取材協力/アジアクロスカントリーラリー日本事務局 取材・文/宮崎 大吾
■大会名称
第19回 アジアクロスカントリーラリー2014
■開催期間
2014年8月9日(タイ パタヤ)~15日(カンボジア プノンペン)
■公認
国際モーターサイクリズム連盟(FIM)、国際自動車連盟(FIA)、タイ王室自動車連盟(RAAT)
■主催
オルティブタイランド、R1ジャパン
■協力
タイ国政府観光庁、パタヤ市、サケオ市、カンボジア政府
■お問い合わせ(電話)
アジアクロスカントリーラリー日本事務局(03-5911-3844)
アジア最大のクロスカントリーラリーである『アジアクロスカントリーラリー』は、自分のバイクで国境を越えることで、他にはかえがたい興奮と冒険気分が味わえる。タイからカンボジアへ踏み入れた瞬間に景観がガラっと変わり、カルチャーショックを受ける選手も少なくない。国境付近はタイへの出稼ぎ労働者が多く、商品を山積みしたリヤカーが行き交う…。そんな冒険の魅力も多分に含む、大会のレポート第2弾をお届けしましょう。
この日はカンボジア第2の都市と呼ばれるバッタンバンへ向かう。SS4の前半は安全上の問題からキャンセル。雨季にも関わらずまったく雨が降っておらず、ハイスピード過ぎて危険という判断だった。そのためSS4は76.36kmという短いスプリントとなった。カンボジアのライダーが地元の強さを見せはじめ、トップはTouch Thach選手。2位にLykhearg Chea選手。3位に池町選手。総合は前田選手がトップを守る。
超ドライでハイスピードな路面だったカンボジア。地平線が見えるほどのストレートで、日本では味わえない高速走行を楽しめるが、所々に大きな穴が点在しているので要注意だ。
総走行距離423.04km、SS5は206.18kmという長さに。途中のPC(サービスポイント)がないため、2輪選手の間では「ガソリン補給をどうするか?」という問題が当初から話題になっていた。これはガソリンを携帯したり、通過する村で売られているガソリンを購入するなどでクリアできた。コースはハイスピード区間だけでなく、荒れた山岳地帯、川渡りもあり、変化の富む内容。雨が降ればスタック必至で4、5時間を覚悟しなければならないようなコースだったが、前述のとおり路面は完全に乾いており、結果としてトップのKoun Phandara選手は2時間17分46秒でゴール。2位にTouch Thach選手、3位に前田選手。池町選手はブレーキキャリパーが破損し、150kmの距離をブレーキ無しの状態で走破するしぶとさを見せたが、順位は大きく下がってしまった。この日はカンボジアの首都、プノンペンまで移動。
写真でもタイとカンボジアの土質の違いは明らか。大会を通して雨が降らなかったものの、SS1、SS2は所々にスタックポイントや深い水たまりがあった。地元のギャラリーがいる所はラインを教えてくれたりと心強い。
ついに最終日を迎えたアジアクロスカントリーラリー2014。通勤でにぎわう朝の都心部をコンボイで移動する。多くの人々の注目を浴びるなか、最後のSS6が始まる。この日は51.02kmという短い設定。高速ながらも途中に細かい分岐があるなど、最後まで気が抜けないコースだ。トップは池町選手、2位にTouch Thach選手、3位には今回がラリー初参戦ながら大健闘の高橋主剛選手がランクイン。ここまで総合トップを保持してきた前田選手は終盤に後輪をバーストさせるトラブルに見舞われ、タイヤが引きちぎれていくなかアクセルを最後まで緩めずになんとかゴール。カンボジアライダーの追撃を許さない意地の走りで見事総合優勝を遂げた。
ラリーはプノンペンのストリートで盛大におこなわれるセレモニーフィニッシュで幕を閉じた。
毎晩グレードの高いホテルに宿泊できるのもこのラリーの特徴。フィニッシュした選手は整備に勤しみ、翌日の走行に備える。選手同士の交流も深まるこの時間帯も、ラリーの魅力のひとつ。
2013年から日本人ライダーのサポートをしてくれているのが、『ハスクバーナ東名横浜』の代表をつとめる大崎氏。もちろんメーカーを問わずヘルプしてくれるので心強い。そしてドライバーの“モンちゃん”との相性もばっちり。
ホテルのバイキングはどこも美味。タイ料理はもちろん、カンボジアはさらに日本人向けの味付けなので、スパイスが苦手な人も大丈夫そうだ。自由時間は街の屋台などに行くのも一興。物価は安く日本円の1/3くらいなので、お腹いっぱい食べられる。
表彰式はホテルとは別の会場が用意され、2輪、4輪のジャンルを超えてお互いにねぎらった。優勝した前田選手には賞金5万バーツ(約15万円)が進呈。それとは別に、FEDERAL TIRES、FLEX、PROPAK、FURUKAWA BATTERYの協賛各社によるステージ賞金が用意され、1位から3位までそれぞれ1万バーツ(約3万円)、5,000バーツ(約1万5,000円)、3,000バーツ(約9,000円)がライダーに贈与された。
(次回レポートに続く)
2014年の2輪参加費用は1,700USドル(大会中の宿泊費、朝晩の食事代、各パーティ代などが含まれる)、バイクやパーツを輸送する船賃が12万円、チームジャパンサポートが3万5,000円(個別ガソリン代も含む)、往復飛行機代や大会前後の宿泊代、海外ラリー適用の保険代約3万5,000円などを合わせて、ざっと50万円ほどで楽しむことができるラリーだ。海外レース、ラリーの中では極めて優れたコストパフォーマンスと言える。
アジアクロスカントリーラリーの特徴でもある毎晩のホテル宿泊。疲れた体を癒してリセットできる快適なホテルは、一度経験したらやめられない魅力。選手用に敷地を解放しているので整備環境も良い。毎晩シャワーを浴びることで、マラリアなどの病気のリスクもなく、食事もバイキング形式でリラックスして楽しむことができる。
ラリーに対して歓迎ムードのなかで走ることは、選手にとっては感動もの。スタート地点はもちろん、村の中では大勢のギャラリーの歓声を浴びることになる。タイもカンボジアも、老若男女問わず親切な人が多く、道に迷ったり、転倒、ガス欠などのトラブルに見舞われたライダーたちが、地元住民の助けを得て生還するエピソードも多い。
総走行距離2,000kmは日本人の感覚で言えば決して短くはなく、走り応えは十分。冒険的な要素を含みつつ、毎晩ホテルに戻ってしっかり休養できるので、イチかバチかの危険性は少ない。2014年は雨が降らなかったので、2輪ライダーにとっては比較的簡単だったと言えるが、2013年のラオスは終止雨に見舞われ過酷だった。走りながら主催者、またはコース設定者の想いを感じるのも、ラリーの魅力だ。
2輪はもちろんのこと、4輪選手との垣根がなくなるのもアジアクロスカントリーラリーの特徴。共に大陸を移動し、国境を超えてゴールを目指していくうちに、固い絆、一体感が生まれてくる。ラリーが競り合いではなく、自分との戦いであることもその理由のひとつだろう。またアジアクロスカントリーラリーの選手は2輪、4輪お互いが尊敬しあうムードもある。4輪で2年連続完走を果たしたタレントのヒロミさんも、普段はバイクに乗るだけあって2輪選手と談笑する場面も多かった。
MOTO部門が発足した2012年の記念すべき初年度優勝者は、国際ラリーストとしても名高い池町佳生選手。2014年とは違い、水深は深く、川渡りには慎重さも求められた。セレモニーフィニッシュはアンコールワットでおこなわれた。
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