掲載日:2010年10月08日 バイク基本整備のイロハ › 工具の使い方実践
バイクに使われているビスやボルト、ナットを緩めたり締めたりする際に欠かせない工具。カスタムやレストアといった大がかりなバイクいじりだけでなく、日常的な整備やメンテナンス作業でも工具が必要となる場面は多いもの。ここでは、さまざまな工具の種類や使い方の紹介を通じて楽しくバイクいじりを実践し、トラブルを未然に防ぐテクニックを解説しよう。
ボルトを素早く回転させるのに便利な
ラチェットレンチ
頭の形状が六角形のボルトやナットには、大量生産時の生産効率を向上させるとともに、ドライバーでビスを回すより強い回転力を与えられる利点があります。例えばマイナスビスをマイナスドライバーで回す時、溝は一本なので180度回転させないとドライバー先端とネジの溝はフィットしません。十字の溝が刻まれたプラスビスは、ドライバーを90度回せば先端とネジ溝がフィットしますから、その分締め付け時間が節約できます。
それらに対して六角形のボルトは、60度回転させれば、次に工具が掛かるチャンスがやって来ます。その上、スパナやめがねレンチは2カ所(スパナ)か6カ所(めがね)で接するため、ドライバーよりも強い力で締め付けることができるわけです。
前回紹介したスパナやめがねレンチは、それがこのデザインで登場して以来、ボルト着脱の最もベーシックなアイテムとして愛用されてきましたが、使用時にレンチの掛け替えが必要なこれらの工具に対して、連続的にボルトを回せるようにしたのがT字型レンチです。
このレンチは登場当時、ソケット部分とハンドル部分が一体式というスタイルであったため、ボルトのサイズが5種類あれば5本のハンドルが、10種類あれば10本のハンドルが必要となり、数が増えるほどかさばるという弱点がありました。
その常識を一変させたのが、1920年代にアメリカで生まれたスナップオン社です。同社はソケットとハンドルを分離して、1本のハンドルに任意のサイズのソケットを差し替えられる、インターチェンジャブルソケットレンチを開発したのです。今では当たり前となったこの発明のおかげで、大量生産時代にふさわしい、短時間で大量の仕事が可能になるソケットツールの世界が広がりました。
ソケットをハンドルと分離することで、使用環境に対応したさまざまなハンドルが生まれています。T型ハンドルやスピンナーハンドルはもちろん、工具好きの興味と関心が高いラチェットレンチもまた、ソケットを有効に使うための工具として誕生しました。本体のレバースイッチでストッパーを操作することで、カチカチカチカチ……という軽やかな作動音とともに回転力を一方向に限定できるラチェットレンチは、ボルトやナットからソケットを抜くことなく連続的に締め作業や緩め作業が可能となり、スパナやめがねレンチよりも作業スピードが格段に向上します。
また、スパナを使ってボルトを締める際、最低でもボルトが60度回らないと次の二面に工具が掛かりません。めがねレンチでも、内側が六角形のタイプなら60度。十二角形のタイプでも30度ボルトを回さなければ、やはり工具は掛かりません。
周囲に何もない場所のボルトに対してならこれでも問題は起きませんが、他の部品が近くにあるとか、狭い場所にあるなどレンチの作動角度(振り角)が十分に取れない場面では、締めも緩めもできない事態に陥ります。そして実際にバイクのメンテナンスを行うと、こうした「スパナやめがねレンチでは回せない」状況が結構頻繁にあるのです。
ラチェットレンチは本体のヘッド部分にギアとストッパーが内蔵されていて、ギアの歯数によってカチカチカチ……の一回の「カチ」で回せる角度が決まります。この角度のことを送り角といいますが、歯数はレンチによってさまざまな種類がありますが、例えば24歯なら15度、36歯なら10度、72歯なら5度と、いずれもスパナやめがねレンチとは比べ物にならないほど小さな角度で回せます。つまり、ボルトの周囲が立て込んでいて工具の振り角が稼げない場面でラチェットレンチの本領が発揮されるといって良いでしょう。
さらにラチェットレンチ本体も、小判型や丸型といったヘッド部分のデザインや、首振りタイプやソケットの不測の脱落を防止するプッシュリリースタイプといった便利な機能などが盛り込まれ、使い勝手と作業効率アップを図っています。
続いて、ラチェットレンチやT型ハンドルに組み合わされるソケットに注目してみましょう。ソケットとこれを回すハンドル類は、四角断面の凹に凸が差し込むことで工具として機能します。差込角とも呼ばれる凹と凸の寸法は、国やメーカーを超えて共通化していて、国内A社のラチェットレンチと海外製B社のソケット、海外製C社のT型ハンドルと国内D社のソケットが自由に組み合わせられます。差込角のサイズは四角断面の一辺の長さによって、主に1/4インチ(6.3mm)、3/8インチ(9.5mm)、1/2インチ(12.7mm)の3サイズが使われています。差込角が大きくなるほど結合部分の強度が上がるため、締め付け力が小さい6mm、8mmなど小さなサイズは差込角1/4インチで、大きな力で締め付ける20mmを超えるサイズでは1/2インチを使う場合が多くなります。
作業手順を見てみよう!
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!