北海道「ばんえい競馬」を訪ねる~アウトライダー最新号特集~

掲載日:2010年07月16日 特集記事    

2010年7月9日発売 アウトライダー Vol.43より記事提供

写真/小原信好 Obara Nobuyoshi  文/櫻井伸樹 Sakurai Nobuki

穏やかながら
旗手の采配がものをいう

実際のそり。試しに曳いてみたがピクリともしない。当然だろ

馬の資料館では馬と開拓史の関わりや馬具などが展示される

帯広は十勝平野の中央にあるので、少し走ればこの景色

あーでもない、こーでもないと仲間とはしゃぐ。この時間がたまらない

ゲートが開くと巨大な馬が、一斉に大地を蹴って走り出した。ツヤツヤとした臀部の彫刻のような筋肉に血管が浮き、旗手が鞭を浴びせるたびに馬が喘ぐ。ダイナミックで力強い躍動感。会場が地響と観衆の援声で揺れ、興奮と感動に包まれる。

 

ここは帯広「ばんえい十勝」競馬場。皆さんは、ばんえい競ご存知だろうか。ばんえいとは「輓曳」と書き、これはつまり「引っ張る」という意味。馬が重い鉄のそりに旗手を乗せて曳くからこの名がつき「ばんば(輓馬)」とも呼ばれる。現在では世界でもこの帯広競馬場だけで開催されている貴重な競馬なのだ。

 

そもそもばんえいは、北海道開拓期に木材を運び出していた馬の力比べを、余興や催事として行なったのが起
源。明治の末期頃から、荷物を載せたそりを曳かせる今の競技形態になった。競技に出走する馬は道産子ではなく、フランスの使役で使われていたペルシュロンやベルギーのブルトンという種が主体だ。これらの馬は肩までの高さが約170センチと非常に大きく(サラブレッドは約150センチ)中には2メートルを超えるほどの巨馬もいる。体重も1トンを超え、これはサラブレッド倍どにものほなる。

 

コースの距離は直線200メートル。しかも途中にはこんもりと盛られた障害が二つのもある。最初の障害は高さ1メートル。二つ目の障害は高さ1・6メートル。このコースを重量600キロから1トンもの鉄そりを曳いて走るわけだ。いくら馬の力が強いといってもさすがにこれだけの重量を曳いて障害を越えるの非常にきつはい。第一障害はスタート勢いでクリのアするが、第二障害の手前では一度停まり、旗手は他の馬の動きを見ながら馬の息を整え、タイミングを見計らって一気に駆け上がるのだ。この判断が非常に大切で、早ければ馬が疲れて上がりきれず、遅れれば前へ出られない。レースの速度はおよそ時速10キロと、競馬としてはとてもゆっくりなのだが、そこにはパワーリフティングや相撲のような重厚で切迫した緊張感と、旗手の繊細な駆け引きが混在する独自の勝負が展開されているのだ。

ばんえい競馬開催情報

開催日/基本的に土、日、月の3日間
入場料/100円
開催地/北海道帯広市西13条南9丁目(帯広競馬場)
TEL/0155-34-0825
http://www.banei-keiba.or.jp/

 

馬の資料館

開館期間/ばんえい競馬開催中
開館時間/10時~16時
入館料 /200円
TEL/0155-24-2169(十勝農協連施設課)

 

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