掲載日:2018年05月23日 トピックス
取材・文/池田大二郎 バイクブロス編集部
記事提供/バイクブロス編集部
※この記事は『バイクブロス2018』に掲載された内容を再編集したものです
二輪車新聞という業界紙をご存知だろうか? 二輪の業界紙で週一発刊。様々な情報はもちろん節目毎に新車出荷台数が発表される業界紙。とくに年始には年間ランキングが排気量毎に掲載され、そこで二輪業界の興廃が見て取れる。
さて、シーズンがはじまった今、そのデータを元に2016年~2017年をデータで見て振り返るため、2018年に発表された2017年新車出荷ランキングを見てみよう。
その前に、私見ではあるが筆者の見方はこうだ。「126cc~249ccまでをひとくくりに見ない」こと。そもそも126cc~200cc未満と、249ccを主体とした「ニーゴー」マシンは明らかにその用途が異なるからだ。前者は通勤通学などコミューター的な用途がメインになり、後者はツーリングなどの用途が主である。
よってココを「軽二輪」として一緒にカウントすること事体に違和感を覚えている。敢えてここでは201cc以上のみで比較し「真のニーゴー」マシンにクローズアップしてみたい。私見的二―ゴーランクにみる数字の裏側だ。
※車種やシリーズ合算のカウント方法は、二輪車新聞の内容に沿っています
128.5%増。最近の国内産業ではなかなか聞くことのない数字だろう。そもそも訪日外国人需要や輸出企業の数字なら慣れている値だが、この数字が「国内バイク250ccクラス新車販売実績」となればなおさらだ。
250ccクラスは実は昨今にない活況ぶりとなっていた。背景には、昨年秋に実施となった新排ガス規制が黒幕となっている。喜ぶことのできない前年比大幅台数増は約10年に一度の負の追い風が吹いたとも言える。
まず全体実績から確認する。前年比128.5%が累計実績だ。【2017年新登場モデル+現行ラインナップの累計台数】この時点で2万2,738台となり前年累計台数比76.8%。つまりは128.5%増の中身は、新型モデルと現行モデルの台数に加え、生産終了となったロングセラー・バイクへの需要が重なったことがその台数の正体といえる。ちなみに生産終了モデルの2017年最終出荷台数が、1万5,275台で全体の40.2%となっている。【新型+現行車】:【生産終了】モデル比が【59.8% :40.2%】という驚愕の傾向があった。
【2017年201cc以上の累計販売数にみる、新登場モデル:現行ラインナップ車:生産終了モデルの比率】
また、2016-2017年に主に前年と比べて大幅に販売数が増加したバイクは以下の通りだった。これもデータのひとつとして示しておきたい。
・ホンダ VTR/F 前年比254.6%増
・ヤマハ WR250R/X 前年比122.3%増
・ヤマハ セロー250 前年比128.7%増
・カワサキ エストレヤ/SE 前年比134.8増
数字を見ると分かるように、生産終了バイクの大半が台数を大幅に伸ばしたのだ。しっかりと「駆け込み需要」が発生していた。つまり2017年は、バイクラインナップが総入れ替えに近しい状況となり、新型も生産終了モデルもどちらも売れていたのだ。
約10年前にもこれに近い事態があった。そう。ゼファー・シリーズが生産終了し最終型が発売になった年だ。この年も同様の事態が起こる。当時は排ガス規制強化によるフューエルインジェクション化の仕様変更があり、生産と販売、開発費のバランスが合わずラインナップが激減したのだ。ゼファー、ZRX、バリオスなど覚えているライダーも多いはず。
そして生産を維持したラインナップは、それらの条件をユーザーへの価格転嫁という荒技で堅持。教習車でお馴染みのCB400SFが所謂乗り出し価格では100万円前後となったのもあの時だった。
今回排ガス規制という10年前と同じ展開で、実はしっかり発生していた「駆け込み需要」。前回は入れ替わる新車ラインナップが今のようになく、車種が減る一方だったあの頃とは異なるのが唯一の救いだ。2008年にニンジャ250Rなどの登場もあったが、ラインナップ減を埋めるまでには至らず、2009年は全排気量合算で前年比27%減の38万台となり、バイク全盛期から9割減のニュースが飛び交った。
そんなわけで、2017年の250cc「ニーゴークラス」の大幅台数増は2018年の同クラスの大幅台数減の可能性を示唆する厳しい内容といえるのだ。
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