掲載日:2009年12月07日 特集記事 › 日本最長のダートを食む「四国剣山」
2009年8月1日発行 月刊ガルル No.280より記事提供
写真/長谷川徹 文/菅野真司
山が深い、という言葉に合った景色には、なかなか出会えるものではない。この写真を見たときには、少し恐怖感を覚えたほどだ。次のコーナーばかりに視線を移して走っているときには、そんな恐怖感が全くなかったのに。山の中を走らせてもらっている自分、を目の前に突きつけられたようで、何が怖いのかと聞かれれば、やっぱり「四国の山深さ」なのだろう。
90km近くも林道が続くのだから、のんびり走ろう。剣山スーパー林道を走るなら、そんな心の余裕と相反する、ほどよい緊張感が必要だ。
それは、ガソリンを入れておこうとか、いざという時のためにパンク修理の道具を持っておこうとか、飲み物を買っておこうとか、そういうこととは違った次元の緊張感だ。
この写真を見たとき、僕はまだ剣山スーパー林道のど真ん中にいた。カメラマンが大きなデジタル一眼レフの背面液晶表示を拡大して見せてくれたとき、ほどよい緊張感を覚えた。でもそれは、恐怖感とまではいかないものだった。東京に戻って、写真をパソコンのモニターで見たときに初めて、軽い恐怖感を感じた。
オフロードコースや河原、ではなくて、初めて林道を走ったときの緊張感を思い出した。僕に緊張を強いたのは「転んだら、どうしよう」とか「パンクしたら、どうしよう」とか、そういうものではなかった。
自然の中に溶け込むためにはどうすればいいか、それを知らなかったことが不安だったのだ。この写真を見て恐怖感を覚えたとき、まだ自分は自然とうまく付き合えていないんじゃないかと思って、寂しくなった。
あれから何回、林道ツーリングに出かけ、一体何本の林道を走ったのか、数え切れないくらいなのに。
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