EICMA(ミラノショー)2017/SHOWA・ブースレポート

掲載日:2018年01月12日 トピックス    

取材協力/SHOWA  取材・写真・文/河野 正士

スーパーバイク世界選手権でジョナサン・レイが駆りタイトルを獲得したカワサキZX-10Rや、AMAモトクロス選手権でRJハンプシャーが駆ったCRF450など、SHOWA製サスペンションを装着したマシンとともに、さまざまな量産車に装着されるSHOWA製サスペンションを展示したEICMAブース。

国産ブランドとして初となる
量産車社向け電子制御サスペンションが完成

11月にイタリア・ミラノで行われた『EICMA2017(エイクマ/ミラノショー)』の中から、気になるブースをじっくりお届け。

今回は日本のサスペンションブランドのSHOWA(ショーワ)。SHOWAは2014年から4年連続でEICMAにブースを構えている。

SHOWAは二輪四輪メーカーがリリースする量産車用サスペンションを開発し、製造&納入するサプライヤーだ。しかしEICMA出展は、そのサプライヤーブランドから高性能サスペンションブランドへの進化を睨んだ活動の一環なのだ。2015年にはMotoGPやスーパーバイク世界選手権で開発した技術を盛り込んだ、一般ユーザーが購入できるスーパースポーツモデル用ハイスペックサスペンション「BFF/バランス・フリー・フロントフォーク」や「BFRC/バランス・フリー・リア・クッション」を発表。2016年にはスーパークロス選手権やモトクロス世界選手権などで実績を積んだモトクロス用スペシャルサスペンション「A-Kit/エー・キット」の市販バージョンをEICMAで発表した。

そして2017年に発表したのはカワサキが「ZX-10R SE」に市販車として採用した、SHOWAが独自に開発した電子制御サスペンション・システム「SHOWA EERA(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment)」だ。

カワサキの2018年モデルとして新たにラインナップされた「ZX-10R SE」。それに、国産サスペンションメーカーとして初となる電子制御サスペンション・システム「SHOWA EERA(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment)」を搭載した前後サスペンションをセット。SHOWAブースには、そのサスペンションが展示されていた。

最大の特徴はストロークセンサーを内蔵すること。「ZX-10R SE」に装着した電子制御フロントフォークの内部構造を解説するために用意された、カットしたフロントフォーク上部に見える黒い筒がストロークセンサー。サスペンションの稼働状況を把握するためにストロークセンサーは不可欠。レースではサスペンション外側に、サスペンションから独立してストロークセンサーが装着される場合が多い。しかし市販車では、繊細なストロークセンサーを外付けすることができない。そのため多くのライバルメーカーは、サスペンションとは別の場所にセンサーを付け、そこの動きからサスペンションの稼働量を計算している。SHOWAはより正確に、そして速くサスペンションの稼働状況を把握するため、サスペンション本体にストロークセンサーを装着したという。

「SHOWA EERA(ショーワ・イーラ)」のもうひとつの特徴は電子制御サスペンション用コントロールユニットも、SHOWAが独自に開発したことだ。その車体の状況やライダーの操作、そのときのサスペンションの状態などをモニターし、その状況に対しサスペンションをどう制御するか。その制御ロジックこそが電子制御サスペンションの核となる。SHOWAは、レースから市販車まで、さまざまなカテゴリーやキャラクターのバイクにおけるサスペンション開発のノウハウを活かし、独自のロジックを構築。「SHOWA EERA」にセットアップしている。

「ZX-10R SE」に装着されたリアクッションのカットモデル。シリンダーボディ下側の黒い筒がストロークセンサー。市販車として「SHOWA EERA」を初めて搭載した「カワサキZX-10R SE」に関しては、そのSHOWA独自の制御技術とノウハウをもとに、ZX-10Rのパフォーマンスや車体キャラクターに合った制御をカワサキとともに造り上げたという。

カワサキZX-10R SEに搭載された「SHOWA EERA」の前後サスペンションは、その基本構造はスーパースポーツ用サスペンションとして開発した「BFF/バランス・フリー・フロントフォーク」や「BFRC/バランス・フリー・リア・クッション」と同じ。そのサスペンションをベースに、電子制御バルブによる減衰力可変機能を追加したものだ。したがって電子制御のシステムがダウンするなどのトラブルが発生した場合でも、ベースとなるBFFサスペンションの性能をキープしたまま走行できるという。

将来的にはステアリングダンパーを含めた統合制御を目指している「SHOWA EERA」。しかしステアリングダンパーにおける電子制御の方向性や制御領域に関しては研究段階だという。今後はセンシング技術にくわえ、センシングポイントも変化するだろうとのこと。

また現在開発中の、オフロード用EERAシステムを搭載したサスペンションを「ホンダCRF1000Lアフリカツイン」に装着。車体に跨がり、サスペンションを動かしながら、変化するセッティングを感じることができる体感コーナーも人気だった。

こちらは2016年のEICMAで発表したモトクロッサー用のスペシャルサスペンション「A-Kit」。2017年12月から欧州での発売を開始した。

南米などで展開されれる150ccモデルに採用されているSFF(セパレート・ファンクション・フロントフォーク/写真左)は、スプリング機能とダンパー機能をフォーク片側に集約することで構造の簡素化とコスト低減を狙ったもの。グロムなどに採用されているSSIF(ショーワ・スマート・インバーテッド・フロントフォーク/写真右側)は、正立フォークの生産ラインで生産できる倒立フォークだ。

ホンダCBR250RRなどに採用されているSSCF(シングル・サイド・カートリッジ・フロントフォーク)。

ハーレーダビッドソンの新型ビッグツインエンジン/ミルウォーキー8搭載の車両から装着されているSDBV(ショーワ・デュアル・ベンディング・バルブ)フロントフォーク。新しくなったソフテイル・シリーズにもこのフォークが採用されている。また新型ソフテイル用の、フレーム後端にセットする新しいリアサスペンションも、ハーレーとともに共同開発した。フレーム後端に、リアサスペンションを横倒し状態で装着することから分離加圧タイプのサスペンションを採用している。

BPF(ビッグ・ピストン・フロントフォーク)。ピストンをスライドパイプに直接摺動させることにより、一般的なカートリッジタイプと比較してピストン面積を約4倍に拡大。ダンパー性能を大幅に向上させると同時に、ピストンの面圧を下げ、コントロール性も向上している。

スーパースポーツ用サスペンションとして開発したBFF(バランス・フリー・フロントフォーク)やBFRC(バランス・フリー・リア・クッション)。

スズキRM-Z450に装着された、モトクロッサーとして初めて採用されたBFRC(バランス・フリー・リア・クッション)と、ホンダCRF450に採用されたツインチャンバー・フロントフォーク。

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