2023年7月1日から創設された特定小型原付のギモンをすべて解決! 〜便利でエコな電動キックボード、今までと何が変わったの?〜

掲載日:2023年07月06日 購入基礎知識バイク購入基礎知識    

取材・文/桑本 大助

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2023年の4月から自転車のヘルメットが努力義務化されたり、7月から東京でもタンデム自転車(2人が前後についたペダルをこいで動かすタイプ)が走行可能となり、全国的に解禁になるなど、交通ルールも日々少しずつ変わっています。そのなかでも現在話題となっているのが、この7月1日からスタートした特定小型原付制度ですね。いわゆる電動キックボードが、今までの原付とは区別される形で新たに始まった制度で、バイクに乗りながら並走して気になったり、利用してみたいと興味を持っている方も多いと思います。自分は利用しないから関係ないとは思わずに、交通安全を守るため、そして今一度、理解を深めるためにもご一読ください。

【この記事の目次】
特定小型原付とはどんなもの?
走行可能な道路や、交通ルールは?
特定小型原付のメリット、デメリット
安全に楽しむために

【特定小型原付とはどんなもの?】

そもそも特定小型原動機付自転車とは?

今までは、モーターの定格出力が0.6kW以下のものは、電動バイクでも電動キックボードでも、原付と同等の扱いでした。しかし、改正道路交通法の一部施行により、定格出力0.6kW以下、長さ1.9m以下、幅0.6m以下かつ最高速度20km/h以下のもの、つまり電動キックボードを特定小型原動機付自転車と定義し、その他の電動バイクや原付を一般原動機付自転車と区別することとなりました。

特定小型原動機付自転車として公道走行するためには、走行中に最高速度の設定を変更できないこと、AT機構(クラッチ操作がない)が採用されていること、最高速度表示灯が備えられていることなどをはじめ、さまざまな保安基準を満たす必要があります(※1)。

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7月以前に所有されていた電動キックボードなどは、改正された道交法に定められた保安基準を満たしていれば、最高速度のランプを取り付けたり(2024年12月まで猶予期間あり)、自治体でナンバープレートを取得することで、特定小型原動機付自転車として登録し、利用することが可能です。ただし、モーターの出力や最高速度に応じて原付バイクやオートバイの分類となるものは一般原付になりますので、引き続き車道のみ通行可能であり、ヘルメットの着用と免許の所持が必要となります。

また、道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案として、特例特定小型原動機付自転車という区分も設定され、最高速度6km/h以下や走行速度表示灯の点滅など、歩道走行モードを備えることで、一部の歩道走行が可能になります(※2)。

特定小型原動機付自転車を運転するのに必要なものは?

特定小型原動機付自転車に区分される電動キックボードを運転するには、16歳以上であれば特に免許は不要です。制度上、自転車と一般原付の中間の位置付けとされており、ヘルメットの着用は努力義務とされ、一般原付のように義務付けられていません。しかし、最高時速は20km/hとなっており、実際には一定のスピードが出るため、安全を考慮するならヘルメットの使用をおすすめします。

購入時には、市町村にナンバープレートの交付申請を行う必要があり、交付後は見やすい場所にプレートを取り付ける必要があります。交付時には、年額2,000円の軽自動車税(種別割)が必要となります(※3)。

自動車損害賠償責任共済(通称自賠責)への加入は義務付けられており、2024年3月までは一般原付と同等の保険料が適用されます。2024年4月以降は新しい保険料が適用される予定です。任意保険については、現時点ではまだ保険会社からの販売は行われていないようですが、原付の任意保険に加入することが考えられます。ただし、事前審査があり、必ずしも加入できるとは限りません。自動車保険に付随するファミリー特約では、電動キックボードも利用できる場合もありますが、各保険会社によって対応が異なるため、ご利用の保険会社で条件を確認してみましょう。

【走行可能な道路や、交通ルールは?】(※4)

制限はあるものの、あらゆる道が走行可能

高速道路を除いて、一般道路の車道や自転車レーン、歩道走行モードを備えている場合は、一部の歩道も走行可能と、自走できるモビリティとしては現在あらゆる道が走行可能となります。ただし、自由に走れるわけではなく、交通ルールを守る必要はあります。

基本的な交通ルールは?

一般原付と同様に、走行時は車両用の信号に従うことが基本となります。通行止めや車両侵入禁止の標識がある場合は通行や進入は禁止です。指定方向外進行禁止や一方通行などの標識にも従わなければなりません。電動キックボードは歩行者と近い存在ですが、自動車としての性質は忘れずに運転しましょう。

走行可能な場所は?

歩道または路側帯と車道の区別のある一般公道では、一般原付と同様に車道を走行します。自転車専用通行帯(自転車レーン)も利用することができます。複数の車線がある場合は一番左側を走行しなければならず、右折の場合は一般原付同様「二段階右折」を守る必要があります。二段階右折とは、右折したい場合でも道路の左側で交差点の向こう側まで直進し、その地点で停止してから右に向きを変え、前方の信号が青になったら進む方法です。

また、前述した特例特定小型原動機付自転車では、最高速度6km/h以下や走行速度表示灯の点滅などの歩道走行モードに切り替えることで「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識が設置されている歩道でも走行が可能です。ただし、歩道上では歩行者優先となり、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止しなければなりません。

交通違反や罰則、禁止事項はあるの?

16歳未満の運転は禁止/16歳未満は特定小型原動機付自転車を運転することができません。また、16歳未満に特定小型原動機付自転車を提供することも禁止されています。違反した場合は6ヶ月以下の懲役、又は10万円以下の罰金が規定されています。

飲酒運転禁止/特定小型原動機付自転車の運転中の飲酒は禁止されています。違反した場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。

放置違反禁止制度/特定小型原動機付自転車を放置することは禁止されています。違反した場合には、罰金が科されることがあります。

これらの規定に違反すると、法的な制裁が課される可能性があります。特定小型原動機付自転車は気軽な移動手段ですが、交通ルールや法律を守ることは重要。知らなかったでは済まされませんので注意が必要です。

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【特定小型原付のメリット、デメリット】

街中を気軽に駆けぬける、軽量モビリティ

電動キックボードのスタイルからも想像できるように、気軽に街中を走り抜けられるのが一番のメリットです。軽量で取り回しも軽いので、近距離で移動したい場合には自走するので自転車よりも疲れません。免許不要で登録するだけで使えるという気軽さもあります。免許不要という点では、電動アシスト自転車や、電動シニアカーもありますが、ニーズに合わせて検討できる豊富な選択肢のひとつとして魅力的ですね。都市部ではレンタルやシェアサービスも見かけられ、購入しなくてもスマホで検索して近くのスポットで気軽に利用できます。

また、今回の法改正にあわせて、各社から保安基準を満たした手ごろな価格の電動キックボードがラインナップされ、選択肢の幅が広がっているのもメリット。価格はまだ製品によって幅が大きいようですが、価格だけに拘らずさまざまな観点から検討してみてください。正式に認可をとった製品には、「性能確認済みシール」が貼られているので、選ぶ際の目安となります。

燃費の良さに関しては、さまざまな計算方法がありますが、おおよそ一般原付のガソリン代に比べて、6から7割程度の電気代で収まるようで、お財布に優しいイメージですね。

電動キックボードによる事故の内訳(※5)

警察庁発表の統計資料によると、電動キックボードの事故の40%が自動車、18%が自転車、11%が歩行者、3%が二輪、26%が単独事故となっています。件数自体は少ないものの、警察が把握していない単独事故の割合は不明です。3/4は相手がある事故になるため、自賠責はもちろん、任意保険の加入も怠れません。

デメリットを考えてみる

デメリットとしては、自転車や一般原付と同様に、雨天走行が厳しい、長距離移動には不向き、盗難の心配もあり駐車する場所に困るなどが考えられます。とはいえ、他のモビリティと使い分けたり、他の交通機関を利用することで、デメリットの影響を避けることが大切です。

速度的には最高速度が20km/hに制限されており、一般原付よりも10km/h遅くなります。そのため、一般車の流れとは別に車道の左側をゆっくり走行します。速度の異なる人やモビリティには注意が必要であり、自分から事故を起こさないことはもちろん、巻き込まれないように心がけること、また不本意な事故で嫌な思いや怪我をしないよう、可能な限り危険は避けるべきです。

構造上の問題

電動キックボードに限らず、キックボードやスケートボードなどの車輪が小さいモビリティは、どうしても段差の影響を受けやすいのが特徴です。大型バイクとスクーターを乗り比べてみても車輪の大きい方が安定して走れることがわかりますよね。

極端な思考実験ですが、電動キックボードで前輪の半径を超える障害物に当たって乗り越えられない場合、前進していたエネルギーが前輪を軸とした縦方向の回転運動に変換されます。前乗りで重心も高いため、跳ね上がって投げ飛ばされる形となり、顔面からアスファルトに……という最悪のケースが考えられます。

構造上車輪の小ささはどうしようもありませんから、知らない慣れない道では可能な限り速度は出さず、ヘルメットを着用する方がよさそうです。また、事故の際は車体が軽量であることもあり、どこに飛んでいくか分からず、対物や対人などに予期せぬ損害を与えてしまう場合もあります。保険加入は忘れずに行いましょう。

【安全に楽しむために】

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構造上の問題点を考慮して製品を選ぶ

構造上の問題点を考慮すると、製品を選ぶ際には、タイヤ径はなるべく大きいもの、硬いタイヤよりは空気の入ったエアタイヤの方が乗り心地もよく段差にも強いので検討してみてはどうでしょうか。また、後輪が2輪の3輪タイプもあり、安定度は高そうです。気軽に乗れるものだからこそ、製品を選ぶ際には価格以外にも注目することをおすすめします。

保安基準に適合したものを選ぶ(※6)

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一定の保安基準に適合したものでないと特定小型原付として公道走行はできません。製品を選ぶ際には「性能確認済みシール」の有無を確認することが大切です。実証実験での検証も含め、決められた保安基準を満たしているものを選ぶことは必須ですが、交通事情や他のモビリティも通行している公道ではルールを守ることも重要です。また、自分がルールを守るだけでなく、他のモビリティの運転者に認知されることも大切です。逆に自動車やバイクに乗っている場合でも、排除することなく、新しいモビリティの仲間として注意して見守る心の余裕も持ちたいですね。

メンテナンスや故障

適切なメンテナンスを行った場合でも、電動キックボードの一般的な寿命は数年と考えられています。メンテナンスのチェックポイントとしては自転車や一般原付と同じように、ブレーキの遊びや効きは十分か、車輪のガタや歪みはないか、タイヤの空気圧は正常か、ハンドルが重かったりワイヤーの引っ掛かりは感じられないか、灯火はすべて正常に点灯するかなどがあります。他のモビリティ同様、愛車の状態はいつも気にかけることが大切です。

故障に関しては、電源が入らない、充電がもたないなどのバッテリーの故障や寿命、基盤の故障、センサーの故障などで思うように運転できなくなることや、タイヤのパンクなどが考えられます。新しいモビリティということで実際に使われての情報が蓄積されるのはこれからです。ホームページや動画サイトでは個人での修理やメンテナンス術が公開されていることもありますが、故障の際には購入した販売代理店やメーカーに問い合わせるのが一番。保証期間内なら無料ということもありますので、まずは問い合わせて相談してみましょう。

バッテリーの消耗に関してですが、バッテリー容量、使用頻度、充電回数によってさまざまです。一般的に電動キックボードに利用されているタイプでは500回程度の充電が寿命とされているようです。1日1回充電で年間250日の使用だと2年、1日2回充電で年間250日の使用とすると1年といった概算になります。

ここまで駆け足でご紹介してきました特定小型原動機付自転車の電動キックボード。今注目を集めており、ニュースでも目にすることが多いと思います。一般的な認知に比べ展開が早すぎる、シェアモビリティとするためにヘルメットの着用が努力義務となった、そして構造上の問題点などが指摘されていることもまた事実です。しかし現実問題として捉え、特に都市生活では便利でエコな新しいモビリティとして排除するのではなく社会全体で法整備や運用、ルールの見直しなども含め、良い方向に受け入れられていけるよう、この後の展開にも注目していきたいですね。

※1.国土交通省:特定小型原動機付自転車について
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000058.html
※2.警察庁:道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案(特例特定小型原動機付自転車について)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/public-comment/20230119/02_sankou2.pdf
※3.総務省:特定小型原動機付自転車のナンバープレートに関して
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/131410_00001.html
※4.警視庁:特例特定小型原付について(交通ルールなど)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/electric_mobility/electric_kickboard.html
※5.警察庁:電動キックボードに関連する交通違反・事故の発生状況
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/newmobility0503.pdf
※6.国土交通省・特定小型原動機付自転車の保安基準概要
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/newmobility0404.pdf
※参考:公益財団法人日本自動車輸送技術協会(JATA)
「特定小型原動機付自転車の性能等確認制度」について
https://www.ataj.or.jp/trust/electric%20kickboad%20evaluation.html

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