掲載日:2011年02月15日 バイク基本整備のイロハ › 工具の使い方実践
ねじが緩まない、あるいは緩みづらい時、ついドライバーのグリップを力任せに回して、ねじ溝を傷めてしまったことはないでしょうか。プラスドライバーを使う時は回す力に加えて押す力が重要なのは、前回紹介した通りです。今回は、頑固なねじに対するドライバーの使い方を解説しましょう。
ボルスター付きなら
レンチを掛けて回すことができる
バイクやクルマだけでなく、構造物の接合部分に広く用いられているねじ。その中でもプラスねじは、作業性の良さと限られた数の工具で仕事ができるという点で重宝されてきました。具体的には、スパナやソケットは1mmごとにサイズが用意されていて、二面幅14mmのボルトを13mmのスパナで回すことはできません。そのためバイクのメンテナンスを前提にすれば、少なくとも8、10、12、14、17、19mmの6サイズは必要となります。
これに対してドライバーは、大ざっぱに分類すれば#1、#2、#3の3種類あればほとんどのプラスねじを回すことができます(中には#1より小さい精密ドライバーもあります)。
プラスねじには絶対的な普及度がありますが、プラスドライバーの刃先とプラスねじのねじ溝の間には、回転力を与えるとねじ溝から刃先が浮き上がる「カムアウト現象」という如何ともしがたい弱点があるのは前回触れたとおりです。そこで、プラスドライバーを使う際、とりわけ緩め方向に回す際は、ドライバーが浮いてこないように刃先をプラス溝に押しつけることが重要です。押す力と回す力の配分は6対4から7対3程度といわれ、回すよりも押す方が重要なぐらいです。
それでも、メンテナンスをしていると中には緩まないねじに遭遇します。ねじ山に水分が入って錆びているとか、必要以上に高いトルクで締め付けられたとか、ねじロックが併用されているとか、ねじ部に外力が加わって変形したとか、考えられる原因はさまざまです。いずれにしても、通常の手段では回らないねじに対しては、次の手を考えなくてはなりません。
この際に有効なのが、ねじの軸方向にショックを与える方法です。ねじが締まるということは、めねじとおねじの間に張力が利いているということです。めねじとおねじの螺旋は、ねじを締め付けることで互いに摩擦力と張力が高まり緩みづらくなります。この緊張状態を解くために、ドライバーを通じて軸方向に衝撃を加えてやるのです。ドライバーには、軸部がグリップの途中で止まる「非貫通式」と、グリップの後端までつながっている「貫通式」がありますが、プラスねじを叩く場合は貫通式ドライバーを使います。両者の見分け方としては、グリップ端部に金属製のキャップがあれば貫通式、キャップが付かず樹脂や木製のグリップエンドであれば非貫通式と判断できます。貫通式ドライバーはグリップ後部を叩く力がダイレクトに刃先に伝わるため、ねじに対して効果的に衝撃を与えることができるのです。
通常の力加減では緩まないプラスねじに直面したら、ねじ溝に対して刃先を垂直にしっかり差し込み、鉄ハンマーでグリップ後端をガツン!と叩きます。この時、遠慮しながら何度もコンコン叩くより、ある程度勢い良く(といっても程度問題がありますから、力任せというわけではありません)一撃したほうが効果的な場合が多いようです。その後、もう一度ドライバーを押しつけつつ回転させると、頑固なねじも緩みやすくなっているはずです。さび付きなどでねじ山が固着しているようなねじに対しては、ハンマーでガツンとやるのが有効なようです。
一方、ねじロックを使って締め付けられたねじなどには、最初の一発目が緩んでも、その後もずっと回りが悪いものがあります。また、緩み止めのために強い力でねじを締めたいこともあるでしょう。そのように、強い力で回さなくてはならない時には、軸の根元(グリップ側)に六角部があるドライバーを選択する手があります。この六角部はボルスターとも呼ばれていて、スパナやめがねレンチを掛けることができます。通常、ドライバーを使う時はねじとグリップ部が直線上にあります。対してボルスターにめがねレンチを掛けると、ねじからの距離が離れるため、スパナやめがねレンチで柄の長短を比べても分かるとおり、同じ力を加えてもねじに掛かる力が大きくなります。
また、レンチを使うことで、ねじを押す力と回す力をセパレートできるため「押しながら回す」という点でも役割分担がはっきりするというメリットが生じます。グリップを回して緩められるねじにまでボルスターを使う必要はありませんが、固着していそうなねじに対してはあらかじめレンチを掛けておけば強いトルクが掛けられます。
それでも緩まないねじはどうするか。そんな時に頼りになるのがインパクトドライバーです。こいつについては、次回に紹介しましょう。
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