
掲載日:2013年03月28日 エクストリーム › モトクロス
文・まとめ/宮本 将平
ライアン・ビロポート(カワサキ)が3連勝で、ポインドランキングでもついに開幕からポイントリーダーとして君臨していたデイビー・ミルサップス(スズキ)からトップを奪った450クラス。特にここ数ラウンドはほぼパーフェクトなレースで、ビロポートが勝ち続けている。ただ、2位のミルサップス、3位のライアン・ダンジー(KTM)とのポイント差はというと、思ったほど大きく広がっているわけでもない。事実、一昨年の2011シーズンでは予選、LCQ(ラストチャンスクォリファイ)ともにスタート直後のクラッシュに巻き込まれメインレースにさえ進めないという事件があったのだから。そして。今回のトロントラウンドはシリーズ全17ラウンドの中でも特に広いスタジアムで(デイトナラウンドは例外)、長くて過酷なラウンドになる事が予想された。さらに、インディアナポリスでもそうだったように、ミルサップス、ダンジーともに調子は決して悪くないため、シリーズの主導権を握ったように見えるビロポートも気が抜けないラウンドとなった。注目のヒートレースは、相変わらずここでは絶対的な強さを見せるジェイムズ・スチュワート(スズキ)、ビロポートの両ライダーが貫禄を見せメインレースへと進む。他のトップライダーも大きな波乱はなく、お馴染みの顔ぶれが順当にメインレースへと進んだ。
メインレース(20周)、ホールショットは絶好調のビロポート。背後には次のラウンドから膝の手術のため欠場する事を表明したチャド・リード(ホンダ)。さらにその後ろにはミルサップス、ダンジー、スチュワートらが続いたが、2コーナー手前のリズムセクションでリードが、続くフープスでミルサップスがそれぞれビロポートをパス。ミルサップスはさらに、トップのリードまでも直後にパスするが、リードもすぐにトップを奪い返す。2ラップ目、ミルサップスが再びリズムセクションでトップを奪うが、3位のビロポーともリードをパスし、ランキングでもトップを争う2人がこのレースの序盤からトップを争う形となり、ここから長い戦いが始まる。一方、リードの後からはダンジー、スチュワートの2人がプレッシャーをかけ始め、5ラップ目にはダンジーがリードをトリプルジャンプ後のフラットコーナーの進入でパスし、トップ2人の追撃を開始。これで、ランキングトップ3ライダーによるトップ争いが開始される事になった。
レースのちょうど半分を消化した11ラップ目、ミスサップスの動きを後からずっと見ていたビロポートが、フィニッシュジャンプ直後のヘアピンコーナーでインに鋭く入ると、そこから一気にスパートをかけミルサップスとの距離を広げ始める。さらにダンジーもビロポートに続くかのようにミルサップスに並びかけるが、サンドセクション直後の右コーナーでエンジンをストップさせてしまい、後を走っていたリードに再びパスされてしまい順位をひとつ落としてしまうが、すぐにリードから3位を奪い返す。しかしこのミスでトップとの距離を約7秒まで広げられてしまい、優勝は厳しい状況となってしまった。一方、トップのビロポートは2位のミルサップスに3秒程のリードをキープしながらレースを後半を迎え、ラスト数ラップはクルージングで後との距離を測りながらチェッカーを受け、今シーズン7勝目を挙げた。
今回のトロントラウンドでも、ビロポートが決して大差ではないもののディフェンディングチャンピオンらしい完璧なレース展開でミルサップスに勝利した。特に、トップに立った中盤以降の余裕なライディングを見ていると、何か無い限り誰も勝てないのでは、と思ってしまう程だが、ミルサップス、ダンジーも決して大きく離されているわけでは無い。ましてやポイントでまだまだビロポートに大きなリードは無く、まだ全然結末の見えない450クラスだが、これから終盤戦を迎える2013シーズン。果たしてビロポートがシーズンを3連覇するのか! それともミルサップス、ダンジーがここから巻き返して来るのか。残り5ラウンドでその決着がつく。
順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 | メーカー | ベストタイム | |
1 | 1 | R・ビロポート | Monster Energy Kawasaki | Kawasaki | 57.746 | |
2 | 18 | D・ミルサップス | Rockstar Energy Drink | Suzuki | 57.740 | |
3 | 5 | R・ダンジー | Red Bull KTM | KTM | 57.695 | |
4 | 22 | C・リード | TWOTWO Mortorsports | Honda | 58.168 | |
5 | 51 | J・バーシア | Team Honda Muscle Milk | Honda | 58.184 | |
6 | 12 | J・ワイマー | Monster Energy Kawasaki | Kawasaki | 58.945 | |
7 | 7 | J・スチュワート | Yoshimura Suzuki | Suzuki | 58.266 | |
8 | 20 | B・ティックル | RCH Suzuki | Suzuki | 59.698 | |
9 | 29 | A・ショート | BTOSports.com/KTM | KTM | 59.078 | |
10 | 62 | M・ゴーキー | BTOSports.com/KTM | KTM | 59.279 | |
11 | 10 | J・ブレイトン | JGRMX Toyota Yamaha | Yamaha | 59.351 | |
12 | 49 | P・ニコレッティー | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 59.998 | |
13 | 75 | J・ヒル | RCH Suzuki | Suzuki | 1:00.751 | |
14 | 57 | B・ラメイ | Rock River Yamaha | Yamaha | 1:01.526 | |
15 | 39 | R・キナイリー | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 1:01.321 | |
16 | 84 | C・ブルース | N-Fab TiLUBE Yamaha | Yamaha | 1:02.345 | |
17 | 64 | J・サイプス | - | Kawasaki | 1:01.202 | |
18 | 46 | W・ペイック | - | Suzuki | 1:00.439 | |
19 | 54 | L・スミス | BTOSports.com/KTM | KTM | 1:01.228 | |
20 | 800 | M・アレッシ | Motoconcepts Racing | Suzuki | 1:02.102 |
順位 | ゼッケン | ライダー名 | メーカー | ポイント | |
1 | 1 | R・ビロポート | Kawasaki | 252 | |
2 | 18 | D・ミルサップス | Suzuki | 240 | |
3 | 5 | R・ダンジー | KTM | 230 | |
4 | 22 | C・リード | Honda | 196 | |
5 | 51 | J・バーシア | Honda | 184 | |
6 | 7 | J・スチュワート | Suzuki | 169? | |
7 | 41 | T・カナード | Honda | 165 | |
8 | 29 | A・ショート | KTM | 148 | |
9 | 10 | J・ブレイトン | Yamaha | 122 | |
10 | 20 | B・ティックル | Suzuki | 122 | |
11 | 62 | M・ゴーキー | KTM | 119 | |
12 | 12 | J・ワイマー | Kawasaki | 94 | |
13 | 800 | M・アレッシ | Suzuki | 84 | |
14 | 46 | W・ペイック | Suzuki | 59 | |
15 | 17 | E・トマック | Honda | 52 | |
16 | 33 | J・グラント | Yamaha | 40 | |
17 | 55 | J・アルバートソン | Honda | 38 | |
18 | 11 | K・チゾム | Yamaha | 38 | |
19 | 75 | J・ヒル | Suzuki | 37 | |
20 | 39 | R・キナイリー | Yamaha | 37 |
マービン・ムスキャン(KTM)がファイナルラップにクラッシュしたブレイク・ウォートン(スズキ)に代わり劇的な勝利を飾ったインディアナポリスから一週間、今週は国境を越え、カナダのトロントで250クラスイースト、ラウンド6が開催された。ラウンド5をケガでエントリーできなかったディーン・ウィルソン(カワサキ)は今回のラウンドもエントリー出来なかったため、タイトル争いからは完全に脱落してしまった。そしてルーキーのザック・ベル(ホンダ)も今回からケガで欠場という、大荒れの250イーストとなっている。そんな中迎えたヒートレースでは、ウォートン、ムスキャンの2人がそれぞれ勝利しメインレースへと進んだが、ヒート2でルーキーのジャスティン・ヒル(カワサキ)がポイントリーダーのムスキャンに迫るライディングを見せ、会場を大いに沸かせた。
メインレース(15周)、ホールショットは現在2連勝中でノリにノっているムスキャン。その後にジミー・デコティス(ホンダ)、ビンス・フリージー(ホンダ)、ウォートン、ウィル・ハーン(ホンダ)らが続く。2ラップ目、5位のハーンがトリプルジャンプでフリージーに並びかけあっさりとパス。しかしその直後に2位のデコティスがリズムセクションでクラッシュしたため、彼らはそのまま順位を1つずつアップさせる事になる。5ラップ目、今度は4位のフリージーにルーキーのジェレミー・マーティン(ヤマハ)、デコティス、地元のコール・トンプソン(ホンダ)らが迫る。7ラップ目、3位のウォートンにじわじわと迫っていたハーンが、フープス後のフラットな左コーナーであっさりとウォートンをパスし、トップのムスキャンに迫る準備を整えた。この時点でトップとの距離は約5秒。残りのラップ数を考えると決して逆転不可能な距離ではなかったが、ここからムスキャンは粘り強いライディングでハーンへ5秒以上のリードをキープ。ハーンは後半に強いムスキャンとの距離を縮めることはできなかった。一方、3位争いはペースの上がらないウォートンの後からマーティンが距離を詰め、ラスト2周の時点でほぼ真後ろまで迫っていた。しかしここからウォートンはプロキャリアの差を見せ、なんとか逃げ切り3位でフィニッシュした。もちろん優勝は安定した強さを見せるムスキャン。2位にはポイントリーダーのハーンがそれぞれ入った。
ハーン同様、デイトナでの初優勝から一気にこのクラスでの主導権を握ったムスキャン。勝利を重ねる度にスピード、安定感ともに増してきているようにも見える。ただ、ここ数ラウンドでは連勝のムスキャンの陰に隠れがちなハーンだが、今回のラウンドでもそうだったように、毎ラウンド必ずポディウムでのフィニッシュを重ね、ランキングもしっかりとトップをキープしている。勝てる時に勝って、勝てないレースでも必ず上位でのフィニッシュをする勝負強さが今シーズンのハーンにはある。残り3ラウンドとなった250イーストはまだまだタイトル争いの真っ只中。昨年まではバーシアが圧倒的な強さで独走していたこのクラスは、今まさにチャンプがいなくなった後の戦国状態。これからさらにタイトルを賭けたアツいレースが続いていくことに違いない。
順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 | メーカー | ベストタイム | |
1 | 25 | M・ムスキャン | Red Bull KTM | KTM | 59.339 | |
2 | 19 | W・ハーン | GEICO Honda | Honda | 58.811 | |
3 | 13 | B・ウォートン | Rockstar Suzuki | Suzuki | 58.893 | |
4 | 77 | J・マーティン | Star Racing Yamaha | Yamaha | 1:00.360 | |
5 | 42 | V・フリージー | - | Honda | 1:00.953 | |
6 | 48 | C・トンプソン | - | Honda | 1:00.728 | |
7 | 613 | J・デコティス | - | Honda | 1:00.703 | |
8 | 67 | G・フェイス | Motoconcepts Racing | Honda | 1:00.995 | |
9 | 194 | J・リチャードソン | - | Honda | 1:01.657 | |
10 | 50 | K・ピーターズ | AG Motorsports | Honda | 1:01.925 | |
11 | 69 | P・ラーセン | - | Yamaha | 1:01.570 | |
12 | 73 | A J・カンタザーロ | - | Kawasaki | 1:01.501 | |
13 | 87 | L・ビンセント | Munn Racing | KTM | 1:02.185 | |
14 | 412 | L・キルバーガー | - | Honda | 1:02.499 | |
15 | 71 | Z・フリーバーグ | - | Honda | 1:03.039 | |
16 | 675 | K・ハッシー | - | Honda | 1:04.081 | |
17 | 639 | D・ビューラー | - | Honda | 1:04.775 | |
18 | 377 | A・クーン | - | Honda | 1:05.452 | |
19 | 556 | B・キーセル | - | Yamaha | 1:03.374 | |
20 | 317 | J・ヒル | Monster Energy/Pro Circuit/Kawasaki | Kawasaki | DNS |
順位 | ゼッケン | ライダー名 | メーカー | ポイント | |
1 | 19 | W・ハーン | Honda | 134 | |
2 | 25 | M・ムスキャン | KTM | 128 | |
3 | 13 | B・ウォートン | Suzuki | 108 | |
4 | 15 | D・ウィルソン | Kawasaki | 87 | |
5 | 42 | V・フリージー | Honda | 81 | |
6 | 50 | K・ピーターズ | Honda | 78 | |
7 | 77 | J・マーティン | Yamaha | 71 | |
8 | 317 | J・ヒル | Kawasaki | 68 | |
9 | 67 | G・フェイス | Honda | 66 | |
10 | 613 | J・デコティス | Honda | 66? | |
11 | 48 | C・トンプソン | Honda | 57 | |
12 | 248 | M・オールデンバーグ | Honda | 49 | |
13 | 73 | A J・カタンザーロ | Kawasaki | 45 | |
14 | 69 | P・ラーセン | Honda | 30 | |
15 | ?87 | L・ビンセント | KTM | 30 | |
16 | 167 | Z・ベル | Honda | 37? | |
17 | 71 | Z・フリーバーグ | Honda | 35 | |
18 | 194 | J・リチャードソン | Honda | 26 | |
19 | 412 | L・キルバーガー | Honda | 24? | |
20 | 552 | S・クラーク | KTM | 16 |
WEB・GRAPHIC DESIGNER/PHOTOGRAPHER 元プロMXライダー。トランスワールドMX編集部を経て、同社でデザイナーとして勤務。退社後に独立、いわきで バンザイマガジン (FMXフリーマガジン)を立ち上げ、編集長を勤めている。
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