイの免許を取るよりも前から20年以上も製造されてきたエンジンが間もなく生産中止になり、これで最後となってしまうという現実は寂しい思いであり、いま目の前にある油冷エンジンに愛おしさみたいなものを感じているのは確かだ。 このエンジンで想い出すのは、1995年に登場したGSF1200。当時、BIG MACHINE誌の学生アルバイトだったボクは、箱根や伊豆で走行シーンの撮影がある日は、試乗車を現地まで無事に届けるのが最大かつ重要な仕事だった。この頃、ホンダは水冷のCB1000SF、ヤマハは空冷のXJR1200、そしてスズキがGSX-R1100ベースのエンジンを搭載したGSF1200を発売したばかりで、カワサキはZRX1100(翌96年に登場)をまだ出してなかった頃だ。連日の撮影/取材で、いろいろなモデルに乗る機会があったが、CBにもXJRにも優っていたGSF1200の図太く豪快な、凶暴とさえいえる低速トルクにビックリしたのを覚えている。

スズキ バンディット1200Sの画像

そんな油冷エンジンを搭載する「BANDIT1200」は、最後のモデルに相応しく堂々たる車格を誇っている。今回試乗するSはハーフカウルをまとっているもののエンジンは剥き出し。4本のエキパイが美しく絡み合い、これこそが機能美というのだろうか、見とれてしまう。イグニッションを入れると、タコメーターの針が振り切るところまでいちど動いた。油冷エンジンが目覚める瞬間だ。当時、凶暴とも思えた強烈なトルクを発揮するエンジンは、熟成を重ねてきたせいだろうか、モデルが持つキャラクターの方向修正なのか、それとも厳しい排ガス規制のせいなのか、いずれにせよ乗り手に優しく扱いやすいエンジンに生まれ変わっている。荒々しさは削ぎ落とされ、上質なフィーリングなのだ。もう少し、極低速でドカンとトルクが出る方がボク好みだが、スムーズに吹け上がるエンジンはクセがなく扱いやすい。とは言うものの、昔のように凶暴な出力特性ではなくなっただけで低中速トルクは十分厚い。一般道を走っている分には5,000rpmで十分事足りてしまうほどだ。ちなみに5,500rpmあたりから上で、トルクがギューンっと出てくる。 他社のビッグネイキッドのようにツインサスを採用せずに、リンク式モノショックを装備しているのも特徴のひとつ。モノサスならではの快適な乗り味が体感できる。Sはハーフカウルのおかげで高速巡航もジェントルにこなす。ウインドスクリーンはしっかり高さがあり、ライダーを確実にプロテクト。ハンドリングは落ち着いた感じで、ステアリングに力を加えずバイク任せにしておけば、どんどん曲がっていく。ワインディングでも安全にかつスピーディに走れるから、これなら免許を取ったばかりの人でも恐怖心を持たずに楽しく乗れそうだ。ブレーキはファイナルエディションに限って、ABSを標準装備している。これもお買い得なポイント。ツアラー的なSか、ネイキッドスポーツの模範的なスタンダードか好みは別れそうだけど、カウル付きで3万円違うだけなら、ボクなら迷わずSかな。

油冷エンジン、やっぱり名残惜しい。信号待ちで、アイドリングするエンジンの排気音を聞きながら、タンク上にある「Final Edition」のロゴを指でなぞってみる。またひとつ、良き時代のモノが消えていくんだな。この連載が始まり、油冷エンジン最後のモデルに乗る機会が与えられたことにも感謝したい。

スズキ バンディット1200Sの特徴は次ページにて

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