
掲載日:2013年04月10日 エクストリーム › モトクロス
文・まとめ/宮本 将平
ラウンド12のトロントから中1週のインターバルをおいて開催されたラウンド13、ヒューストン。ラウンド9のセントルイスから4連勝のライアン・ビロポート(カワサキ)は、ポイントランキングでもすでにトップに立ち、2位デイビー・ミルサップス(スズキ)とのポイント差を徐々に広げつつある。そして、ビロポートにとっては今回のラウンドで優勝すれば、キャリア初の5連勝が達成される大事なラウンドでもある。トラックはヒューストン特有の軟らかい赤土で、今回も毎周のようにコンディションが変わる、とてもテクニカルな状況となっていた。また、その他ではこのラウンドからチャド・リード(ホンダ)がヒザの手術のため離脱、逆にトレイ・カナード(ホンダ)はケガから復帰という動きになったが、そのカナードがプラクティス、ヒートレース共に素晴らしいライディングを見せ、ヒート1で見事に勝利し、トップでメインレース進出を決めた。ヒート2では、ビロポートが2位のジェイムズ・スチュワート(スズキ)に大きく差を付けて勝利し、メインレースへと駒を進めた。また、一昨年の大ケガから今シーズン本格復帰したジョシュ・ヒル(スズキ)が、ケガ前のようなアグレッシブなライディングで3位をゲットしたのも、ファンにとってはうれしい出来事のひとつだった。
メインレース(20周)、ホールショットは今回もマイク・アレッシ(スズキ)が鮮やかに奪う。しかし、その後にはビロポート、カナード、ジャスティン・バーシア(ホンダ)、ライアン・ダンジー(KTM)、スチュワートらトップライダーたちがずらりと続く。その中で2位に着けていたビロポートは、1ラップ目のサンドセクションでアレッシをクリーンパスし、早々にトップを奪う。2ラップ目、ビロポートに付いて行く事の出来ないアレッシを、ヒートレースから好調のカナードがフープスであっさりとパスし、トップのビロポートへの追撃体制を整える。さらに、アレッシは3ラップ目にダンジー、スチュワートにもパスされた他、4ラップ目にはバーシアにもパスされてしまう。ビロポートとタイトル争いを繰り広げているミルサップスは、スタートで出遅れ中盤からの追い上げとなったが、8ラップ目にはアレッシをパスし、6位までポジションをアップさせていた。
一方、トップのビロポートはこの時点で2位のカナードに約5秒のリードがあり、いつも通りの完璧なレース展開で安定したライディングを続けていた。逆にここまで好調だったカナードは、このラップ中にダンジー、スチュワートの2人に続けてパスされてしまう。しかし、スチュワートは10ラップ目のフィニッシュジャンプ手前のコーナーでフロントタイヤを滑らせ転倒、ダメージは少なかったものの、ここでDNF(Did Not Finish リタイア)となってしまった。その後は大きな動きは無いままレース後半を迎えていたが、ビロポートはずっと5秒強のリードを保ったままレースを進め、誰もが彼の勝利を確信するライディングを続けていた。このまま最後まで強さを見せたビロポートが、結局9位ポジションのライダーまでラップ(周回遅れに)する強さで、今回も優勝。2位には、こちらもポディウム常連のダンジー、そして3位には今回がケガからの復帰戦となったカナードがそれぞれ入った。
このヒューストンで、結局ビロポートが自身初の5連勝を達成。ここ最近の7ラウンドで6勝という圧倒的な強さで、ポイントスタンディングで2位のミルサップスに、気が付けば21ポイントものリードを築いている。さらに、ポイント3位のダンジーも安定したリザルトを残し続けていった結果、2位のミルサップスにわずか4ポイント差というところまで迫った。逆にミルサップスは、シーズン前半ほどの強さは陰を潜め、中盤戦以降、彼にとってはとても苦しい戦いが続いている。2013スーパークロスシリーズは、ディフェンディングチャンピオンのビロポートが主導権を握ったまま残り4ラウンドを戦って行く事になったが、3位のダンジーまでは未だタイトル獲得圏内。ビロポートは3年連続のタイトルを獲得する事が出来るのか。
順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 | メーカー | ベストタイム | |
1 | 1 | R・ビロポート | Monster Energy Kawasaki | Kawasaki | 51.703 | |
2 | 5 | R・ダンジー | Red Bull KTM | KTM | 51.991 | |
3 | 41 | T・カナード | Team Honda Muscle Milk | Honda | 52.333 | |
4 | 51 | J・バーシア | Team Honda Muscle Milk | Honda | 52.176 | |
5 | 18 | D・ミルサップス | Rockstar Energy Drink | Suzuki | 52.795 | |
6 | 10 | J・ブレイトン | Toyota/JGRMX/Yamaha | Yamaha | 53.989 | |
7 | 29 | A・ショート | BTOSports.com/KTM | KTM | 54.038 | |
8 | 75 | J・ヒル | RCH/Dodge/Suzuki | Suzuki | 53.943 | |
9 | 12 | J・ワイマー | Monster Energy Kawasaki | Kawasaki | 54.199 | |
10 | 20 | B・ティックル | RCH/Dodge/Suzuki | Suzuki | 54.224 | |
11 | 62 | M・ゴーキー | BTOSports.com/KTM | KTM | 54.359 | |
12 | 49 | P・ニコレッティー | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 54.094 | |
13 | 39 | R・キナイリー | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 55.515 | |
14 | 54 | L・スミス | BTOSports.com/KTM | KTM | 54.997 | |
15 | 84 | C・ブルース | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 54.759 | |
16 | 85 | K・パートリッジ | - | Honda | 56.531 | |
17 | 46 | W・ペイック | - | Suzuki | 54.029 | |
18 | 722 | A・エンティックナップ | - | Honda | 56.744 | |
19 | 7 | J・スチュワート | Yoshimura Suzuki Factory Racing | Suzuki | 51.956 | |
20 | 800 | M・アレッシ | Motoconcepts Racing | Suzuki | 54.247 |
順位 | ゼッケン | ライダー名 | メーカー | ポイント | |
1 | 1 | R・ビロポート | Kawasaki | 277 | |
2 | 18 | D・ミルサップス | Suzuki | 256 | |
3 | 5 | R・ダンジー | KTM | 252 | |
4 | 51 | J・バーシア | Honda | 202 | |
5 | 22 | C・リード | Honda | 196 | |
6 | 41 | T・カナード | Honda | 185 | |
7 | 7 | J・スチュワート | Suzuki | 169 | |
8 | 29 | A・ショート | KTM | 162 | |
9 | 10 | J・ブレイトン | Yamaha | 137 | |
10 | 20 | B・ティックル | Suzuki | 133 | |
11 | 62 | M・ゴーキー | KTM | 129 | |
12 | 12 | J・ワイマー | Kawasaki | 106 | |
13 | 800 | M・アレッシ | Suzuki | 85 | |
14 | 46 | W・ペイック | Suzuki | 63 | |
15 | 17 | E・トマック | Honda | 52 | |
16 | 75 | J・ヒル | Suzuki | 50 | |
17 | 39 | R・キナイリー | Yamaha | 45 | |
18 | 33 | J・グラント | Yamaha | 40 | |
19 | 55 | J・アルバートソン | Honda | 38 | |
20 | 11 | K・チゾム | Yamaha | 38 |
ディーン・ウィルソン(カワサキ)がケガで離脱してからは、マービン・ムスキャン(KTM)、ウィル・ハーン(ホンダ)、そしてブレイク・ウォートン(スズキ)の3人がシリーズをリードしている、250クラス イースト。その250イーストに、今回のヒューストンラウンドから3年連続でアリーナクロスのタイトルを獲得しているタイラー・バウワーズが名門、モンスターエナジー・プロサーキット・カワサキからエントリーする事になった。バウワーズにとっては、同チームのレギュラーメンバー、ウィルソン、ダーリン・デュラム、ジャスティン・ヒルの3名がケガにより離脱した事でチャンスが回って来た事になる。そのバウワーズが、ヒートレースでいきなりムスキャンに次ぐ2位でフィニッシュ、素晴らしいライディングを早速見せてくれた。もちろん、ランキングトップのハーンももう1つのヒートレースで勝利し、トップライダーたちは揃ってメインレースへの準備を整えた。
メインレース(15周)、ホールショットはザック・フリーバーグ(ホンダ)が奪う。その後にはムスキャンとウォートンが続くが、地元開催で気合いの入っているウォートンが、サンドセクションですぐにムスキャンをパス。このままウォートンの勢いは止まらず、続くフープスでトップのフリーバーグもパスするが、ムスキャンも同じくフープスでフリーバーグをパスし、ここから2名の何度もポジションを入れ替える激しいトップ争いが開始される。一度はムスキャンにパスされたウォートンだったが、どうしても地元で勝ちたい彼は、何度もブロックパスを試み、ついにムスキャンをパスし、再びトップを奪う。一方、彼らのすぐ後方にはもポイントリーダーのハーンが迫って来ていた。トップ3名はそれぞれ1秒程度の差を保ちながら周回を重ねて行ったが、6ラップ目のフープスの出口でムスキャンがバランス崩し転倒、4位までポジションを落としてしまう。しかし、すぐにムスキャンは3位のバウワーズをパスし、再びポジションをアップさせるが、トップ2からはすでに10秒以上のリードを築かれていて、残りのラップ数を考えると逆転は難しい状況にあった。
一方のトップ争いは、中盤以降、ハーンが徐々にウォートンにプレッシャーを与え始め、10ラップ目には完全に射程距離に捕らえていた。12ラップ目、フィニッシュジャンプ前のセクションでウォートンに近付き過ぎたハーンはその影響でフィニッシュジャンプを飛び損ね、再びウォートンに若干の差を与えてしまうが、トップスピードでウォートンを上回るハーンは、再びアタックを開始。しかし、13ラップ目にはまたもフィニッシュジャンプを飛び損ね、ウォートンに余裕を与えてしまう。結局その後もハーンはウォートンに迫り続けたがポジションを入れ替えるまでには至らず、ウォートンが今シーズン初優勝を果たした。2位にはハーン、3位にはムスキャンとなったが、4位には見事アリーナクロスチャンピオンのバウワーズが入った。彼にとっては今シーズン初のスーパークロスで自身最高位を記録する、素晴らしいレースとなっただろう。
地元のウォートンが今シーズン初優勝を決めたヒューストン。彼にとっては インディアナポリス で勝てるレースを逃しただけに、今回は本当に嬉しい勝利となっただろう。しかし、ポイントランキングで熾烈なトップ争いを繰り広げているハーンとムスキャンもきっちりと2位、3位に入ったため、ランキングは大きく変動する事は無く、相変わらずタイトル争いは超接近戦で展開されている。残されたラウンドは次のミネアポリスとファイナルラウンドのラスベガスのみ。わずか8ポイント差のタイトル争いはまったく予想出来ない状況が続いているが、2位のムスキャンにとっては次のミネアポリスで勝利し、少しでもポイント差の少ない状況でラスベガスに挑みたい。次のラウンドが、今シーズンの250イーストのタイトルの行方を左右する、大切なラウンドになる可能性が大きい。
順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 | メーカー | ベストタイム | |
1 | 13 | B・ウォートン | Rockstar Energy Drink | Suzuki | 52.959 | |
2 | 19 | W・ハーン | GEICO Honda | Honda | 53.281 | |
3 | 25 | M・ムスキャン | Red Bull KTM | KTM | 53.122 | |
4 | 68 | T・バウワーズ | Monster Energy/Pro Circuit/Kawasaki | Kawasaki | 54.763 | |
5 | 67 | G・フェイス | Motoconcepts Racing | Honda | 55.129 | |
6 | 48 | C・トンプソン | - | Honda | 55.521 | |
7 | 69 | P・ラーセン | - | Yamaha | 55.736 | |
8 | 87 | L・ビンセント | Munn Racing | KTM | 54.766 | |
9 | 393 | D・ヒーレイン | - | Honda | 56.871 | |
10 | 552 | S・クラーク | Sher Racing | KTM | 56.446 | |
11 | 412 | L・キルバーガー | - | Honda | 56.806 | |
12 | 874 | Z・ウィリアムス | - | Honda | 56.633 | |
13 | 42 | V・フリージー | - | Honda | 55.683 | |
14 | 194 | J・リチャードソン | XPR Racing | Honda | 56.478 | |
15 | 244 | R・ジマー | - | Honda | 56.342 | |
16 | 304 | B・リップル | Shea Racing | KTM | 58.247 | |
17 | 73 | A J・カンタザーロ | - | Kawasaki | 55.464 | |
18 | 328 | C・クロフォード | - | Kawasaki | 58.504 | |
19 | 248 | M・オールデンバーグ | - | Honda | 56.988 | |
20 | 71 | Z・フリーバーグ | - | Honda | 56.113 |
順位 | ゼッケン | ライダー名 | メーカー | ポイント | |
1 | 19 | W・ハーン | Honda | 156 | |
2 | 25 | M・ムスキャン | KTM | 148 | |
3 | 13 | B・ウォートン | Suzuki | 133 | |
4 | 42 | V・フリージー | Honda | 89 | |
5 | 15 | D・ウィルソン | Kawasaki | 87 | |
6 | 67 | G・フェイス | Honda | 82 | |
7 | 50 | K・ピーターズ | Honda | 78 | |
8 | 48 | C・トンプソン | Honda | 72 | |
9 | 77 | J・マーティン | Yamaha | 71 | |
10 | 317 | J・ヒル | Kawasaki | 68 | |
11 | 613 | J・デコティス | Honda | 66 | |
12 | 69 | P・ラーセン | Honda | 54 | |
13 | 248 | M・オールデンバーグ | Honda | 51 | |
14 | 87 | L・ビンセント | KTM | 51 | |
15 | 73 | A J・カタンザーロ | Kawasaki | 49 | |
16 | 167 | Z・ベル | Honda | 37 | |
17 | 71 | Z・フリーバーグ | Honda | 36 | |
18 | 412 | L・キルバーガー | Honda | 34 | |
19 | 194 | J・リチャードソン | Honda | 33 | |
20 | 552 | S・クラーク | KTM | 27 |
WEB・GRAPHIC DESIGNER/PHOTOGRAPHER 元プロMXライダー。トランスワールドMX編集部を経て、同社でデザイナーとして勤務。退社後に独立、いわきで バンザイマガジン (FMXフリーマガジン)を立ち上げ、編集長を勤めている。
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