AXCR2014 レポート Vol.05 2014年優勝者 前田啓介選手が語るアジアクロスカントリーラリーの魅力

掲載日:2015年05月25日 エクストリームラリー    

取材協力/アジアクロスカントリーラリー日本事務局  取材・文/宮崎 大吾

Asia Cross Country Rally 2014 Special Report

■大会名称
第19回 アジアクロスカントリーラリー2014
■開催期間
2014年8月9日(タイ パタヤ)~15日(カンボジア プノンペン)
■公認
国際モーターサイクリズム連盟(FIM)、国際自動車連盟(FIA)、タイ王室自動車連盟(RAAT)
■主催
オルティブタイランド、R1ジャパン
■協力
タイ国政府観光庁、パタヤ市、サケオ市、カンボジア政府
■お問い合わせ(電話)
アジアクロスカントリーラリー日本事務局(03-5911-3844)

2015年大会はタイ・チェンマイを基点とした山岳路をステージとし、トータル2,500kmのコースとなることを発表したアジアクロスカントリーラリー。今回は2014年度大会で、初参戦ながら見事優勝を果たした前田啓介選手に、このラリーの魅力や取り組み方をインタビュー。ぜひ参考にして、2015年大会にチャレンジしてほしい。

安心して挑めた
初アジアクロスカントリーラリー

広島市『5D hiroshima』の代表、前田啓介氏は、JNCCやJECなどテージャスランチで開催されるエンデューロレースのコースレイアウターとしても著名。自身もエクストリームエンデューロやラリーに造詣が深く、『5D Rally』などのイベントを開催している。国際ラリーはモンゴルラリーに出場経験があり、昨年初めてアジアクロスカントリーラリーに挑戦した。

「初めてのアジアクロスカントリーラリー参戦でしたけど、地元の警察や軍隊が村や市街地でもしっかり誘導してくれたから、安心して臨めました。コースマークも多かったので、コマ図がなくても走れる区間があって、慣れるまでに時間はかかりませんでした。これなら初心者が出場しやすいんじゃないでしょうか。

毎晩ホテルに泊まれるのでゆっくり休めるのもいい。ご飯は美味しいしマッサージも安い。毎日疲れを癒すことができて、何の不満もなかったですよ。

言葉が通じなくても身振り手振りで理解できる。それほど大きなビッグタンクを用意しなくてもいいですね。僕は14リットルくらいのタンクでしたが、これで十分でした。200km以上あったSS5だけ、途中の村で給油しましたけど、他は問題ありませんでしたね。日本のサービスクルーにも助けられたし、すごく頼りになりました。おかげでラリーに集中できたんです」

優勝はSS0から意識していた

「パタヤのスーパーSS(SS1のスタート順を決めるための短いSS)から、優勝は意識していましたよ。でも池町さん(池町佳生氏)に対して、ナビゲーション能力はセンスも経験値でも負けているので、彼に引っ張ってもらう作戦だったんです。

ミスを少なくしてチャンスがあれば行こうと。ところが池町さんのマシンにトラブルが発生してしまいました。彼のマシンの調子が良ければ、僕は勝てなかったかもしれません。カンボジアの高速ステージでも、全然勝負になっていなかったですし。僕はギア比の選択の面でも速度があまり伸びませんでした」

ムースかチューブか? ラリーマシン作りを聞く

「僕は前後チューブを選びました。カンボジアの140km/h巡航でエンデューロ用タイヤ+エンデューロ用ムースの組み合わせだと、ムースの飛び出しが怖いからです。ラリー用タイヤ+ラリー用ムースの組み合わせならその心配は無いのですが、タイの軟質路面では勝負になりません。経験もないので、安全対策としてチューブにしました。おそらく新品のムースなら大丈夫だとは思いますが。空気圧をあまり落とさないので、ヘビーチューブ+ビードストッパー1個という装備でした。

必要な装備としては、パンク修理キット、あと崖落ちしたときのホイッスル(救護用)は必要ですね。純正工具、水没したときに直せるスキルも必要です。ラリーのトラブルはチェーン切れ、パンク、水没がほとんどですから、それぞれ直せる工具と技術を身につけておきたいです。あとはチェンジペダルを曲げた際に修正するレンチとかですね。エンジンブローしてしまったら、どうにもなりません。

マップホルダーなどの機器を装着するので、どうしてもフロントヘビーになりますから、フロントサスペンションのバネレートは上げました。あとは壊れてもすぐに直せるようシンプルに作っています。色々なスイッチをつけず、配線も極力シンプルに。トリップメーターは2個でしたが、実際は1個しか使わなかったので、今年は1個だけにしようと思います」

走り方の基本は疲れにくく楽なライン取り

「やはり疲れない走り方が大切だと思います。僕は体力がないから、インベタで突っ込んで、急ブレーキで曲がるような走りはしません。大きめのアールで楽に曲がります。フラットダートではアクセルオフで滑らせて向きを変えるのが楽でしたね。『ブレーキングしてバイクを倒して…』という基本的なコーナリングよりも、アクセルオフでドリフトするだけですから、操作も少なくて楽なんです。

カンボジアなどのフラットダートでは、アクセルオフによるスライドを積極的に利用して、操作数を減らして体力温存をはかる。マシンにも体にも優しく速い走り方だ。

SSとは言え、クローズドコースではないから、いきなり水牛が横切ったりすることもあるので100%攻めることはできません。ブラインドコーナーでも絶対飛ばしませんし、その分アベレージスピードを上げたほうがいい。コーナーひとつひとつ速度を上げていく感じです。突っ込みより立ち上がり重視です。

“早くゴールして食べる、そして休む”というのが基本です。夜はナビゲーションも大変になるし、群れから外れないことです。バイクを壊して、どんどん悪い方向へなっていきますから」

大会中の写真を振り返ると、前田選手の安定したコーナリングが際立っていた。他のライダーが激しく攻めるコーナーも、一見派手さはないのだが、確実に楽に曲がる走法を使っている。

トップライダーは、少しでも休憩できるところは休む。筆者が走行を終えてホテルに戻る頃、すでに前田選手は整備を済ませて昼寝していることも多かった。

前田選手は最終SS途中でタイヤがバーストしながらもアクセルを緩めずにゴールした。ゴール後に地元のバイク屋で適当なタイヤを装着して、無事にホテルに戻ってきた。この生命力の強さがトップラリーストの証!

「SSが50kmと短くて、残り半分くらいだったので動じませんでした。あれが150kmくらいあったら動じてましたね(笑)。まあリムだけでも10kmくらいは走れるでしょう。パンクを直して2位になるくらいなら、プッシュして優勝を狙います」

ご飯食べて、寝て、バイクで走る
ただそれだけやればいいという幸せ

「ラリーの魅力は、非日常を味わえることですね。毎日バイクに乗ることだけを考えていればいい。規則正しい生活、ご飯食べて、寝て、バイクで走る。ただそれだけをやればいい。こんな贅沢で幸せなことないですよね。見たことのない景色も見られるし、ナビゲーションが決まってくるとコマ図も楽しくなります。あの感覚はエンデューロでは味わえないものです。

コマ図だから、どこを走っているのか分からないのもいいですよね。いきなり目の前にアンコールワットが出てきましたから。あれはビックリしました。ラリーならではの感動ですよ! 地図を見ながらのツーリングとも違うし、主催者の意図も感じられる。“ああ、ここを通したかったんだな”って」

前田選手は今年もアジアクロスカントリーラリーに参戦を表明している。マシンは2005年式のKTM 450EXCを予定。5Dのお客さんも出場予定とのこと。「ラリーの魅力を色々な人に伝えていきたい」と前田氏。費用の安さや環境の良さから、若いライダーを誘いやすいラリーとも言える。今後も前田氏は、定期的にアジアクロスカントリーラリーに参戦したいと言う。

前田 啓介
広島市のショップ『5D hiroshima』の代表をつとめ、自身もラリー・エンデューロライダーとして活躍中。モンゴルラリーやSSERなどでも活躍。またコースレイアウターとしてJNCCやJECなど数々の名レースの影の立役者でもある。2014年大会は初参戦ながら二輪部門初優勝を果たした

第20回 アジアクロスカントリーラリー2015
開催期間 2015年8月8日~14日  最新情報はコチラをチェック!>>

他のAXCRレポートを見る

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索