AXCR2014 レポート Vol.06 2014年大会参加者が語る “あの夏・ラリーの日々”

掲載日:2015年06月29日 エクストリームラリー    

取材協力/アジアクロスカントリーラリー日本事務局  取材・文/宮崎 大吾

Asia Cross Country Rally 2014 Special Report

■大会名称
第19回 アジアクロスカントリーラリー2014
■開催期間
2014年8月9日(タイ パタヤ)~15日(カンボジア プノンペン)
■公認
国際モーターサイクリズム連盟(FIM)、国際自動車連盟(FIA)、タイ王室自動車連盟(RAAT)
■主催
オルティブタイランド、R1ジャパン
■協力
タイ国政府観光庁、パタヤ市、サケオ市、カンボジア政府
■お問い合わせ(電話)
アジアクロスカントリーラリー日本事務局(03-5911-3844)

2015年大会はタイ・チェンマイを基点とした山岳路をステージとし、トータル2,500kmのコースとなることを発表したアジアクロスカントリーラリー。今回は2014年度大会に参加した、ライダーたちの体験談をご紹介します。灼熱のタイ、カンボジアで繰り広げられたラリーの日々。1人ひとりにドラマがあり、一生忘れられない感動があったのです…。

「一日一日を乗り切る人間力が試される」
鶴山 光太郎

最後にバイクでオフロードを走ったのは20年以上前でした。自分自身でも周りからも無謀と思えるチャレンジでした。

タイラウンドは100m以上続く泥の轍もあって、当然のように僕は転倒し、泥人間になりました。これが20数年間のブランクなのでしょう。体力が落ちているので次の泥の轍でも同じように転倒して悪循環に。ゴール後、ベテランライダーたちに泥の轍をどのように走ったらいいのか聞いてみたところ「ゆっくりだよ! それも相当ね!」との答えでした。「なんだよ、ゆっくりでいいのか…」ひとつ勉強になったタイラウンドでした。

Leg3からは国境を越えてカンボジアラウンド。タイとは違ってフラットダートが続く高速コースです。極端な言い方をすれば、コマ図はタイラウンドではメートル刻みだったのが、カンボジアラウンドではキロ刻みです。村人の声援もあって非常に気分が高揚するステージでした。

SSゴール後、ホテルに向かう途中にアンコールワット遺跡が突然現れ、最高に感動しました。自分のバイクで遺跡の中を走れるなんて、最高の経験をさせて頂きました。

最終日は今回最短のLeg6。SSは70kmほど。しかしここまで蓄積された疲れと、短いSSという事もあって緊張の糸が途切れたのか、僕にとっては一番辛いSSでした。それでもこの日の順位は今回一番良かったのには驚きました。その原因は「迷わなかったから」です。

ラリーは走る技術と同様に、もしかしたらそれ以上に、コマ図を読む力が重要です。速く走れなくてもコマ図をよく読んで、コースと読みがリンクした時はなんともワクワクしました。プノンペンでのフィニッシュゲートでメダルを受け取り、目標の「完走」を達成出来ました。非常に嬉しかったのと、何とも言えない達成感を得ることが出来ました。満身創痍でしたが…。

「ラリーは完走しないと意味が無い」と出発前にある記事で目にしました。まったくその通りだと思いました。1日をなんとか乗り切って翌日に繋げる。それを繰り返していく。人間力が試されます。サポートやライダー同士での助け合いも非常に大きな割合を占めます。初心者の僕が完走出来たのも、そのおかげです。

AXCRは安心して参戦出来る国際ラリーだと思います。その魅力に負けて今年も参戦する事に致しました。行ったことの無い土地に自分の愛車と乗り込む。なんとも楽しみで仕方ありません! 去年学んだ事を糧に、更なるラリーの楽しみを見つけてきたいと思います。

「見知らぬ村や集落で起こることが楽しい思い出になる」
池町 佳生

アジアに足が向いてしまう一番の理由は「コンペティションでありながらアジア特有の大らかさと癒し」みたいな空気が大会全体に流れていて、きっとそれを感じたいからだろう、と昨年改めて思いました。

やはり順位も追いたいので、当然頑張る競技自体も楽しいのだけれど、実は帰国してから印象が残ることは、ミスコースやリエゾン(移動区間)での仲間とのランチや買い食い、スコールの雨宿りなどなど…。見知らぬ土地で、どこなのかもわからない村や集落で起こってることが、楽しい思い出となるのです。

トラブルもその類で、今回自分のマシンはバルブの異常摩耗により、2日目途中のSSスタートでエンジンが再スタートしなくなって、デイリタイヤする羽目になりました。かなりスピードを出しての押しがけでしか始動しなくなってしまい、灼熱の田舎道で途方に暮れていると、住民のお兄さん3人が「どうしたの? なんかトラブル?」という感じで(言葉はわからない)近寄ってきました。

「頼むから押してください。Push,Push!」とお願いしたら、うまくかからない中、何度も何度も一緒にトライしてくれて(距離にしたらおそらく1kmは押してくれたんじゃないかな?)、なんとかエンジン始動成功! お礼を言いたくても言えないし、3人分のお土産は何も無いので、もう使わないロールマップ(彼らにしてみればゴミだったのかもしれないケド)を渡して、「コープンカップ」と言ったら、笑って「行け! 行け!」と手を振ってくれました。

写真右が池町選手(写真左は江連選手)

まあ書き出すと色んな思い出が湧いてきます。タイム設定もそれほど厳しくはなく、毎日夜にはホテルに着きます。時間があればタイマッサージ! 夜は仲間とビール飲んで騒げる。何しろ毎日がとっても楽しい。世界中のクロスカントリーに出てきたけれど、これだけリピートして出ている大会はこのイベントだけです。

とにもかくにも、今年も何とか都合つけて出場するべく準備中です。また一緒にラリーに参加した人が新しい仲間になって、楽しい時間を一緒に過ごせれば嬉しいです。今年の順位は…、まずはフルコースを走ってトラブル無し、ミスコース無しで完走出来ればいい。で、順位もついてくれば最高かな。2015年のアジアクロスカントリーラリーで、また良い思い出を作ることが出来ればと思っています。

「最後まで走りきれたのは地元の人達の応援のおかげ!」
高橋 主剛

2014年、僕は初めてのラリー参戦でした。なぜ参加する事になったかと言うと、エントリーの半年ほど前のある人との出逢いからでした。その人の「バイクがあるなら行きましょう!」という言葉に心を動かされました。

僕のオフロード経験は他の参加者の方々に比べたら大したものでもないので、走り切れるのかかなり不安もありました。しかし「もし途中で挫けたら、ホテルまでたどり着ければ大丈夫!」の一言でエントリーを決めました。

そんな僕でも、現地に行ったらヒーローです! あのスタート会場での盛り上がり、興奮や緊張は、当然普段の日常ではありえない事です。会場にいた人々の歓声にはますます興奮を煽られました。それはスタート会場だけではなく、ラリー期間中様々な場面、たとえば村を走り抜ける時も村人達みんなが声援を送ってくれて、おかげで疲れていた身体にかなり元気をもらいました。途中で挫けず最後まで走り切れたのも、地元の人々の応援のおかげもあったと思います。

もちろん何事も無く完走出来たわけではありません。道に迷って近くの民家に駆け込んでみたり、トリップメーターが全部壊れて距離がわからなくなったり…、でもそんな事があったからこそ、1日走り終えた後のホテルでの夕暮れは感動ものでした。他にも、自分のバイクで国境を越えた事、アンコールワットに行けた事、カンボジアのホテルから見たメコン川越しの朝陽など、このラリーに参加したからこその感動を、たくさん味わう事が出来ました!

初めての海外ラリーだったので、不安は期待を上回るくらいありましたが、このラリーは日本からの参加者も多く、海外でのレース経験者もいるので、色んな場面で助けていただきました。それに面倒そうなバイクの輸送も日本からエントリーされる皆さんの車両をまとめてやってしまうので、簡単、安心でした。あとは「走りたい!」という気持ちを胸に現地へ行くだけ、って感じでした。僕をラリーに誘ってくれた「ある人」をはじめ、こんなに楽しい刺激を味わわせてくれた皆さんに、本当に感謝です!!

「今年の目標はノントラブルで完走することです!」
山田 伸一

2012年、ラリーに出場するきっかけになったのはプロテックスポーツ石井進さんのブログです。それまではアメリカにツアーで数回走った程度でした。昔、タイのエンデューロに出場しようとしたんですが仕事の都合で出れなかったので、チャンスとばかりに出場を決心しました。

1人で心細かったので石井さんに連絡したら、快く仲間に加えていただき、また主催者も丁寧にいろいろと教えてくれました。エントラントのみなさんはフレンドリーで、無事完走出来ました。ラリーはクロスカントリーやエンデューロよりもフレンドリーな人が多いです。長丁場なので、ギスギスしていないんですね。

2012年はWR250F、2013年からはラリーに慣れたこともあり、高速巡航を楽にしたいという考えから、重くなるのを承知でWR450Fに変更しました。しかし、このラリーは250ccでも十分に完走出来ます。250ccで辛いのは朝夕のリエゾン、アスファルトで150~200km前後の移動だけです。タイヤは腕にもよりますが、毎日換える必要はありません。

2014年はLEG2でエンジントラブルによりリタイヤしてしまいましたが、その原因となったのは、LEG1での水没からリカバリー後の走行です。焦りから大転倒を2回喫しました…。

このラリーはマシン製作費用もぐっと抑えられるし「迷わないように確実に走る=スピードを上げて無茶な走りをしない」ということを心がければ楽しんで完走出来ます。

宿泊もホテルでシャワーを浴び、ベッドで寝ることが出来るというのも、ラリー初心者、特に海外をたっぷりと走ってみたい! という初心者にはもってこいだと思います。また、荷物の重量にも制限が無いので、その点も楽です。ちなみにツアーでエジプトやアメリカに同じ期間に走りに行くのと同じくらいの金額です。

コマ図を頼りに1人で心細い時もありますが、無事に抜け切ったとき、正しいルートとわかったときはものすごく嬉しいです。今年の目標はまずはノントラブルで完走。次に「迷わないで、速く走る」です。

「自分のバイクで世界遺産を走る体験は貴重!」
梶野 雄稔

僕にとって、2014年度のアジアクロスカントリーラリーは生涯忘れられない最高のレースでした。

2013年の初めてのラリーでは、もちろん初めての海外走行ということで緊張していたところに加え、悪天候と初日からの怪我、メカトラブルからの遭難といった災難を経験したため(いい経験でしたが)、2014年度は無難に走り切ることを目標として臨みました。

ラリーが開催される8月は、タイ周辺は雨季のまっただ中のため、前年のように連日の雨を覚悟で準備をして行ったのですが、レース期間中1~2回スコールがあっただけで、雨の無い年でした。そのおかげで素晴らしい天候の中、広大なタイ・カンボジアの土地を延々と走り続けることが出来ました。

レース序盤のタイステージ、僕は問題なく走れたのですが、周りでは怪我やマシントラブルでリタイヤする方が出たりしました。やはり長丁場のラリーでは何が起こるかわからないので、油断は禁物だと思います。

レース中盤のカンボジアは「ハイスピード&超ギャップ」と聞いていたのでかなり怖かったのですが、コース上の道はしっかりと整備されており、ひたすら超ハイスピードのレースとなりました。3日目のSSゴール地点には世界遺産のアンコールワットが設定されており、自分のバイクで世界遺産の中を走るという、貴重な体験をすることが出来ました。

今回のレースで最も山場とされていた、5日目の200km超、サポート無しのSSでは、天候が良かったのと、主催者側で途中に給油ポイントを設けてもらったおかげで無事に乗り越えることが出来ました。前半の超高速ロングストレートでは、2ストマシンでぶん回して走るのが若干怖かったです。

6日目も無事に終了し、当初の目標であった「無難に走り切る」という目標を超えて6位に入賞することが出来ました。やはりラリーもエンデューロと同じで、着実に走ることが大事だということがよくわかりました。

僕は2015年度のAXCRにも出場を予定しています。残念ながら、当初計画されていたミャンマーは治安の問題からコースから外れてしまったのですが、タイ北部をぐるっと廻ることの出来るコースは、非常に楽しみです。今年もちゃんと完走出来るようにしっかり準備して、レースに臨みたいと思います。

AXCRは国際ラリーデビューに最適
興味を持ったら即行動!

2014年はタイのプランテーション、田園を中心としたステージと、対照的なカンボジアのハードパックがライダーたちを待ち構えていた。20周年を迎える2015年はガラリと変わってタイ北部、チェンマイの山岳路で展開される記念すべき大会だ。

国際ラリーデビューに最適なアジアクロスカントリーラリーにチャレンジ出来るのは年1回! 2015年大会の申し込みは締め切られているが(2015年6月19日17:00)、いまから少しずつ準備を進めて、是非次回大会に挑んで欲しい。

第20回 アジアクロスカントリーラリー2015
開催期間 2015年8月8日~14日  最新情報はコチラをチェック!>>

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