【Page3】ワン・ジーを計って車両姿勢を決めよう!

掲載日:2010年07月12日 特集記事サス調整術    

記事提供/2010年3月24日発行 月刊ロードライダー 5月号

普通にバイクに乗ったりカスタムを楽しんだりしていて、メジャーでバイク各部の寸法を計測する機会というのは、なかなかあることでもない。でもサスセッティングを行う場合は、この“メジャーで計る”作業は必要不可欠。これで出た数字=1Gなど=が、後を決める。

 
  前後サスが伸び切った状態。リバウンド/トップアウトスプリングが入っている場合はさらに5~10mm伸びるものの、基本的には0G=伸び切りと考えていい。計測はセンタースタンドがあれば簡単だが、サイドスタンドのみのDAEGの場合リフトやジャッキが必要
  車両を直立させて車両の自重で前後サスペンションが沈んだ状態。非常にややこしい話で恐縮だが、メーカーやショップによってはこの状態を1G'(ダッシュ)あるいは空車1Gと呼ぶケースもあり、その場合は下段で紹介している1G'が、1Gあるいは乗車1Gとなる
  直立させた車両にライダーが跨った状態。今回のDAEGの場合は、F:アンダーブラケット下~フロントアクスル中央、R:テールカウルに貼り付けたガムテープ~リヤアクスル中央で計測し、その寸法は0G:500/500mm→1G:475/497mm→1G':465/478mm

 

 

 

 
 

①②サスセッティングを始める前に、最低限の要素として気を遣いたいのが空気圧を含めたタイヤのコンディション。本来の性能を発揮できていないタイヤでは、ベストセッティングを見つけることはできない。③セッティング中はなるべく条件を変えないのがコツ。ガソリンは常に満タンに近い状態にしておきたいし、何日かに渡るセッティングなら乗り手は常に同じ装備で臨みたい。④アジャスターを回す工具は対象物にぴったり合った適正サイズを使うのが基本。右から2番目はオーリンズ、3番目はカワサキ純正のリヤ用イニシャル調整工具だ

 

基準と傾向を知るために
前後サスの寸法を計測

「メジャーを準備して誰かに手伝ってもらって前後サスの寸法を計測する」となると、“面倒クサそう”とか“アマチュアには難しそう”と思うかも知れない。でもサスセッティングを行う上での寸法計測は不可欠で、これをやらずしてベストセッティングにはたどり着けない。では何のために計測するかというと・・・・・・。

 

静止時/ライダー乗車時の車体姿勢と前後ショックの沈み量を“一般的”数値内に収めるためだ。実はサスセッティングは何でもアリの世界ではなく、車両メーカーやショックメーカーが“一般的”と認識している数値があって、例えばストローク量が120~130mmのフロントフォークの場合は、ライダーがシートに跨った状態で30~35%沈むのが一般的。一方のリヤは、同じくライダー乗車状態でアクスル部の寸法を計る(P31にあるように、アクスルから上に垂線を伸ばした好きな位置にガムテープなどでマーキングして計測する)際に、2本ショックならフルストロークの20~30%前後、モノショック車ならフルストロークの15~25%ほど沈むのが一般的(オーリンズのマニュアルには、マシンを空車状態で直立させた際の沈下量が書かれていて、その規定値はフロントが25~35mm、リヤが15~25mm)。

 

と、数字を羅列するといきなり話が難しくなってくるような気がするけれど、ここで大事なのは、ノーマルの寸法がいくつで、変更後の寸法がいくつになるかだ。今回の教材車であるDAEGの場合、カワサキが公表しているホイールトラベル(フロントはストローク量とほぼ同義になるが、リヤはショックのストローク量ではなく、ホイールの移動量)はF:115m/R:122mm。

 

そしてライダー(身長182cm、体重73kgのライター・中村)が跨った場合の実測沈下量は、F:35mm/R:22mm。これを割合に直すとF:30・4%、R:18%で、リヤの沈み量が微妙に少ない気もするけれど、いずれも前述した“一般的”な数値内に収まっている。もっとも、車両メーカーが設計しているのだから、それは当たり前なのだけれど・・・・・・。

 

こういった数字はアマチュアでもプロでもサスセッティングを行う際に大いに参考にしたい、と言うより、そもそもの基準になるのだ。純正=STDショックをいじる場合でもアフターマーケット製に換装する場合でも、基準になるのはSTDの寸法。もちろん、それが絶対で、何が何でも死守しなくてはならないわけじゃない。前述した一般的な数値内に収まってさえいれば、車体姿勢と前後サスの沈み量の設定は乗り手の自由なのだけど、基準がなければ方向性が定まらないし、セッティングに迷ったときの必殺技“STD寸法に戻す”という手法も使えなくなる。

となればSTDの寸法をきちんと把握しておけば、セッティング後の車体姿勢がどうなったか、キャスター角が立ったのか、スイングアームの対地角が増えたのかといったデータまで分かるわけで、当然、そのデータはベストセッティングを見つける上で、大変役に立ってくれる。

 

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